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僕らが幸せに生きられる場所を探して|劇団四季『ノートルダムの鐘』

何から話せば良いのか。
すごく好きな作品なんだけど、それを明確に説明するのが難しい。

話の主軸としては、15世紀のフランス・ノートルダム大聖堂を舞台に、

醜いせむし男で鐘つきのカジモド

聖職者であるクロード・フロロー

戦争帰りの大聖堂警備隊長のフィーバス

この3人がジプシーで踊り子であるエスメラルダに惹かれてしまう。

しかし、ただ3人の男が1人の女を巡って争う話ではない。

聖職者であるクロード・フロローはノートルダム大聖堂で暮らしていた孤児。
弟のジェアンとは仲の良い兄弟だった。

クロードは真面目に教えに従い 精進した
ジェアンは遊びが大好きで 勉強嫌い
弟思いの兄は 失望かくせない

何かにつけ弟を庇っていたクロードだったが、ジェアンはジプシーの娘・フロリカと付き合うようになる。
それが他の聖職者に見つかってしまい。

弟ジェアンは破門になり、ノートルダム大聖堂を出ていってしまう。

ー方でフロローは 位を上げていく
誰より 早く
いまや 1番権力握る 責任者

そして、責任者となったフロローの元に、手紙が届く。
差出人は、何年も音信不通だった弟・ジェアン。

人目を避け、手紙にあった場所へ行くと、そこには流行病に臥したジェアンがいた。

オレはもう手遅れだ
でも今更だけど
本当に慈悲の心があるなら
救ってほしいんだ

そう言って、先に亡くなっていたフロリカとの間に生まれた赤子を託して死んでしまう。

フロローの手の中には

――怪物のような姿の赤子。

人目を避け、逃げるように大聖堂へ戻るフロロー。
異端者であるジプシーの子ども。
怪物のような姿の子ども。

殺してしまおう。

フロローが赤子を投げようと、抱いたその腕を振り上げた、その時。

石像の視線を感じた
まるで神が見ているように

フロローは大聖堂の鐘楼に赤子を連れて行く。
この怪物の子を人の目に触れさせないように。
“出来損ない”という意味を持つ、「カジモド」と名付けて。


そして、時が経ち。

今日も青年となったカジモドは、鐘楼で鐘をつく。
――たった1人で。

この物語の主題は、おそらく、これだ。

Who is the monster and who is the man?
誰が怪物で 誰が人間であったか?

答えてほしい謎がある。
人間と怪物、どこに違いがあるのだろう?

ノートルダム大聖堂の鐘は、今日も鳴り響く。


ヒットメーカーたちが手掛けるミュージカル

本作は、1996年公開のディズニー長編アニメーション映画『ノートルダムの鐘』を元にした、ミュージカル。

原作はヴィクトル・ユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』

作曲はアラン・メンケン。
ディズニー作品の『リトルマーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『ポカホンタス』『ヘラクレス』『塔の上のラプンツェル』と第二黄金期を支えた人物の1人だ。

作詞はスティーブン・シュワルツ。
『ウィキッド』の作曲家・作詞家としても有名。
『ポカホンタス』『魔法にかけられて』のディズニー作品の他にドリームワークスのアニメーション映画『プリンス・オブ・エジプト』の作曲も手掛けている。

台本はピーター・パーネル。
演劇作品「DADA WOOF PAPA HOT」 はリンカーンセンターによ って2015年秋に製作。
ブロードウェイリバイバル版 「晴れた日に永遠が見える」 では脚本を 手掛けた。 

ディズニーのミュージカルにしては珍しく、本作はブロードウェイでの公演を行ってない。


エスメラルダは聖母マリア?

正直、内容のボリュームがありすぎて、目安にしている文字数では全く足りない。
(いつもは1200字前後)

ちょっと既にお腹いっぱい感があるかもしれないが、もう少しお付き合いいただきたい。

この物語は15世紀フランスが舞台だが、15世紀といえば『チ。―地球の運動について―』も同じ時代のポーランドが舞台だ。

キリスト教の勢力が、とても強かった時代。
異教徒やキリスト教の教えを脅かすものは弾圧されていた時代だ。
『薔薇王の葬列』も同じ時代でイギリスも戦争が絶えない時代。

ちなみに、フランスは実在する登場人物・ルイ11世から追っていくと、ブルゴーニュ公国と長く戦争をしていたみたい。

フィーバスが行ってた戦場は明言していなかったけど、ナンシーの戦いあたりかもしれない。

掘り起こしたら、キリがない作品なんだけど。

3人の男たちに比べて、エスメラルダという女性は人間味が薄い。

彼女は結局、“聖母マリア”なんだと思う。
差別をせず、権力に屈せず、他人を思いやる慈悲深い女性だ。

あたしなら大丈夫
でも 不幸な人はたくさんいる
どうか助けて 仲間たちを
人は誰でも 神の子

ちなみに“ノートルダム”とは聖母マリアの事だそう。

ノートルダムまたはノートル=ダム(Notre-Dame)はフランス語で「我らの貴婦人」という意味で、イエス・キリストの母である聖母マリアを指す。

Wikipedia『ノートルダム』

フロローも、劇中、神に祈るが、セリフは常に“マリア”だ。

聖なるマリア
私は正しく 徳の高い男
聖なるマリア
私は穢れを退けて生きてきた
なのにどうして
あの女を見ると 胸が熱くなるのか

マリア信仰は異端とされてる、ともあるが、南フランスやスペイン、イタリアでは多かったようだ。

フロローは自分の欲望を抑えきれず、エスメラルダが悪魔の化身に見えてくる。
無垢なカジモドには、彼女が天使に見えるのに。

その対比が面白い。

ちなみに、魔女狩りが横行したのも15世紀だ。

自分の意に反することは、死んでもしたくないエスメラルダに「どんなことをしてでも生きろ」と言うフィーバスの言葉は、戦場を生き抜いた者らしい価値観で興味深い。

そのフィーバスも、戦場から生きて戻り、安定した職に就いたにも関わらず、エスメラルダと共に“さすらう民”になるのか、迷う。

そして、“聖母マリア”であるエスメラルダは歌う。

いつか 人がみんな 賢くなる時が 来る
祈るわ 争いの炎が 消えることを
いつか 人がみんな 平等に暮らせる
そんな 明るい未来が 必ず 来ると 祈ろう
時が経てば やがては
いつか 夢はかなう
祈ろう 世界は変わると

世界は残酷で。
救いの光は、見えない。

外へ出たカジモドも、嘲笑われ、虐げられ、拒絶された。

そして、『ノートルダムの鐘』は最後にもう一度問いかける。

Who is the monster and who is the man?
誰が怪物で 誰が人間であったか?

横浜での公演は終わるようですが、今後も場所を変えて引き続き公演はあるようです。

ご興味のある方は、是非。


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