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続 私たち一人ひとりの心に薫るメロンパン

※この話はあるメロンパンを食べたくなったものの、近くでは買えないので、似たメロンパンがないか、さ迷い探していた話の続きです。どうぞ、くだらなさに笑ってください。

 前半はこちらです。


5.パンを求めし者


 情熱のメロンパンめぐりに少々疲れ、即効作用のある緩和剤的な手段に出ることにしました。それは工場多量生産の商品を買うこと。節約のために、いままで避けてきた行動です。しかし、頭の中のメロンパン妖精が短期間でも静まるなら、一時的な措置もやむなし。


 ということで、100円以下の袋に入った、いつもお世話になっているメロンパンを買いました。お財布に優しい、いつも安定のパン。感謝しています。ただ今回だけは心で薫るメロンパンとは異なるので、あくまで一時しのぎです。

 買ってもなお頭に浮かぶ製品がもう一つありました。あまり見かけないけれど、これはいいかもと感じた食料品店の袋メロンパンが一種類だけあったのです。そのメロンパンはあるひとつのお店でしか出会えませんでした。現在地からだと家を通り過ぎた向こう、そこそこの距離を歩かなくてはなりません。すでにお疲れ気味の体で歩くのか?少し悩みましたが、進む先は目的メロンパンに定めました。

 疲れで思考が飛躍していたのもあると思います。こんな考えに至りました。
 疲労し重い足を上げて向かうはメロンパン。正に、メロンパンゾンビ。いや、いや違う!メロンパンなら何でも良いわけではない!私は、心に描くメロンパンを求めているのだ。冒険者ならぬ冒パン者。いや、道を求めし求道者ならぬ、メロンパンを求めし求パン者だ!

 そんなことを考えながら歩いていると、なんだか自然に背筋を伸ばし、足取りも軽くなった気分でした。さっきまでなら、とりあえず寄っていたかもしれないコンビニも素通りです。だって、求めしメロンパンは、ひとつだから。

 たどり着いたと思えば、店外にまで響く「蛍の光」。閉店間際でした。お客さんもほとんどいない様子で、今から入るのにも躊躇があります。と、目の前にもう一名の来店者。ちらりと目配せして、互いにこの人が入るなら、そんな思案が聞こえてきます。閉店前、みんなで入れば気まずくない。
 店員さんに申し訳ないながら、えい!入店。しかも私は買う物が決まってて、すぐだから。お店の動線を無視して直行、パンコーナーを覗きます。
 しかし!ない!!なんとお目当てのメロンパンは売り切れていました。

 頭の中で、さっき買った分と合わせミニメロンパン祭開催だな、食べすぎないように。求パン者が何度もウハウハ脳内シュミレートしていたミニメロンパン祭も、メロンパンの食べすぎも、売り切れ御礼の現実により杞憂に終わりました。
 確かに、特価みたいな値札は着いていたし、ちらりと見た私の印象に残る程に美味しそうでした。そしてなにより、みんな大好きメロンパン。吸引力をなめていた。

 
 家では、買った1個、信頼の味で美味かったです。お腹は満足、心も表面上は無事たべられたことで一旦おさまりを見せたようでした。ですが2度も特定商品への要求が見過ごされたことで、心の裏路地・食欲ではメロンパンコールが密やかにしかし力強く発信されている模様。嗚呼、食べたい。

 

6.空想ではないメロンパン祭


 翌日、メロンパンは心に引っかかりつつ、通常営業で生活していました。

 そんな時に限って、友人からの
 「メロンパン買えた?」

 あんなどうでもいい、会話を覚えていて、わざわざ聞いてきてくれた優しい友達。
 嬉しいと同時に、よぎる言葉は「タイミングが悪い」!当然、向こうに非はありません。さらっと「とりえずは、手ごろな物で食欲の矛をおさめたよ。目的のベーカリー前を通ったら、改めて買うわ。」とでも返せばいいんです。相手もそっか、で終わりです。ただ今は不完全燃焼感が二重なところに問いかけられて、なんだか返しにくい。あれだけ語ったのに、売り切れで取り逃がした煮え切らない気持ち。返事するのが億劫だな。

