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【代表取材】業界の常識を覆す”売主ファースト”と“成約実績データの一般公開”でグロース期突入。不動産テックスタートアップ、イクラ創業背景とサービス急成長の理由

Introduction 

「坂根さん、私の家を安く売ろうとしてませんか?」

売主の方から言われた一言をきっかけに、当時大手不動産会社で不動産売却に携わっていたイクラ代表・坂根さんはイクラ株式会社を創業。

これまで業界でタブーとされてきた「売主への不動産成約実績データ(以下、成約実績データ)」の公開に挑戦し、売主と不動産会社をつなぐマッチングプラットフォーム「イクラ不動産」の提供を開始しました。

創業からサービスローンチに至るまでの4年間には、業界からの反発など、さまざまな紆余曲折がありました。

それでもなぜ、業界の商慣習の変革に挑むのか?
モチベーションの源泉と今後の戦略を伺いました。


業界の課題解決には、自分で会社を立ち上げるしかない。

ーー 「坂根さん、私の家を安く売ろうとしてませんか?」という売主の言葉には、どのような背景があったのでしょうか?
不動産売却において、売主は “査定価格の高さ” で不動産会社を選ぶことが多いのが実情でした。なぜならば、売主には正確な査定価格や不動産会社の売却実績を調べる術がなかったからです。

不動産会社は、この情報の非対称性を利用して、売主集客を有利に運ぶため “だけ” に査定価格を高く見積もることもありました。

しかし、ここで問題になるのは “査定価格” と “実際の売却価格” の乖離です。

売主にとって一番大切なのは「売却価格」です。
しかし、査定価格が高いという理由で不動産会社を選定し、最終的な売却価格が安くなってしまう売主がたくさんいました。

実際に私自身が大手不動産会社で勤めていた当時、真っ当な査定価格を提示したにも関わらず、他社の提示額に負けてしまったことがありました。

そこで売主の方から言われた言葉が「坂根さん、私の家を安く売ろうとしてませんか?」。

その売主の方は他社が出した高い査定価格で売り出し続けていた結果、なかなか売却が決まらず、最終的にはかなり安い売却価格となってしまいました。総じて、本当に悔しかったことを覚えています。

ーー 坂根さんの原体験ですね。
はい。
その時に考えたのが、こうした課題は誰のせいでもなく “不動産売却の仕組みの問題” ということ。

だからこそ、仕組みを変えて情報の非対称性を解消し、不動産売却における課題解決をすべきと考えるようになりました。

ーー 具体的にはどのようなサービスにしようと考えたのでしょうか?
不動産売却における売主の不利益は、”メルカリ” のように「過去、その商品がいくらで売れたのか?」を売り手・買い手、双方がフェアに知ることができれば解消されると思いました。ただ、不動産はその特性上から容易に CtoC ができるとは考えておらず、”どこの不動産会社が” “いくらで” 売っているのか、ファクトベースで掲載することで、売主が不動産会社を選択する際の助けになると思いました。

また、不動産売却におけるデジタルシフトの潮流もサービスの着想になりました。2015年当時、不動産売却ビジネスはチラシで売主集客するのが主流だったのですが、時代の変化とともにウェブ集客へ移行しつつあったからです。

これら2点から、作るべきは不動産売却における “食べログ” のような Web サービスだと考え、最初は父の経営する不動産会社に提案しました。

そこで言われたのが「寝言は寝てから言え!」という、これまた痛烈な一言でした。

当時、起業する選択肢は全く考えていませんでしたが、この挫折が「自分で会社を作り、挑戦するしかない」という強い決意となり、イクラを創業しました。そうして試行錯誤してできたのが、2019年にローンチした「イクラ不動産」です。

徹底的な売主視点のサービス設計が不動産会社にもメリットに。「イクラ不動産」急成長のワケ。

ーー 「イクラ不動産」はどんなサービスなのか教えてください。
日本で初めて一般消費者向けに全国の不動産売却成約情報をデータ公開。誰もが公平に活用できることを目指し、お家を売りたい売主と適切な不動産会社をマッチングする不動産売却プラットフォームです。

