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私には萌えがあるもの!|ライトノベル『マリエル・クララックの婚約』


「私と、結婚してくださいませんか?」

15歳で社交デビューして3年目。
クララック子爵令嬢のマリエルに縁談が舞い込んだ。

縁談の相手は、シメオン・フロベール。

建国来続く由緒あるフロベール伯爵家のご嫡男にして、近衛騎士団副団長。王太子殿下と親しく交流なさっていて、将来重臣間違いなしと言われている若手出世株の筆頭だ。 
それだけでも令嬢たちが目の色を変える理由に十分すぎるというのに、さらには物語の王子様が抜け出してきたかと思わせるような、たいへんに美しい容姿の持ち主ときた。 
すらりと高いお背に、均整のとれた見栄えする体格。淡い金髪に縁取られた白皙は穏やかな微笑みを浮かべ、知性と品性を漂わせている。眼鏡の奥の水色の瞳は、優しげな中にも凛とした強さと鋭さを併せ持っている。二十七歳という年齢は、同年代の少年たちにはない落ち着きを備えており、大人の雰囲気が素敵だった。

『マリエル・クララックの婚約』

まるで物語から王子様が抜け出してきたような存在。

なぜ、そんな人が自分に求婚しているのか?

自慢ではないが、クララック家も子爵家とはいえ、家格も財産でもフロベール家には遠く及ばず。
容姿は目に留まるどころか、どこにでもある茶色い髪と瞳で、これといった特徴はない。

と、なると。

お父様! 盛ったわね、話をうんと盛ったわね!

『マリエル・クララックの婚約』

少しは盛らなければ見つかる話も見つからないだろうが、下手な見栄をはられると後で困るのはマリエルなのである。

やんわりと、“あなたが期待しているような女性ではない”と(父が何と言ったか知らないが)言うが

「マリエル嬢は、相手が私ではご不満ですか?」

『マリエル・クララックの婚約』

と言われてしまっては断れない。
好みなのだ。ドンピシャ、“萌え”のど真ん中なのだ。

しかし、もう1つ問題が。
マリエルには、シメオンには言えない秘密がある。

わたしのひそかな職業。それは小説家。上流から中流の女性たちに広く親しまれる、恋愛物語を書くのがお仕事だ。

『マリエル・クララックの婚約』

流行小説の作家なんて、良家の令嬢がすることではない、というのがこの世界での一般認識。

実はマリエルはアニエス・ヴィヴィエというペンネームでヒット作品を書いている人気作家。

夜会では目立たない容姿を存分に使い、様々な噂話に耳を傾けネタの収集を怠らない。

シメオンがなぜ自分と婚約したかわからないマリエルだったが、ご令嬢たちからの嫉妬ややっかみから来る嫌がらせも良いネタになる。

この幸運を逃す手はない。

そう考えると、政略結婚というのもむしろ都合がいいかもしれなかった。相手がわたしに関心を持たないのなら、隠すことは容易になる。家の中でこそこそ書いていたって、お仕事に出かける旦那様にはわからない。実家と出版社に協力を頼めば、秘密は守り通せる。やってみせる。

『マリエル・クララックの婚約』

おそらく、作家をしていることを知れば、良い顔をしないであろうシメオンには、この婚約に亀裂を生まない為にも黙っているのが得策だろう。

――と、思っていたのに

「そうだ、アニエス・ヴィヴィエという名前をご存じですか?」

『マリエル・クララックの婚約』

まさかのシメオンからアニエス・ヴィヴィエの名前が飛び出した。

これは牽制? 作家活動を暗に非難されてる?
私、油断ならない人と婚約したかも!


シリーズ11作品の人気作品

著者は 桃春花
女性向けライトノベルを中心に活動されている作家さんです。
このシリーズが長期に渡る作品で、その他は1作品配信があります。

出版社は 一迅社

掲載誌・レーベルは アイリスNEO

発売は 2017年04月
既刊11巻。連載中。

アラスカぱんの作画でコミカライズも進行中。

1巻は2023-11-07現在KindleUnlimitedで配信中。
既刊8巻。連載中。


原作小説もコミカライズも面白い!

気がつけば、原作小説も、コミカライズ版も結構巻数が進んでいた作品ですが……

今回、小説とコミカライズ両方の新刊が出たのですが、やっぱり面白い!

この作品の面白いところは、間諜ばりに目立たないけどトラブルを引き寄せ、それを持ち前の行動力と才覚で切り抜けていくマリエルと、王子様な容姿で強くてクールだけど、マリエルのことが好きで心配性で不器用なシメオンが、毎回何かしらのトラブルに巻き込まれる……というところ。

ストーリーの最初の頃は、シメオンが何故結婚を申し込んできたのかわからないマリエルが「これで婚約破棄か……」となるケースが多かったけど。

中盤は、トラブルに巻き込まれて、マリエルが危機に陥ったり、彼女の魅力に惚れ込んだ他の男性の存在が出てきたりでシメオンが過保護になっていくことですれ違ったり、仲直りしたり。

原作小説は、丁寧に書かれているので、マリエルやシメオンがどうやって歩み寄っていくのかを楽しめますし、コミカライズ版はアラスカぱんさんが、上手にストーリーを再編集してわかりやすく、テンポ良く展開しているので楽しいです。

というか、コミカライズ版の悪役令嬢・オレリア様が素敵!!

コミカライズ版も大筋は同じなので、ぜひそちらからでも読んでみてください。


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