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個と組織の関係性

皆さん、こんにちは。コクーの入江です。当社では半期に一度、各事業のマネジメント陣が全員で集まって振り返りの総括をしています。先日そうした機会において、チームの皆が圧倒的当事者意識を持って本気で振り返り、未来に向けて議論をしている姿を見て、うるうるしながらも、個と組織の関係性について改めて考える機会となりました。


組織における価値創造の変化

日本の企業において、20世紀の高度成長期における組織では規模と範囲の経済によって価値を生み出していたのに対し、21世紀に入り、IT、デジタル化が一気に進んだ2010年以降の組織では、イノベーションが作り出す差異が価値へとシフトしていったかと思います。具体的には、前者は生産設備や安い労働力、効率的なオペレーションを通じて価値を生み出していたのに対し、後者では、アイデアやビジネスモデル、人的資産が価値を見出していくといった、個が価値創造の主体になってきたかと思います。

総じて、20世紀型の経営パラダイムを「個は組織に従う」だったとすれば、21世紀型の経営パラダイムは「組織は個に従う」と言えるかと思います。

こうした変化は、今の時代の特に若い世代の問題意識が急速に変化していることも大きな理由だと思います。日本では2030年に労働需給ギャップが644万人になると言われていますが、2025年には労働者の約半分をミレニアル世代(1980年~1990年代半ば生まれ)やZ世代(1990年代後半~2000年代生まれ)が占めると予想されています。この世代と現在企業の中枢にいるX世代(1960年~1970年代生まれ)とはどう違っているのでしょうか。

ミレニアル世代やZ世代は安定志向が強いと言われがちだが、離職意向は高く、ある調査によると「2年以内に離職する」と考えている人がミレニアル世代の人が約50%、Z世代では60%以上を占めている。そしてX世代の離職理由は「報酬」や「昇進機会が十分でない」に対する不満が多い一方、ミレニアムやZ世代は「仕事の内容」「社会的意義」「ワークライフバランス」などが上位に挙がっていた。

「デロイトミレニアル年次調査2020」より

ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットンは世界的ベストセラーとなった「ワーク・シフト」の中で、新しい働き方として3つのシフトを提言しています。

①「ゼネラリスト」から「連続スペシャリスト」(知的資本)へ
②「孤独な競争」から「協力して起こすイノベーション」(人間関係資本)へ
③「大量消費(金銭・物質的価値)」から「情熱を傾けられる経験」(情緒的資本)へ

その根底にあるのは、組織に縛られない自律的な個の存在です。

自律的な個を軸とした組織

皆さん、配信登録制のストリーミングサービスを提供する企業「ネットフリックス」はご存じですよね。まさにネットフリックスは自律的な個を軸とした組織の代表格だと思います。今回はビジネスモデルや戦略ではなく人事制度に着目しますが、ネットフリックスでは以下の5つの大方針が掲げられています。

①社員自身の意思決定を積極的に促す
②情報は、広く、オープンかつ丁寧に共有する
③率直かつ直接的なコミュニケーションをとる
④優れた人材でチームを構成し続ける
⑤ルールをつくらない

Netflixのカルチャー: さらなる高みを求めて

以下の「Culture Deck」も有名です。フェイスブック元COOのシェリル・サンドバーク氏が「シリコンバレー史上、最も重要な文書」と評したことでも知られています。

このカルチャーデックの2ページ目には、ネットフリックスの企業文化は「自由と責任」であると宣言しています。そしてこの文化をよく表しているのが「ルールをつくらない」という方針です。例えば、休暇規定については「休暇を取るべし」の一言であったり、その他の規定に書いてある補足は「ネットフリックスには服装規定もありませんが、裸で職場に来る人は一人もいません。つまりなんでもかんでも規定を定めれば良いというわけではないのです」と書かれています。出張・娯楽・贈答品などの経費に関する方針もシンプルで、これはたった5つの英単語で表現されています。「Act in Netfrix's Best Interest」~ネットフリックスにとって最大の利益になるよう行動すべし~です。

このネットフリックスの「自由と責任」という考え方にある哲学はとても奥深いです。同社ホームページに記載されている以下文章を紹介します。

とある会社では、床にゴミが落ちていても、誰かが拾ってくれるだろうとそのままにされています。一方別の会社では、オフィスでゴミを見つけたら、そこが自分の家であるかのように社員が拾って捨てる習慣があります。Netflixが目指すのは、社員一人ひとりが会社を良くしていこうという責任感を持っている会社です。ゴミを拾うというのはあくまでたとえですが、「自分の仕事ではない」とは考えずに、課題の大小に関わらず対処しようとする姿勢を求めています。全員が当事者意識を持つことで、そうした行動は自発的に行われるようになります。
私たちの目標は、社員を管理することよりも、その背中を押し、インスパイアすることにあります。すべてのチームには、Netflixのためにベストを尽くすことが求められます。それによって責任感が養われ、説明責任を負い、自ら自分の行動を律し、良い仕事をしようという意欲が生まれるのです。社員に自由を与えること自体が目的ではありません。重要なのは、Netflixのことを気にかける気持ちを社員の中に養い、会社に対しベストを尽くしてもらうことなのです。

