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映画『バグダッドカフェ』
さびれたドライブイン、コーヒーさえ出せないカフェ、ぱっとしない夫にキレちらかす妻ブレンダ。そんなところへ現れたドイツ人の女ジャスミン。一方は汗を拭い、一方は涙を拭って向かい合うところから二人の女の交流が始まります。
冒頭、冴えない太った女というだけに見えたジャスミンは、バグダッドカフェに関わる全ての人の心を撫で、小さな変化をそっと起こしていきます。それは希望や愛や喜びの種を蒔く行為で、物語の進行と
映画『フェイブルマンズ』
スピルバーグの自伝的作品とのこと、映画への愛でハッピーなものを想像していたらそういう牧歌的なものではありませんでした。
初めて見た映画での列車の衝突事故シーンを、買ってもらった贈り物の列車たちで再現して壊してしまい、母の助言でそれを次には撮影して残すところから映画との関係が始まっていきます。映画というもののおもしろさも残酷さもかすかに感じる始まりです。
映画を撮るということは時に演出など及ばない、
映画『最後の決闘裁判』
二人の男と一人の女、三人の視点から展開されるストーリー、といえばいやでも黒澤明の『羅生門』を想起するのですが、そこは現代の映画、一人の女の造形はとても細やかなものでした。
(結末に触れています)
妻を強姦されたと訴え決闘に持ち込む夫、合意だった・強姦などなかったというその友人の男。ひと昔前のメロドラマなら“つまらない夫との生活の隙間に割り込む美貌の男、二人の間で女は…”、みたいな展開になるところ
映画見たときに、うーん…ちょっといいドラマをみたくらいにはよかったかな、という感想のときがけっこうある。映画好きな人、そういうことないですか?
映画『ミツバチのささやき』
『ミツバチのささやき』を見てきました。午前十時の映画祭で初上映とのことでした。私自身は久しぶりの鑑賞でした。
スペインの軍事独裁政権下で検閲を逃れるべく作られ隠喩に満ちているというので今回の上映には解説が付けられていました。知識としてそれを踏まえて見ることはより映画を理解する助けにはなるかもしれませんが、蛇足ではなかったかなと感じました。
全編通して淡々と静かなようでいてあらゆる動きが鮮やかです。
映画『洲崎パラダイス 赤信号』
Amazonprime、日活映画の旧作が豊富な印象があって、これもそのひとつ。
ひと言でいえば腐れ縁の男女のぐずぐずした関係をとらえた映画、だけどとても面白い。新珠三千代が手前から画面の斜め奥へ走っていく場面が何度もあり、着物が日常着だった時代とはいえ、快足が小気味よい。この小気味よさが映画の中にずっと流れていて腐れ縁映画なのに湿っぽくないのです。
道連れの男は甲斐性も覇気もないくせにいっぱしに嫉
映画『台湾、街かどの人形劇』
李天禄の、長男。
偉大な父の名前と共に生きるというのは80年以上生きてもなお、ただの“自分”を手にすることができないまま生きるということでした。その苦悩も悲しみも怒りも、あるのかないのか静かな表情の奥にそっとしまわれているようでした。
父は、台湾の布袋戯の人形遣いで人間国宝であり、侯孝賢の映画への出演(今作中には『恋恋風塵』の最終盤のシーンがそのまま出てきます)でも世界に知られた李天禄。この映画で
映画『エドワード・ヤンの恋愛時代』
『エドワード・ヤンの恋愛時代』を見てきました。
最初に見たときは途中うつらうつら眠ってしまい(なんてことだ…!)、DVDなどもないし見返すこともないまま20年以上が過ぎました。それから後『ヤンヤン夏の思い出』も『恐怖分子』も『牯嶺街少年殺人事件』も見ることができて、そのたびに『恋愛時代』をもう一度ちゃんと見たいとずっと思ってきました。
エドワード・ヤンの映画は画面の中の人物の出し入れがとても洗練
映画『アフターサン』
『アフターサン』を、見てきました。
たったひとつだけ撮りたい作品を撮れたらそれでいいというような映画でした。監督自身のお父さんの思い出が反映されているというこの作品は、たぶんとても個人的な映画で、何の予備知識もなければ分かりづらい表現をあえてとっていて、エンタメとして消費することを静かに拒んでいるようでもありました。
死へ傾いている精神的に不安定な様子を滲ませている父親を、同じ年にまで成長した娘
Twitterが終わってしまいそう、なのでこちらにつぶやいてみようかなと。
私はここにいます