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【読了】楽園とは探偵の不在なり/斜線堂有紀

今月、通勤時間だけで読んだ本!
片道10分ちょいで1日25分くらいの読書時間。
ああ! ここで読み終えるの、なんて中途半端な! あと少しでいいところなのに……と何度思ったことか。初めて読む作家の本だったけど、当たりでした。強く影響を受けたと最後に記されていた作品と、著者の他の作品も読んでみたいなと思って検索中です。

作品の舞台は天使降臨という特殊な事象がある世界。
いわゆる天使の姿ではなくて、羽が生えてる以外は悪魔みたいな外見という設定。ある日突然発生した天使は、普段、カラスやハトみたいにその辺を飛んでいるだけで何も害はないけれど、ある特殊な能力(と言っていいのか?)を持っています。それは、2人以上の殺人を犯した人間を即座に地獄に連れていく、というもの。

こんな設定、面白すぎでしょ。もう数行のあらすじを読んだだけで、これ買う! ってなった本。連続殺人が不可能な世界で、連続殺人が起こるという。なんだその意味わかんない縛りは!

文章も読みやすいし、本格ミステリーみたいな難解な謎解きものでもないので、ミステリービギナーにもおすすめです。普通のミステリーには飽きたな、という方はさらにオススメ。この天使がいる世界にハマってください。意味分かんないよね、なにその世界。本当に、この天使が不気味だし、地獄に連れていく様もすごいし、っていうか地獄に落とすのって天使の役目なのか? 悪魔が連れて行くんだと思ってたし、もし悪魔じゃないにしてもそれは神の裁きによるから神の御業でドーンと落とされるのかと思ってたわ。よく考えてみれば神の手下である天使が地獄に連れていくのはまあわかる。でもその姿を想像すると、地獄に落とす天使こそ悪魔に思えるよね。

この物語のなかでは、天使降臨がどうして起こったのかとか、地獄に連れて行かれた人間はどうなるのかとか、どうしてこのルールが定められたのかとか、いつまで続くのかとかっていう答えはまったく出てこないで謎のままなんだけど、だからこそ登場人物たちと同じ気持ちで戸惑ったり不安になったりざわざわした気持ちを味わえるようになってます。理解不能、意味不明、疑心暗鬼、そういう気持ちを存分に味わってください!

そしてね、これ実は強烈な設定でやや霞んでますけど、迎えが来るまで出られない無人島(別荘)なんですよ。そう、クローズドサークル。大富豪に集められた参加者たち。空を舞う顔のない歪つな天使(悪魔)。推理をやめてしまった訳アリの探偵。少しずつ明かされる過去と参加者たちの謎!

こんなに盛りだくさんで良いんでしょうか!?

何やら賞も受賞されている作品だそうで、そりゃあそうよな。こんだけ面白いんだもの。ちゃんとしたミステリーをご所望の方にはやや消化不良かもしれませんが、新生ミステリーとはいかなるものかとご興味のある方はぜひともトライしてみて頂きたいです。ハマるかも!

私が個人的に気に入ったのは大槻くん。ちょっとスカした感じの若者ぶってるけど、ところどころ素直な面が見え隠れする様子が最高です。そういう人間味あふれるキャラいいよね!捨てられた子犬のようにも感じてしまったのはなんでかしら。飄々としているようで、よりどころを探しているようなもろさがあるようにも見える。奥深い子です、彼は。

新感覚ミステリー、とっても楽しかったです。さくさく読みやすいので、朝読書の時間にもおすすめだと思います。文庫版もあってお財布にも優しいので、学生の皆さんいかがでしょうか!

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