サービス開始4年で加盟店舗数は約3,800を突破し、売買不動産仲介会社の12%にまで普及しました。
売上は昨対比170%と急成長を実感しています。

ーー 急成長の要因は何でしょう?
他社が行わないアプローチで、売主と不動産会社、双方のニーズを的確に捉えられたからだと感じています。

ーー 売主のニーズというと?
売主が抱える不安を払拭できることです。

大抵の場合、お家はその売主=家族にとって最大の資産。そんな大切な資産の売却検討の発端は、離婚・借金・住宅ローン返済・相続・転勤・事故物件など、ネガティブな理由がほとんどです。いずれの背景にせよ、家を売るのは最後の手段で、理由が理由なので、いざというときに親や友人には相談しづらく、ネットで調べても、不動産会社との情報の非対称性によって必要な情報が出てきません。

  • どのように売却を進めたらいいのかわからない

  • どの不動産会社に相談するのが適切か判断基準がない

  • 不動産会社から提示される査定価格が妥当なのか判断できない

「イクラ不動産」は、これらの売主の不利益に着目し、相談に乗ってほしい、サポートしてほしい、というニーズに真摯に応えています。気軽に非対面で売却相談できるような仕組みと、各加盟店の成約実績データの公開により、データに基づく判断基準を持てるようにしました。

「イクラ不動産」は匿名かつ LINE などのチャットで売主のご相談に乗っている
売主の地域で各種領域に強い不動産会社を探せる仕組みを提供

ーー 不動産会社のニーズはいかがでしょうか?
コストを最小限に抑えた集客をしたい、という強いニーズがありました。
これまで不動産会社の売主集客は “一括査定サイト” が主流で、もし成約につながらなくても、マッチング時点で費用が発生していました。

つまり、プラットフォーム側は売上を上げやすい一方で、不動産会社側にとっては売主の “売却する” という意思決定のリードタイムの長さが不利で費用対効果が合わないことも多い料金設計だったからです。

対して「イクラ不動産」は、成果報酬型の料金体系です。
売却成立時にはじめて成果報酬をいただいています。費用面においてのデメリットはないため、不動産会社にとって利用しやすい仕組みにしたことも加盟店の急増の理由です。

また「イクラ不動産」を通じて、売主がそれぞれに抱える売却検討理由を汲み取った “家を売る手前の問題解決” をサポートしているため、その前捌きにより不動産会社はスムーズに売却を進めやすくなっています。

ーー 売主と不動産会社のマッチングサービスという観点では一括査定サービスもあるとのこと、「イクラ不動産」は他のマッチングサービスとは何がもっとも異なるのでしょうか。
徹底的に “売主” に寄り添う姿勢、toB(不動産会社)向けではなく toC(売主)にベクトルを向けていることが他社との大きな違いになります。

「イクラ不動産」を含め、一括査定サイトなどのマッチングプラットフォームの収益源は不動産会社です。そのため、 toB(不動産会社)を優先するサービス設計にする方が収益を上げやすいのが実情です。

しかし、私たちは売主がいない限り不動産会社も不動産売却ビジネスは成立しない、決して逆ではないと考えています。

ーー だから、バリューに「一に売主、二に不動産会社、三にイクラ」を掲げているんですね。
おっしゃる通りです。
まずは徹底的に売主にベクトルを向けてサービス提供し、それが不動産会社にとってもメリットとなるよう設計し、双方のお客様に真摯に向き合うことを重視しています。
そうして売主も不動産会社も、そしてイクラも同じ方向を向いて「不動産売却の成功」のために動いています。

ーー では、明確な競合はいないということでしょうか?
不動産売却マッチングプラットフォームという広義で捉えると、競合がひしめいています。
しかし「成約実績データの利活用」「不動産会社も電話ではなくチャットを接客に利用」などの切り口から、toC(売主)にベクトルを向けたプラットフォームという意味では「イクラ不動産」には競合がいません。

ーー 成約実績データを公開していることも「イクラ不動産」の強みですよね。なぜ、これまでタブーとされてきたデータを収集・公開できるのですか?
不動産会社も変化の必要があったから、というのが回答です。
というのも、どの不動産会社が査定価格を算出しても差別化が難しいからです。

結果として、ネームバリューがある不動産会社の方が売主を集客しやすく、また集客のために提示する査定価格の吊り上げなどが起こっていました。これは真っ当にがんばる不動産会社にとっても、売主にとっても、デメリットとなります。

そこで、「イクラ不動産」はまず地域に根ざした地場の不動産会社をターゲットに絞り、彼らの強み=その地域での信頼の証である “長年の売却実績” を公開することが売主の信頼獲得につながる、と訴求しました。

