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自作詩をいくつか、そのろく。『プール』

以前とある投稿サイトにて書いた詩を、noteに投稿しようと思います。そろそろ夏になってきたところで、夏みたいな爽やかなやつをチラホラ。


『プール』

やわらかい水は心地いいものだ。

僕は流されるままに、波が揺らいで見えたり見えなかったりする、先頭にいる僕に手を振る君に、なんとか声をかける。

でも君と違ってちっちゃな僕は波で君の姿が見えたり見えなかったり、足元も着かないし。
からかうだろう、小馬鹿にするだろう。
それが嫌なのが一つ、なんかカッコつけたいのが一つ。
勘違いしないで、僕はこのやわらかい水が好きなだけさ。

プールは心地いい、浮き輪で流されながら昼寝したい、太陽に照らされながら。
それでかくれんぼで自分で出てきてしまうように、痺れを切らして僕に話しかけてほしい。さりげなく返事するから。


『近く会いにいくからさ』

手紙なんて少し古めかしいものをやろうと提案したのはどっちだったか。

意外と楽しくて、すぐ返事を求めてしまう電子よりもよっぽど楽しみになってた。

月が綺麗だったとか、何日も後に届くからその感動を共有できないんだけど、そのもどかしさが楽しい。

同じものを感じる楽しさより、相手から見た世界を語ってくれた方が君のことがよく分かるよ。

春と夏の間に手紙を出せば、こっちは春なのに帰ってきた手紙は夏を歌ってるんだもの。

なんか楽しいなぁ。

ところで君はプールが好きだと言っていたけれど、僕は海が好きだと意見が一致しない。
そんなとき手紙ならばどう話す?

何枚にも渡って議論するかい?
野暮だろう。
ねぇ、プールの良さを教えて?


『ARE YOU CHILDREN?』

歩道の少し逸れた草むら。
その奥に秘密基地が昔あった。

大人には知られまいと振る舞ったが、今思えばバレバレだったかも。

狭いそこを進むと、光が差し込んできては目を細める。この眩しさはずっと覚えておこう、無くなるわけじゃないのに不思議とそう思った。

虫の鳴き声や騒がしい街の音。
何もかもが目新しく世界を彩った。

すると、自販機に騙されて買った、ただの水がオアシスのような幸せを感じて、やっぱり世界は捉え方次第なのだと思い知った。

振り返ると麦わら帽子の少女。
歩くのが遅いから手を繋いだ。

駆け抜けると二人して笑う。
何が面白いのか、何がしたいのか、分からなかったけど、なんでも理由を求めることが怖いから、これでよかった。

子供と大人は違う生き物だと思いながら、なんとなく同じ生き物だと悟っていた。

だから期待と切なさを込めて、一枚ずつカレンダーをめくる。

いつ来るんだろう、いつ変わるんだろう。

秘密基地も雑草に飲み込まれ、麦わら帽子の彼女も髪を切り車に乗り込んで帰ってしまった。

さよならも言えなかった。

でも夏の煌めきは嫌なことを忘れさせ、ただただ神秘的な今日を大切にさせた。

今思えば彼女なりの優しさだった。

そんな僕も夏は毎年来るのに、思い出すのはあの夏ばかりになった。

すれ違う子供たち。

いつ変わるか、なんて不安に思っても意味はなかった。気付けば変わるものだから。

大切なものは変わってゆく。
優しい想い出も色褪せてゆく。
でも毎年夏は訪れて、毎年僕のような気持ちを持った、子供が森へ駆け抜けた。

僕はいつまで経っても忘れない。忘れまい。
そして、大人であり、子供のままだった。
もうちょっと白昼夢に篭っていたい。

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