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1人当たりGDP世界第2位のアイルランド:ビジネス拠点としての魅力

こんにちは、アイルランド在住会計士のつぐみです。

日本にとって、アイルランドはまだまだマイナーな国なのですが、アイルランドは意外にもビジネス国として成功している国です。

アイルランドの1人当たりGDPは112,248ドルで、世界第2位。ちなみに日本は33,950ドルで、世界34位。成長率はアイルランドが8.7%、日本は0.3%です。この数字を見るだけで、アイルランドが隠れたビジネス強国であることがうかがえるでしょう。

アイルランドの1人あたりGDPが高い理由はいくつかありますが、主な要因は外国企業進出、外国直接投資の増加に成功していることにつきます。 ヨーロッパビジネスの拠点として注目を集めている、その成功の理由は何でしょうか?今日はアイルランドのビジネス拠点としての魅力についてお話ししたいと思います。


1. 戦略的なロケーション

アイルランドはヨーロッパ市場へのゲートウェイとして理想的な位置にあります。EUの一員であることから、アイルランドに拠点を置く企業はヨーロッパ全域へのアクセスが容易になります。英国のEU離脱(Brexit)に伴い、多くの企業がアイルランドをヨーロッパ拠点として選んでいます。特にテクノロジー、製薬、医療機器の分野で大手企業が拠点を構えています。これにより、国内での生産活動と輸出が増加し、GDPを押し上げています。
例として、GoogleやFacebookはダブリンにヨーロッパ本部を設立しており、EU市場へのアクセスを確保しています。また、マイクロソフトやアマゾンもアイルランドに大規模なオフィスを構えています。
ロンドンの”シティ”と呼ばれる金融街に拠点を置いていたバンク・オブ・アメリカ等の金融サービスも、Brexit以降ダブリンに拠点を移動しました。その流れに乗り日本企業もアイルランドに流入するかと思いましたが、あまり移動しませんでしたね。

2. ビジネスに有利な税制

アイルランドの法人税率は12.5%と非常に競争力があり、欧州で最も低い税率の一つです。(但し、アイルランド政府は、OECDのグローバル・ミニマム課税導入に同意し、現状大会社の法人税の最低税率を15%としています。)この低い法人税率は、企業にとって大きなコスト削減を可能にし、収益性を高める要因となっています。

さらに、アイルランドはパテントボックス制度を導入しており、企業が知的財産(特許、パテント)から得た収益に対して、より低い税率を適用しています。つまり知的財産をアイルランドにて登録、活用することにより節税対策がとれるため、研究開発を推進する企業にとって、知的財産を活用するインセンティブが強化されています。

また、アイルランドには研究開発(R&D)税制が整備されており、企業が研究開発活動に投資する際に税額控除を受けることができます。この税制は、企業のイノベーション活動を支援し、技術開発を促進するための重要な施策となっています。

アイルランドはこれらの税制により、企業の技術革新を促進し、高度な技術を持つ産業に重点を置いています。これにより、高付加価値の製品やサービスが生産され、輸出されています。

3. 優れた人材と英語ネイティブ圏

アイルランドは、質の高い教育システムを備え、多くの優秀な人材を育成しています。また、英語圏であることから、ビジネスコミュニケーションが円滑に行われるため、国際的な企業にとって魅力的な拠点となっています。

さらに、EU圏内に位置するため、ヨーロッパ中から優秀な人材が集まり、多様で高度なスキルを持つ労働力が豊富に存在します。多言語対応が可能な人材も多く、グローバル市場での競争力を高める要因となっています。EUのメンバーシップにより、アイルランドは他の欧州諸国との自由貿易や労働移動の利点を享受しています。これにより、国内市場の拡大と人材の流入が促進されています。

またヨーロッパだけではなく、歴史的にアメリカに移住したアイルランド人が非常に多いため、アメリカとの間に血縁、ビジネス、文化的なつながりも多く、アイルランドとアメリカの関係は簡単に切り離せないものとなっています。

4. 安定した経済環境

アイルランドは近年、経済成長を続けており、安定した政治・経済環境を提供しています。特筆すべきは、アイルランドの人口が増え続けていることです。出生率は他の先進国と同様に低下しているものの、外国人の流入により人口が増加しており、これが経済成長の一因となっています。
若者の人口が減少し続けている日本には信じられないかもしれませんが、働き世代の人口が多い健全な人口ピラミッドがあるアイルランドは、経済的に安定しています。EUへの借金など他の問題はあるにせよ、この人口増加は、消費市場の拡大を促し、企業にとって新たなビジネスチャンスを生む要因となっています。

5. 豊かな文化と生活の質

アイルランドは美しい自然や豊かな文化で知られており、働く環境だけでなく、生活の質も非常に高いです。フレンドリーで多くの人種が混じり合う多文化な社会は、外国人にとっても住みやすく、働きやすい環境を提供しています。

特に首都ダブリンは、都市というよりも大きな街のよう。赤煉瓦の建物が立ち並ぶ景観は美しく、車で30分も走れば海や山など緑豊かな自然へとアクセスできます。
ワークライフバランス及びQOLを高め、充実した環境にて仕事を楽しむことができます。

まとめ

アイルランドは、戦略的なロケーション、ビジネスに優しい税制、特に競争力のある法人税率、パテントボックス制度、研究開発税制、優れた人材、安定した経済環境、特に人口増加による市場拡大、そして豊かな文化と生活の質といった要素により、魅力的な外資誘致に成功している国です。その結果、一人当たりGDP世界第2位を達成しているビジネス発展のための理想的な場所となっているのです。

日本にとっては、まだまだ身近な国とは言い難いですが、とくにヨーロッパにおける海外進出を考えている企業や個人にとって、アイルランドは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

ただし、アイルランドにおける一人当たりGDPの数値は多国籍企業の活動による部分が大きいため、国内の実際の生活水準を完全に反映しているわけではないという点には留意が必要です。格差が広がっているのはどこの国でも同じような状況ですね。

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このコラムは、海外在住日本人が綴るマガジンVACILANDOが出版する世界の12か月シリーズアイルランド版、「アイルランドの12月」に掲載予定のコラムです。今夏には出版予定ですので、応援よろしくお願いします!

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