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貴女にならきっとできるわ。 だって、私の娘なのですもの。|ライトノベル『型破り皇女の結婚事情』

アンシェーゼ皇家物語の3巻。

1巻は、第一皇子アレクと第四皇女ヴィアの物語。

2巻はヴィアとアレクの弟・セルティスの物語。

そして、3巻は、第一皇女のマリアージェの物語。

とは、言ってもマリアージェは、ヴィアやセルティスたちとほぼ接点はありません。

それは、マリアージェの結婚が関係しています。

「お待ち下さいませ! 半年後と言えば、この子はまだ八つになるかならないかではありませんか。ご命令は謹んでお受け致しますが、もうしばらく時を与えて下さいませ。後生にございます」
 皇女であれば幼い内に婚約が決まるかもしれないとセルデフィアは覚悟していたが、僅か七つか八つで異国に嫁がされるようになるなど考えた事もなかった。

『型破り皇女の結婚事情』

母親は平民。
皇帝の寵愛は既に元踊り子のツィティー妃(ヴィア、セルティスの母)に移っていて。
マリアージェは離宮の一角に閉じ込められて育ちました。

マリアージェはわずか8歳で、異国であるスラン公国の貴族へとたった1人で嫁ぐことになります。

相手は、公国内の旧家と呼ばれる特別な高位貴族の1つレイマス家出身の母を持つ、イエル・ロイド・プランツォ。
年齢は、マリアージェより14歳年上の22歳。

もし夫となる男性に愛されなかったら、わたくしはどうなってしまうのだろう……

『型破り皇女の結婚事情』

そんな不安を抱きながら、遂に、夫となる人との対面の時を迎えます。

地面に降り立ち、ゆるりと視線を上にあげて最初に目に飛び込んできたのは、男性としてはやや背が低い、二十歳前後の男性だった。
 金の縁取りのついた華やかな濃紺のジャケットを身に纏い、ひどく緊張した面持ちで突っ立っている。
 あれ、思ったのと違わない?

『型破り皇女の結婚事情』

そこにいた、イエルは、高貴さのかけらもなく、美男とは言い難い容姿。
でも――。

この人はわたくしを拒絶していないのだ。
 そう思った瞬間、温かいものが胸の奥底から溢れ出て、マリアージェは花が綻ぶような鮮やかな笑みを目の前の男性へと向けた。

『型破り皇女の結婚事情』

マリアージェの、一目惚れの瞬間でした。 


シリーズ3作の中で、一番好きかも。

※作者や、出版社等は2巻の感想でご確認ください。

幼くして、異国の貴族へと降嫁することになったマリアージェ。

母とも別れることになり、涙、涙……なところが無いわけではないのですが。
平民の母から受けた教育(?)の甲斐もあって、マリアージェ、結構、嫁ぎ先でも逞しく生きていきます。

夫となるイエルも本当に良い人なのですが。
イエルの母は、イエルを産んだ後、すぐに亡くなっていて。
イエルの家族というのは、父、義母、異母弟なのですが、

  いかにも親子だとわかるような三人で、三人が三人ともイエルを小馬鹿にするような薄笑いを浮かべていたため、マリアージェは即行でこの三人を敵と認定した。

『型破り皇女の結婚事情』

2人の結婚は、この家族にイエルの跡継ぎとしての権利も奪われると危惧した、彼の母方の祖父が繋いだ縁組で。

2人はお互いを心の拠り所にしながら、成長をしていきます。

シリーズ通して共通している、困難な状況でも、努力していれば、いつかそれが人生を切り開くきっかけになる、というのは本作でも健在。

マリアージェの逞しさと、イエルの成長が、とても読み応えのある良い作品です。


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