ネットフリックスホームページ「フリーダム&レスポンシビリティ (自由と責任)」

皆さん、いかがでしょうか。もちろん企業によって様々な変数があるので、全ての企業がネットフリックスの文化がフィットするわけではないですし、全てが正しいということでもないと思っています。私が思うのは、組織の、経営の本質として「個が組織に従う」ではなく「組織が個に従う」というパラダイムが、現代のあるべき姿であるということです。そしてその個が自律して人間関係の質を高め、思考の質を高め、行動の質を高めることで、組織としての成果に繋げていくというプロセスが最も重要で、その本質であり原点であるのは「個」だと改めて思うのです。

組織は個に従う

では、これからの時代において「組織は個に従う」というパラダイムへの転換が迫られるとすれば、組織のリーダーやマネージャ、社員一人ひとりに求められるものは何か?またもやネットフリックスですが、同社では、経営とは社員の判断力を高めることと見なされており、経営トップや経営陣による判断は少なければ少ないほど良いとされています。それはマネージャも含めた社員全員が自律していくことに他なりませんが、そのリーダーやマネージャが社員全員に伝えるべきコンテクスト(文脈)は以下の5つとされています。

①チームの任務やメンバーのタスクと会社のゴールとの関係性
②任務・タスク遂行における「相対的な優先順位」
③求められる正確性
④ステークホルダーは誰か
⑤カギとなる指標と成功の定義

ネットフリックス「マネージャが伝えるべき5つのコンテクスト」

中でも私は特に①と⑤が大切だと考えています。なぜならば、社員一人ひとりが会社のゴールやWill、個のWillやタスク、そしてチームの任務をすべて理解することを前提として、組織ははじめて「個に従う組織」を受け入れることができるし、そうして個も任せられることで、当事者意識を持ち、自律できると思うのです。またゴールに進むための具体的な指標や、何をもって成功だというのがイメージできていれば、モチベーションに依存して行動することなく、自分の内面から湧き上がってくる意志の力によって行動するようになるからです。すべてのリーダーやマネージャがこのリーダーシップをとれるようになったら、ネットフリックスと形は違えど、エクセレントカンパニーになれるのではないかと考えています。(当社も今後この辺りの問題意識をより高めて、めっちゃ試行錯誤していかないと…💦)

枠組みの中の自由

ただ、そのような「個に従う組織」であっても、何でも自由にやって良いのではなく、「枠組みの中の自由」~Free in Flame~という概念が重要だと考えてます。
”枠組み”とは何かというと、組織のパーパスやビジョン、理念です。

目的地が一致していないと組織はバラバラになってしまいますので、まずは組織として北海道に行くのか、沖縄に行くのか、大阪に行くのか、目的地を明確にすることが重要です(パーパスやビジョン)。併せて「なぜそこに行くのか」も明確にする必要があります。そして「美味しい魚とお酒を飲みながら皆でワイワイ騒ぎたい」というwhyに正解不正解はなく、そうした価値観に共感するか否かであるのです(理念)。こうした、目的地や価値観が一致するというのがここで言う"枠組み"です。そうした枠組みの中であれば、北海道までの行き方などは、チームによって様々であって良いのです。飛行機で行く人もいればフェリーで行く人もいる。夜行列車で行く人もいればヒッチハイクで行く人もいる。つまり"枠組みの中の自由"というのは、多様性の本質であり、イノベーションの源泉であると考えています。

遠心力と求心力

個が、枠組みの中で自由になると遠心力が働きますので、人が多くなればなるほど、行動すればするほど、その力は増大していきます。その遠心力で組織がバラバラになるのを防ぐためには、求心力を生み出していかなくてはなりません。その組織の求心力とは、以下の4つがあると考えています。

①社会を変えようとする大胆な理念やパーパス
②自律した個を惹きつける組織文化や行動指針
③個に成長と自己実現の可能性を与える機会
④社会に良い影響を与えるビジネスモデル

こうした過程でとりわけ重要となるのは、経営トップや経営陣が「個が組織で働く意味」を創り出すことです。組織はそもそもどこを目指しているのか。なぜそれを目指そうとしているのかを語り、その目指す場所が、組織のメンバー一人ひとりにとってどんな意味を持つのかを考えてもらい、働く意味を自らの意志として腹落ちしてもらうことが最も大切なやるべきことです。

まとめ

・「個は組織に従う」から「組織は個に従う」というパラダイムシフトを起こすべき
「自律した個」の集合体が、卓越した企業文化や組織プロセスを生み出しエクセレントカンパニーへと導く
「枠組みの中の自由」とは、パーパス/ビジョン/理念の共感という枠組みの中で、多様な価値観の人たちが自由に挑戦をしていくという多様性の本質でありイノベーションの源泉である
・経営トップや経営陣は「個が組織で働く意味」を創り出し、働く意味を自らの意志として腹落ちしてもらうこと

最後に、ネットフリックスのホームページにも記載があり、私自身も好きな言葉にて締めたいと思います!


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