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zaccanto:鼻歌雑記

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なんでもないありふれたできごとなどを、どこにでもいる一般人のことばで鼻歌を歌うように綴ります。
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#エッセイ

憎さからかわいさへ《zaccanto》

憎さからかわいさへ《zaccanto》

 くそー、あいつめ。
 と、ときどき思ってしまうような人がぼくにもいる。その人に対して常は冷静なつもりだが、あるきっかけでその穏やかそうな水面がふっと怒りの沸点に達しそうなことがある。あるいは自分の中に燠のようなものを抱えていて、それが炎をあげそうになる手前でいつも抑えている。ぼくはなんとも煮えきらない生焼けの男である。
「若い頃は瞬間湯沸かし器と呼ばれた」ことを武勲のように話す老人を何人か見たこ

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追悼をかけて《zaccanto》

追悼をかけて《zaccanto》

 長女がアレクサにかけてもらいたい曲があるのに、なかなか思った曲をかけてくれず、迷曲ばかり流れるので、見かねた妻がキッチンカウンターの向こうから、
「アレクサ、つぅいとうをかけて」
と言った。
「?」
ぼくはノートPCを開いて仕事をしていたが、思わず顔をあげて、右手はマウスを脱マウス。すると、
「Amazonミュージックで、つばめを再生します」
とアレクサ。
 これぞ娘が求めていた曲! だが、なぜ

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