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服づくり現場の教科書 004 / MAPの作成について

企画の仕事って?にも出てきましたが、アパレルの企画の現場ではMAPと呼ばれる全体のイメージを共有するための資料を作成することがあります。企業のデザイナーやMD、OEMメーカーのデザイナーや企画営業が特によく使います。

ブランドイメージMAPや、シーズンMAP、提案MAPなど、様々な用途に利用できます。これからブランドを立ち上げる方にとっては、自分以外の誰かにブランドを説明する時などコミュニケーションツールとして役に立つはずです。

基本的な作成方法をお伝えしますので、これからのブランド作りにお役立ていただけると嬉しいです。

MAPはどんな用途で作成するのか?

主に用途は3つに分類されます。

CASE1 ブランドコンセプトの確認用
新ブランドを立ち上げる際に、ブランドが目指す方向性を確立させ、ブランド内の全てのデザイナーが統一されたイメージでデザインできるようにする目的で作成されます。ブランドのチーフデザイナーが作成する事が多く、会社にブランドイメージを説明して、方向性の了承を得る為の資料としても使用します。

CASE2 アパレルブランドの企画会議用
シーズンの立ち上がり時期にどんなイメージで商品構成をするかをまとめたもので、使用目的はブランドコンセプトと同様です。
ブランドのチーフデザイナーがMDと話し合いながら作成する事が多く、シーズン通して目に留まる場所に置かれ、方向性がブレていないか都度チェックしながらデザインをしていきます。

CASE3 客先への提案用として
デザイン提案の効率やアイテム採用率を上げるため、OEMメーカーや商社のデザイナー・企画営業が、アパレルの客先に向けて作るものです。

提案MAPを作成するのに必要なこと

フリーランスのデザイナーとして活動する場合は、この提案MAPを作成する業務がとても多くなります。どういったことを意識して作成するのかをまとめています。

1)ターゲット層がはっきり分かる
商品を買って欲しい客層や年齢層などを明確にします。
雑誌が良い例で、紙面を作るようなイメージを持つと作りやすくなります。

2)写真などで打ちだしたいイメージが明確に分かる
デザイン提案に近しいアイテムの写真を複数集めます。素材が近いもの、ディティールが近いもの、シルエットが近いもの…参考になるものをたくさん集めて、バランスをみていきます。

3)アイテムに合う生地を添付する
想定する生地の添付があると商品イメージがしやすくなるので、デザインの良さがしっかりと伝わります。
商社のデザイナーの場合、営業がそのシーズンで売りたい生地の提案を前提にしたMAPを作ることもあります。

4)イメージ写真に合わせた絵型を入れる
写真だけで絵型を入れないMAPも見ますが、似寄りアイテムの写真だけではなく、提案する絵型を入れることで更に分かりやすくなります。
絵型の描き方は次回noteでご説明します。

上記の条件で集めた資料をコラージュのように1枚にまとめていきます。
複数提案する場合は、生地ごとやアイテムごとなどに分けて作成することもあります。

<作成時のヒント:通販雑誌の作り方は参考になりやすい>
雑誌は店頭に並ぶ商品を掲載しているので、生地に関してのアピールがほとんどありません。通販雑誌は誌面のみで購買を促さなくてはならないため、ひとつの商品に対する情報量が多く、参考にしやすいのです。

資料収集の方法

以前はターゲット層に合った雑誌を定期購入して情報収集すると共に、蓄積された雑誌からピックアップしてMAPを作成することがほとんどでした。
現在はpinterestを利用して情報収集することが増えてきています。ある程度ボードにピンしたものをクライアントと共有し、気に入ったものをピックアップしてもらい、そこから膨らませてデザインするようなことも多くあります。
難しくないので、始めてみて自分の好きなものが何なのかを改めて把握するのも良いのではないでしょうか。

