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大盛りをやめさせるオバハン

⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

これは僕が大学二回生の頃の話

京都の街を散歩していた僕は
一軒の定食屋を見つけた。

はじめてその道を歩いた僕は
お腹が減っていたこともあり

こんなとこに定食屋あるんや!
しかも結構旨そうな雰囲気やん!

などと思いながら
その定食屋の
のれんをくぐったのであった。

かなり古い店だった

店の中には2人の客がいた。

1人はスポーツ新聞を読んでおり
1人はもう飯を食い終わったのか
ゆっくりとタバコを吸っている

かれこれ20年近くは
やっていそうな
そんな雰囲気の店だった。

席につきメニューを見る。

どれも美味しそうだ。

その中から僕は
コロッケ定食を頼もうと決めた。
店員さんを呼ぶ

すると厨房から
僕の母親よりも少し年上だろうと思しき
女性が出てきた。
頭にバンダナのようなものを巻いており
花柄のエプロンをつけていた。


おかあさん


その女性を見た瞬間
そんな言葉が浮かんできた。

その女性は決して
僕の産みの母親でもなければ
育ての母親でもない。

しかしその女性をなんと呼ぶか
考えれば考えるほど「おかあさん」という
呼び方がピッタリ合う女性だった。
漢字の「お母さん」ではない
ひらがなの「おかあさん」という表現が
一番しっくりくる。

そんな女性

「コロッケ定食の大盛りを一つください」

僕はおかあさんにそう告げた。

「コロッケ定食ね。
大盛りだいぶ多いけど大丈夫?」

おかあさんは少し困ったような表情で聞いてきた。

「はい、お腹減ってるんで」

「大盛りだいぶ多いから
やめといたほうがええと思うよ」

おかあさんは更にちょっとだけ
困った顔をしてそう言ってきた。

「めっちゃお腹減ってるんで大丈夫ですよ」

「いやぁすごい量多いからやめとき!」

「…わかりました普通にします」

3ラリーほどの会話を終えると
おかあさんは厨房へと消えていった。

僕は店内の隅にあるブラウン管テレビを
眺めながら
料理が運ばれるのを待った。


なんだろうこのモヤモヤした気持ちは


僕は今までの人生の中で
違和感を覚える出来事があると
脳みそのある部分が刺激されることがあった。

今回もその部分がなぜか刺激されていた。

なんだろうこの気持ちは

料理が運ばれる

ご飯とコロッケ、
キャベツの千切りにお味噌汁
それから小鉢にだし巻き卵が盛られている

「これ置いとくねぇ」

おかあさんは机の上にソースの瓶を置き
また厨房へと消えていった

僕はコロッケにソースをかけない派だ

なのであらかじめソースをかけずに
こちら側に選択肢を与えてくれるという
配慮が嬉しかった。


美味しそうだ

味噌汁を飲んだあと
ご飯を食べ
コロッケを一口

うまい

僕はコロッケが好きだ

皮の薄いコロッケが好きだが
このコロッケの皮は割と厚めだった

なのにちゃんと衣がサクッとしていて
口の中にジャガイモの甘味が広がる。

さらにこのジャガイモと肉の割合が絶妙なのだ

こんなうまい定食屋が近くにあったのか

僕は感動した



ごちそうさまです

定食を食べ終わると僕は無言で手を合わせた

うまかったなぁ

腹いっぱいや

大盛りにせんでよかったなぁ

ん?
大盛り?


なるほど!
そういうことか!

僕は自分が抱いていた
違和感の正体に気づいた

今までの経験からいくと
本来僕のような年齢の人間(当時20歳)に対して
おかあさんのような女性(推定50代)は
たくさん食べることを勧めるのではないか!

普通僕が食べれる量以上のものを
食べさせようとしてくれるのではないか!

こっちが断っても半ば無理やりに!

今回はなぜかそれが違った。

それが僕が抱いた違和感だったのだ。

さらに僕を驚かせたのは
自分がいま満腹の状態であることだ。

なぜわかったのか

僕の食べる量を把握していた?

あんなにお腹が減っていたのに
絶対大盛りでも食べきれると思っていたのに

僕はそのおかあさんの
愛情の深さを感じていた。

僕のような客が来て
本当はたくさん食べて欲しかっただろう。

だが冷静に食べられる量を判断し
僕を説得する

そんなことが常人にできるだろうか

席を立った僕はお金を払い

美味しいご飯を
食べさせてくれたおかあさんに
ごちそうさまです
と一言いい店を出た。


家路につく

春の訪れを感じさせるような
あたたかい風が心地よかった。


最後に一言

あんなに美味しいご飯を
食べさせてくれたおかあさん

タイトルでオバハンって言ってすいません。

今後もどんどん楽しく面白い記事書けるよう頑張ります! よければサポートお願いします😊