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私たち一人ひとりの心に薫るメロンパン

 これはメロンパンを食べたい民の笑い話です。

1.食べたいスイッチオン 


 「メロンパンを食べたい」。この言葉が頭を支配するようになったきっかけは些細な一瞬でした。
 電車の乗り換えの時、改札出てすぐ、駅構内にあるお持ち帰り専門の店が何軒か目に入ります。その中にパン屋さんがありました。ガラス張りで店内が見通せる、チェーン店です。木目調の店内、商品が良く見えるよう設置された棚、いくつものパンが調和して並んでいます。
 「メロンパンが数種類あるな」遠目から見えて、ぼんやりと思いました。行きでしたので帰りに買おうかなどと考えつつ次の電車に乗るべく早足で通り過ぎて行ったのです。これが始まりでした。

 帰りに同じ場所でメロンパンのことは思い出したものの、買わない結果になりました。チェーン店と言えど、専門店のパンはスーパーマーケットと比べれば、質と共にちゃんとお値段も上がりますからね。思いつきに過ぎないのなら、お砂糖タップリのメロンパンは我慢して体とお財布に優しくあろうと決めました。
 かなり疲労していて、早く帰りたい、余計なことを考えられない状態で消極的だったのもひとつの要因です。自分の食べたいスイッチの強さも気がつかずに。これが暫くの間メロンパンに悩まされる日々の幕開けでした。


2.メロンパンはささやく


 デパ 地下のケーキ屋さんはなぜあれほどまでに、キラキラ輝くのでしょうか?照明やらなんやらで購買意欲を湧かせている大人の計算があるとしても、頭で考えを巡せ理性で抑えても、本能へ訴えるスポットを浴びたケーキやタルトにあらがうのは大変です。
 同じように駅改札から出て直ぐ、あるいは乗車前、目に入るカウンター越しのテイクアウトは気軽さとガラスケースを武器にきらめいて見えます。「お腹空いたな」「今日はご飯作りが面倒だな」。そんな薄く暮れた気持ちに光を放って、連れて帰るようお総菜やスイーツがささやきます。私の中で、駅前で心置きなく買って帰るのは、一種の憧れといっても過言ではありません。

 きらめくメロンパンを無視した対価は思った以上に大きく、頭の中で「メロンパン、メロンパン」と声がします。ぼんやり歩いたり部屋でくつろげば、ぼわわん。あの優しい色味のクッキー生地が浮かびます。いつもなら隙あらばネガティブ思考をささやく何かが、メロンパンナちゃんの着ぐるみをきているのか?思考に入り込んできます。良く通る場所ならば解決も素早いのですが普段は行かない土地のパン屋。「メロンパン、メロンパン」

 なんとなく、個人経営の町の素敵なパン屋でも、慣れ親しんだコンビニやスーパーの袋商品でもない、チェーン店のメロンパンの気分です。似た感じの物で気分を満たそうとしても無駄な系統の衝動を感じ取っていました。


3.心のクレープ、目の前のクレープ


 メロンパンなら何でも良い事案ではない。私は感じ取っていました。

 というのも、その前に似た欲求があったのです。その時は、クレープ。四角く小さく折りたたんだ、一見クレープとは判らないけれどお持ち帰りしやすい手のひらサイズのおやつに心奪われていたのです。
 ある専門店で買いたかったのですが、お店に遭遇し、いざ!と意気込んだ時に限って、躊躇する事案を目撃。なんてことはない、スタッフさんのお知り合いが来店していたのか、カウンター越しでお話に花が咲いていました。お客として堂々と注文すれば良いのですが、怖気づいた私はそのままトボトボ帰宅。
 クレープの専門店までも距離があったため、数日後近所のスーパーで似た商品を矢も楯もたまらず購入しました。チョコレートソースがクリームにからんで美味しい。
 ですが、頭のクレープリクエストが取り下げられないのです。「確かに美味しいよ?でも、これじゃあない。あの店のクレープが食べてみたい。」欲求が納得してくれなかったのです。

 脳内メロンパンコールもパンのひと言ではおさまりきらない、実はこだわり付きメロンパンコールの様相。

 まだクレープは食べていなかったのですが、どの店で買えば、脳内でかかる食べたい放送が終わるか分かっていたので、機会があれば!で置いておける食欲でした。


4.描くメロンパンの姿


 クレープと異なり、漠然と描く希望はあれど、ただ待つだけでは具体的な理想像が見えてこない。そしてなによりメロンパン欲が頭の中でうるさい!「結構な強さで かなえたい望み」が、かなわないのは気持ちが引っかかりが大きいのです。
 幼少期の第一次・友人の手作りを貰った第二次に続き、第三次メロンパンブームが来たのかしら?9割メロンパンに支配されている脳内メーカーの図ができそう。

 あまりに脳内がうるさいので、コンビニなどでも一応パンコーナーで自分の気持ちに合うかパンを見つめ探っていました。でもやはり心の中にある理想像と比べ、運命を感じない。夕方に疲れて足取りが重くても、機会があればパンコーナーをさまよい、もはや気分はメロンパンを求めしゾンビ。

我輩はメロンパンゾンビ。名は別にある。

 連日の脳内メロンパンコールを友人にも語りました。
「コンビニじゃなくて、パン屋のやつ!クッキー生地がサクサクの!」
 ずいぶんな熱量だったのか、個人店じゃだめなのかだの、近くにお目当てのチェーン店はないかまで検索してくれました。ちなみに近所にはなかったです。
 最果てにあるのは理想郷ではなく理想パン。

 

 

 さて、この訳の分からないゾンビ化したメロンパン星人の話、いつまで続くのでしょう?

 コツコツ書き進めていた結果、まだまだ先があります。

 ということで、前半後半に分けました。

 明日、「続 私たち一人ひとりの心に薫るメロンパン」公開します!もし宜しければ、このエピソードの終わりまでお付き合いお願いします。

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