不動産会社にとって、成約実績データは “命の次に大事なデータ”。
競合他社に情報を晒したくないというのが通例です。

サービスローンチ当初は、多くの不動産会社に断られてきましたが、「真っ当にがんばる不動産会社が見える化され、売主から選ばれやすい」という、売主集客の課題を解決できる点が徐々に評価されるようになりました。

ビジョン「お家の価値を上げ、家族の暮らしをより良くする」に込めた意味

ーー 「イクラ不動産」はビジョン達成に向けた第1段階だと伺いました。イクラの描く長期ビジョンを教えてください。
私たちのビジョンは「お家の価値を上げ、家族の暮らしをより良くする」こと。
これは単なる不動産売却にとどまらず、家の価値を活用して幅広い社会的課題の解決を目指すものです。

ーー お家の価値を活用して、幅広い社会課題を解決するというと?
「お家を売る」以外の方法でも、不動産の価値を活用して不動産売却の理由となる、借金や相続などネガティブな金銭的な課題解消ができる未来を描いています。

一例が、リバースモーゲージ。
高齢者が自宅に住み続けながら、その家を担保に融資を受けられる仕組みです。高齢化が進む日本には不可欠なサービスですが、普及が進んでいません。

その最大の障壁は、家の価値に関する信頼できるデータの不足です。

イクラが収集・公開している成約実績データは、この問題解決に貢献できるはず。お家の価値が正確に把握できれば、金融機関は安心して融資を行え、高齢者は家を手放さずに経済的問題を解決できると考えています。また、金融機関が資金回収のため不動産売却するとき、実績のある不動産会社に依頼できる仕組みです。

ーー お家の価値の見える化が、あらゆる可能性を秘めているわけですね。
そうなんです。
そうしてお家の価値を上げることで、家という資産を多角的に活用し、家族の暮らしをよりよくしていく。
それこそが私たちの取り組みの最終的なゴールです。

このビジョン実現への第1段階が「イクラ不動産」です。
まずは現在掲げるミッションである「相場と不動産会社を見える化し、家の売却の不安を解決する」のもと、「イクラ不動産」をグロースさせ、その後、ビジョン実現に向けて次の段階へと進んでいきます。

いま、イクラに入社すべき理由

ーー イクラで働く一番のやりがいは何だとお考えですか?
不動産という「モノ」を扱いながら、実際には人々の「人生」に関わることができるところです。

例えば、当初査定額3000万円だった物件が「イクラ不動産」を通じて3100万円で売却できることがあります。売主の状況を的確に把握し、最適な不動産会社とマッチングすることで、このような付加価値を生み出すことができます。

特に不動産売却を検討するような金銭的に苦しい状況にある方にとって、この100万円が子どもに習い事をさせてあげられたり、未来につながる投資ができたりするかどうかの分かれ目になることもあります。

私たちがお金に窮している方も利用されるサービスを提供している以上、持っている資産の付加価値を最大化することは、最終的に日本経済にも大きく影響を与えていけると信じています。

ーー お客様に寄り添いながらも、日本経済にも寄与できる可能性を秘めたお仕事なのですね。
心からそう思っています。
離婚・相続などの様々な事情を含め、いろんな葛藤やネガティブな事象を乗り越えて売却が完了し、最後に売主から「ありがとうございました」と感謝の言葉を聞けたとき、心の底から「携わっていてよかった!」と思えるようなプロダクトであると自負していますし、それに携わることができるのがイクラです。

ーー 最後に、いまイクラに入社すべき理由を教えてください。
「イクラ不動産」は、前年比170%の成長中で、加盟不動産会社数も3,800を超えました。今後はさらなる拡大を目指しています。

このような急成長・グロース期において、新しい戦略の立案や施策の実行、組織づくりなど、さまざまな経験を積むことができます。
また、プロダクトの進化に伴い、データ分析、UX/UI デザイン、カスタマーサクセスなど、新たな専門性が必要となっています。自身のスキルを活かしつつ、新しい領域にチャレンジできる環境がイクラにはあります。

  • 不動産業界の変革を最前線で牽引したい方

  • 急成長するスタートアップで自身の市場価値を高めたい方

  • 新たなポジションに自ら手を挙げ、挑戦していきたい方

1つでも当てはまる方はぜひ一度お話しさせてください。心よりご応募をお待ちしています。


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