【実践公開】 ブランド立ち上げ

この「服づくり現場の教科書プロジェクト」を立ち上げた頃、COVID-19によりリモートワークやオンラインミーティングが増え、外出自粛生活により気持ちよく働ける部屋着やミーティング映えするトップスに注目が集まっていました。店舗を休業せざるをえなくなった各ブランドは、ECやSNSの強化を急に迫られた状態になっていたはずです。
セミナー準備のミーティングを重ねていく中で、「いま新しいブランドをやるならどんなのがいいんだろう?」という話題になりました。

フリーランスで活動をしているミッカムさんは並行してお花の仕事もされています。外出自粛によりお花の需要は高まってきているということでした。
気持ちが少しでも華やぐように家にお花を飾ったり、家庭菜園やガーデニングをはじめる人もいるようです。

わたしは妊婦だったこともあり、社内でも早いうちに完全リモートワークに移行しました。それまでは昼・夜共に外食で、自炊は長らくしていなかったのですが、自宅にいるので3食自炊で生活するようになりました。

庭仕事をする人と料理をする人、共通して使うものがあります。

エプロンです。

実はふたりともエプロンを持っていませんでした。
何故ならオシャレに着られる、納得のいくデザインのエプロンに出会えていなかったからです。

では、自分たちが本当に欲しい!と思えるエプロンがあったら?

ということで、プロジェクトの進行に合わせて実際にブランドつくることにしました。過程を少しずつ公開させていただきますので、自分がブランドのデザイナーになった気持ちでご覧いただけますと幸いです。
最終的にはアイテムを生産して販売したいと考えていますので、楽しみにしていてください。

【実践公開】ブランドコンセプトマップ

まずはブランドのコンセプトをまとめていきます。
エプロンや割烹着のオシャレなものがあれば欲しい!と感じていただける方が求めるのはどんなものなのかを考えました。

・急な来客があったときに適当な部屋着を着ていても、さっと上から着てサマになる
・はっ水・撥油でお料理の汚れがつきにくい
・買い物に行くときにもサクッと着てお出かけ。小雨くらいなら傘を差さなくてOK(フードありの場合)
・コロナで自宅時間を楽しむ人が増えた、そういう方に向けたHOME DRESS(おうちオシャレ着)

このようなアイテムだと良いのではないか?ということで、実際にアイテムに落とし込むとするとどのようなものか?をあげてみます。

・シャツチュニックもしくはスモックワンピースをベースに、割烹着要素を2割ぐらい足すイメージ
・素材ははっ水・撥油、洗濯機で洗えるもの、シャツ地など
・袖口はたくし上げやすいようにリブ切り替え
・かぶりタイプ(前開きでも、いちいち開けなくても着られるもの)
・庭仕事(お花など)などにも対応できると良い

このような具体的な要素を元に写真を集めた最初のMAPを見ながら、ブラッシュアップをします。

良い部分は残してより広げ、イメージからはみ出したものは削ぎ落としていきます。

1)割烹着という観点は現在の生活スタイルに即していて良さそう。
エプロン的な要素も入れて膨らませよう。
2)タウンユースすぎるものはイメージが広がりすぎてしまうので省こう。
3)ワークテイストのイメージは良さそう。
機能性は今の時代に必要とされているので広げていこう。
4)客層を花屋や農業女子まで広げ、家庭だけでなく働く人も視野に入れ、名前もWORK DRESSの方が良いのでは?

この1〜4を見直し、新たにMAPを作成したのがこちらです。

かなり具体的になってきました。

・すべてのお花好きな方のためのオシャレなエプロン(割烹着を広げる)
・オシャレで機能的なFARMエプロン(ワークテイスト)

デザインの方向性をこの2つに絞ってアイテムのデザインをしていきます。

【実践公開】アイテムマップ

コンセプトマップの中にあったものから要素を出し、デザインしています。これは決定ではなく、現在もブラッシュアップ中です。次の絵型のnoteでも進捗が見られますので、よろしければご覧ください。

デザインに落とし込む際、このくらいディティールを細かくピックして採用していくと良いのですが、1つのアイテムをそのまま使うのではなく、複数のアイテムの良いところを採用しつつ、自分のアイディアを入れていきましょう。

<次回のセミナーはこちらです>


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