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#309 視点を変える、世界が変わる

 夏目漱石の著書『吾輩は猫である』は珍野 苦沙弥(ちんの くしゃみ)が飼っている雄猫(=吾輩)が主人公。人間世界を「猫」の視点で描くその発想は、当時としては非常に新しく人気を博しました。

 私たちが何かを学ぶ時には多面的な視点が必要である。言葉としては、なんと当たり前の話だと思う。ですが実際に人が何かを多面的な視点で見ることは非常に難しい。多面的な視点を得るには、膨大な知識・技量・思考が必要であり、また他者の感覚を受け入れる土壌が自身に必要です。

 ノンフィクション作家・石井光太氏が同じクラスで高所得者の子供と低所得者の子供が一緒に学ぶシステムにおける欠点を指摘している記事を見つけました。

同じ学校生活を送る中で低所得者の子どもたちが自身の経済状況に対する劣等感を持つと石井氏は指摘しています。

昔、アフリカのギニアの出身である有名外国人タレントと貧困についてのトークイベントをした際に、彼がこんなことをいっていたのが印象的だった。
「僕は大人になるまで、自分が貧しいって思ったことなかったよ。周りがみんな大変だったから、それが当たり前だって思っていた。だから、つらいとか大変だったっていう記憶がないの。けど、日本はそうじゃないでしょ。子供のときから自分は貧乏だとか、頭が悪いとか植えつけられる。こんなのかわいそうだよ。僕だったら嫌になっちゃうもん」

 私個人としては、ここでの本質的な問題は「経済格差そのもの」ではないと感じているし、真の意味での教育の機会均等は、その「違い」を受け入れ、されどそれが決して自分自身の存在の価値を脅かさないことであると信じています。一方、そのシステム自体が低所得者の子どもたちの自己肯定感を下げるという見方もある。ここで学ばなければならないのは、ある視点で、相手に良いと思ってしたことが、本当の意味でその相手の望むものになっていないということなのです。



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