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本物のシードルとは?

Cidre Authentique オーセンティックなシードル

Authentique オーセンティック(英)は「真の」「正真正銘の」「確実な」「信頼できる」という意味で使われます。フランス語でオトンティックと発音します。

今回はシードルにおいての「本物(オーセンティシティ)」とはどういうものなのかについてお話してみたいと思います。

シードル=サイダーではない!?
りんごを発酵させたアルコール飲料で、フランス語の名称Cidreシードルに対し英国では、Ciderサイダーと呼ばれますが、実は法的な定義は異なります。
英国でのサイダーは原料のりんごは最低35%以上含有していることが条件です。
それに対しフランスでは原料はりんごと洋ナシのみしか認められていません。そのため、フランスでも他のフルーツを原料に入れるとシードルではなく、サイダーと書かれていたりします。


◆オーセンティックな品種

フランスでは歴史的に「シードル用りんご Pommes à cidre」という醸造専門の品種が多く存在します。ノルマンディだけでも300品種はあると言われるほど。これは生食はもちろん、加熱でもそのまま食べる品種ではありません。日本ではこのようなシードル用品種は本来栽培していないようです。
(近年実験的に栽培をしている農家さんが出てきたそうです!)
主に生食用の品種で造る国産シードルは、野生酵母だけでは発酵しきらず酵母を添加したりするため、フランスの伝統的なシードルとはかなり異なります。

樹上完熟した醸造用品種のりんご

醸造用の品種(ヴァリエテ)

シードル用りんごはピンポン玉くらいの小ぶりのサイズで、成分によって4つのカテゴリーに分類されます。

アメール(苦味種)・・・マリーメナールなど
ドゥアメール(甘苦味種)・・・ドゥ・モワンなど
アシデュレ(酸味種)・・・プティ・ジョンヌなど
ドゥ(甘味種)・・・クロ・ルノーなど

エルー(HERTOUT)のあるコトンタン半島は海洋性の気候で、苦味系の品種が多く、皮が厚くタンニンをしっかり含んだ渋みや苦味が特徴です。
フランスでは多くの品種をブレンドするほど美味しいシードルに仕上がると言われており、エルー(HEROUT)では25品種ほどを栽培し、その多くが他の地域には無い伝統的な品種です。

◆オーセンティックな原料

エルー(HEROUT)では自家農園の完熟りんごを絞った果汁が原料ですが、一般的には果実から絞った100%ストレート果汁なのか、濃縮果汁を使用しているかという違いもあります。
フランス製のシードルであれば100% Pur Jusという記載があれば、濃縮果汁を使用していないオーセンティックなものと言えます。
工業生産的シードルでは、濃縮果汁に水を加え還元していますが、
ストレート果汁を使用する伝統的な製法では加水は禁止されています。
フランスのシードルでCidre Traditionnel トラディショネル(伝統的なもの)、Cidre fermierフェルミエ(自家農園の果実をつかったもの)、 Cidre Artisanalアルチザナル(職人がつくったもの)のいずれかの表記があれば、加水のないピュアジュース100%使用のシードルです。

◆オーセンティックな製造方法

オーセンティックなシードルの製造工程は、
古来製法Méthode ancestralle
または
伝統製法Méthode Traditionnelle
と呼ばれ、野生酵母のみ使用、加熱殺菌をしない、瓶内発酵による自然の泡などの特徴があります。
りんごを皮ごと破砕してしぼった果汁だけを発酵して造られるので、豊かなアロマがしっかりと現れています。
また、現在フランスで市場の90%以上を占めているシードルが、炭酸ガスを添加して仕上げられています。瓶内発酵の時間が必要ないので、短期間で生産することができます。
原産地統制呼称(AOC)という制度は、地域性に加えて、栽培法や製造工程も厳しく定められており、AOC認定シードルはオーセンティックな製造過程を保証されています。
瓶内発酵で生まれる泡はとても細やかでクリーミー、持続性もあります。
HEROUT(エルー)では、酵母添加や温度管理によって発酵を人工的に管理することを極力避けて、自然の力をリスペクトしながら醸造します。

◆オーセンティックな飲み方とシードルのカテゴリー

フランス全体では、シードルは1月上旬の公現祭(エピファニー)の時期に食べるお菓子カレット・デ・ロワや2月2日の聖燭祭(シャンドルール)の日に食べるクレープと合わせる季節的なニーズと、ブルターニュの地方料理であるガレット(そば粉のクレープ)と合わせて飲むという定番の組合せとして知られています。
お菓子類には甘口Douxドゥや中辛口Demi-Secドゥミセックのものを合わせることが多いです。

【シードルの分類】

  • 甘口Douxドゥ アルコール3%未満 残糖42g/L以上

  • 中辛口Demi-Secドゥミセック アルコール3~4,5%未満 残糖28g/L以上

  • 辛口Brutブリュット アルコール4.5-5,5%未満 残糖28g/L以下

  • 極辛口Extra-brutエクストラブリュット アルコール5,5%以上 残糖18g/L以下 ⇒コトンタンAOCで初めて公的にエクストラブリュットが認められました。

コトンタン半島では、地元の食材との組み合わせで食中酒としても長く愛されてきたのです。海に囲まれたコトンタンの特産品「生牡蠣とエクストラ・ブリュット(極辛口)シードル」のマリアージュ。

生牡蠣と極辛口シードル、最高の組み合わせ


ブリュット(辛口)には、豚肉、鶏肉、地元ノルマンディのAOC認定チーズカマンベールポンレヴェックなど、上質なミルクから作ったクリームソースも相性抜群!

京都「ラヴァチュール」でのコラボ、絶品タルトタタン、チーズ&シャルキュトリと。



近年、パリのネオビストロの創作料理や、高級レストランでも、自然派シードルが食中酒としてリストに入るようになってきています。
ワインよりもアルコールやカロリーが低く、サスティナブルなライフスタイルを求める若者を中心に、ヘルシーなドリンクとしてのニーズが高まってきているとか。

メインディッシュとシードルの組み合わせ例:サーモンとキャベツのクリーム煮込み

まだあまり知られていないフランスのオーセンティックなシードルの魅力が伝わったでしょうか。
日本ではまだ「シードルは甘いジュースのようなお酒」と思っている方が、多い印象です。
美食の国フランスで発展してきた、本場の伝統的なシードルを、ぜひ味わってみていただきたいものです。

HEROUT(エルー)オンラインストア:https://heroutjp.net/

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