 連絡を受けた時に、ちょうど買い出しに出かけていたので、目的地のほど近くにある低価格のベーカリー前をさっと通過することにしました。偶然は素晴らしい。人はメロンパンを欲する季節があるのでしょうか?なんと近所でメロンパンフェアが開催されていたのです!灯台のもと暗し?日頃の行い?いろんな種類があるなら、脳内メロンパンとマッチングするんじゃないか。いそいそ入店。

 オーソドックス、クリーム入り、塩。様々なメロンパンが陳列されています。抹茶系の一つに決め、トングでつかみます。クッキー生地サクサクほろほろではなさそうです。しかしながら右腕で暴れる暗黒龍がごとく、落ち着かない願望が今以上に抑えられるなら。そもそも抹茶味、おいしいじゃない。
 帰ってから味わい、友人にも”近所のベーカリーで買った。一番食べたい一品は機会があれば”と返事をしました。嗚呼、一旦の満足。

 

7.再会、いや再挑戦

 脳内の暴れ馬ことメロンパンへの欲求は、薬で緩和された頭痛のように鳴りを潜めました。

 そんな時、思ってもみない邂逅。抹茶メロンパンをいただき、そこまで日が経たない内の出掛けた際に、あの乗り換え駅・あのベーカリーの前を通る機会がやって来たのです。
 実は目的地までの最短距離だと、乗らない路線でした。なので行きは、くだんのベーカリーの前を通過することなく目的地へ到着しました。偶然にも、遠回りをして帰宅する最中。近所の抹茶味で、鳴りを潜めた眠れるメロンパン欲を忘れたままの遠回り。

 しかし、あれだけ心かき乱された、ずっと食べたかった一品です。改札付近ではたと思い出しました。

 ですが、正直、眠れる欲龍は木目調のパン屋の前でも起きません。菓子パンの気分ではない。とはいえ私は学んでいました。ここで流すと、再び「やっぱ買えば良かった」が始まる。再度、求パン者とかいう、とんちんかんな発想がぶり返してしまう!

 メロンパンのテンションはないけれど、パン屋に入り、トレーとトングを手にすれば不思議とわくわくします。上にかかったクッキー生地がサクサクそうな、チョコレート仕様のメロンパン。君に決めた!
 いつもなら、1個だけ買うのが気まずくて複数種類のパンを選ぶのですが、すでに別日とはいえ2個分の出費をしています。決めた、求め続けた心に薫る1個だけでレジに並びました。

 帰宅し早速、袋開きの儀。いつもならお皿を洗うのも面倒と小分けのカサカサ袋のままかぶり付きます。が、今日は、何度も心を探り、何軒もの店で呼び続けた、特別な1つ。白い平皿に置いて写真撮影です。ちなみに、全く美味しそうに取れませんでした。削除して、ごみ箱入りしてるじゃないの。かろうじてメロンパンだと分かる冴えない色のゴツゴツしたドーム型の塊が写っていました。

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 さて、気を取り直して、いただきます!美味しくて、満足しました。食べる直前まで、メロンパンの気分じゃないだの、もっとチョコレートを全面に出したのが売ってればなど、ちまちま考えていました。が、さっくり生地・しっかりした甘さがやって来ると、願いが叶い素直に嬉しく、また期待通り美味しかったです。

 ご馳走さまでした。


8.満足
 

 さあさあ、これで一件落着。とはいかないのが人の欲望です。連日、脳内で暴れ馬のごとく訴えていたメロンパン妖精も、今は落ち着きを取り戻しました。お庭の東屋で優雅にティーカップを傾けている感じ。ですが、優雅に紅茶の飲みながらも、上目遣いでちらりと私を見て、つぶやくのです。「あの食品店で売り切れていた方のメロンパンも食べたいなー。」

 そうなのです。逃した後悔がどうも消えない。ホラー映画の呪いじゃありませんが、大きなもとを断ったはずが、新たなメロンパン欲の種が!旅路は、まだ終わりではない!

 ということで、まだスーパーマーケットを訪れる度に、菓子パンコーナーのメロンパンが並ぶ辺りでお目当てのものがないか、キョロキョロ確認しています。
 いまのところないです。大手の商品なので、そんなに珍しくもないと思うんだけどな。今度、お客さま声でリクエストしてみようかな。ちょっと勇気がいるけれど。

 皆さんも、食べたいものを食べて、楽しい生活。送ってくださいね!

 結論。メロンパンは、どんなメロンパンも美味しい!

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