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お前の方が怖いわ!

⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
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僕が京都で
一人暮らしをはじめてまもない頃、

大阪での暮らしとの違いを
一番顕著に表していると思ったのが
交通である。

京都市内はバスが非常に発展している。

どこへでも行けるし
料金は少し高いが
これを中心に生活できるだろう

そう思った

しかしそんなに甘くはなかった。

今でこそ京都の市バスについて
ある程度把握できてはいるが

その当時はバス停の場所や
道の方向などが複雑で
バス停の名前は同じなのに
なぜこんなに向かう場所が違うのか
わからなかった。

最初は何度も困惑した。

そこで
もう一つ交通手段として
有効だと思ったのが自転車だ。

京都は自転車用の道なども
整備されており
乗っている人も多い。

僕は大学入学と同時に
自転車を買いに行った。

京都は自転車屋が多い。

家から一番近い自転車屋に入った。

いろんな色や形のものが並んでいる中で
好みの物を一つを選び
店員さんに告げる。

すると店員さんは

京都は自転車の盗難が非常に多い
だからちゃんとした鍵を買った方がいい

僕に熱弁してきた。

僕は言われた通りに
大きめのチェーン型の鍵を購入した。

それからもう一つ言われたことがある。

この自転車にはライトが付いていない
だからこれをつけるといいよ!

店員が手渡してきたのは青い小さな
電球のような形のものだった。

ベルトがついており
ハンドルに巻きつける事ができる。

それらを全て
一緒に買い、持って帰って
マンションの駐輪場に自転車を停めた。

それからしばらく日々が過ぎて

僕は自転車を使って買い物に行ったり
飯を食いに行ったり
色々と移動して自転車ライフを満喫していた。

帰ってきたら
マンションの駐輪場に止め
鍵をかける。

ある日
僕が朝出かけようと
自転車に跨ろうとすると
あることに気がついた。

鍵であるチェーンが付いていない。

え?

なぜだろう

かけ忘れたんだろうか

僕は理由をいくつか考えてみた。


①鍵だけ盗まれた

そんなわけない
鍵にはそんな価値はない
大体自分が盗む事ができた鍵なんか
信用できない
とてもじゃないが使おうとは思わないだろう。

②途中で辞めた

よーし今から自転車盗むぞ!

あれ?鍵かかってるなぁ

よし!鍵を取り外すぞ!

取り外せた!

んー

まあこれだけでええか

とはならない。

③これは僕の自転車じゃない

なるほど
これが一番まともそうな意見だ。

ありそう

僕はその自転車のハンドルを観察した。

後付けのLEDライトが付いてある。

これは僕の自転車だ。

This is my bike!!!


色々と考えている間にも時間は過ぎていく。

時計を見る

約束の時間が迫っている。

僕は自転車に跨り
目的地へと向かった。

そしてその日の夜

遅くなってしまった
はやく風呂に入って寝よう

そんなことを考えながら
家の駐輪場に着くと
僕は思わぬものを発見してしまった。

それは僕がいつも停めている場所の
横の自転車だった。

その自転車には
チェーン型の鍵が巻き付けられていた。



僕のだ



This is my chain !!!!!

僕は確信した。
何度も注意深くそれを見つめる。

確実にそれは僕の鍵だった。

怖い

僕は素直にそう感じた。

18年間大阪で過ごし
意気揚々と京都にやってきたが
京都は本当に恐ろしい街だ。

泥棒がいるなんて
(多分大阪の方がおる)

しかもその泥棒がもしかしたら
自分と同じマンションに
住んでいるのかもしれない。

モンスターだ

モンスターが自分と同じ空間に住んでる。

恐ろしい。

僕は心底ビビりながら部屋へと戻った。


僕は数日前に
バイト先の女性の先輩から
聞いた話を思い出した。

その先輩は
家にいる時は玄関の鍵を閉めない派で
ある日も鍵を閉めずに
自分の部屋でテレビを見ていたらしい。

すると玄関の扉が突然開き
知らないおじさんがひょこっと顔を出した。

そのおじさんは先輩と目が合うと

「鍵はきちんと閉めんとなぁ」

と言い残し玄関を閉めて
どこかに行ったのだという。

その話を聞いた時
一人暮らしをしていると
こんなに怖いことがおこるのか!
と思った

もしその先輩が
その時、家にいなかったら
おじさんは家に入ってきていたかもしれない。

僕はまだ男で耐えた。

女の子だったら怖くて怖くて
生活できないかもしれない。

僕は部屋の中で強く生きようと決めた。

もし僕の鍵を盗んだ人が
やばい人だったらどうしよう

いや、鍵を盗む時点でやばい。

大家さんに相談しようか。

様々な考えが頭を駆け巡る

いやこういう時こそ強く出よう!

僕は何も悪くない

あの鍵を今すぐ取り返しに行き

そしてもし今僕の鍵がかかっている
あの自転車に跨ろうとしているような
そんな輩がいたならば直接言ってやろう

そいつがきっと犯人だ
注意してやろう

でも包丁とか持ってたらどうしよう。

そんな葛藤と戦いながら
僕は眠りについた。

次の日
僕は学校へ行き授業を受け
そのままバイトに向かった。

バイトには自転車は使わない
バスで行かないとややこしいのだ

バイト先につき
数時間シフトをこなすと
まかないの時間になる。

まかないは大抵
その日に入っている
他のバイトと一緒に食べる。

その時間に一緒に上がった
1人の先輩とご飯を食べていると
僕は思い出したように
昨日自分に降りかかった出来事を話した。

先輩は

「それは怖いね!」

こう答えた。


また次の日

僕は学校に行き
英語の授業を受けていた。

そのクラスでは仲の良い友人が1人いて
僕たちは大抵授業の後
昼ごはんを一緒に食べにいくのだ。

校門から出て
すぐのところにある
定食屋に入り注文をする。

食べている間また例の話をする

友達は

「へーそうなんや」

反応が薄い

この日の夜はサークル活動がある。

それまでしばらく時間がある

そんな時僕は一旦家に帰り
休憩をする。

自室でソファーに腰掛け考え事をする。

僕は正直腹が立っていた

あの僕の鍵を盗んだ輩は
今ものうのうと大学で
授業を受けたりしているのだろうか。

はたまた大学でできた彼女と
楽しいキャンパスライフを
過ごしたりしているのだろうか。

はたまた鍵だけでは飽き足らず
他の人の自転車本体まで
盗もうとしているのであろうか。

いずれにせよ許せない。

腹わたが煮えくりかえっていた。

それからしばらく経ち
ある大学の先輩と
ご飯に行くことになった。

飯を食い色んな近況報告をし、
相談に乗ってもらう

この先輩はすごく信用ができる人で
どんなことでも相談できる。

それに加えて
この人は感覚が鋭くセンスもいい。

そんな人に誘ってもらえるのが
僕は嬉しかった。

あ!

そうだ

あのことを相談してみよう。

僕は
自転車鍵オンリー盗難事件の概要を
先輩に相談した。

すると
すぐに

「え、それお前がかけ間違えたんじゃない?」

と反応がきた。



僕がかけ間違えた?

僕は思わぬ反応に困惑した

(俺がかけ間違えただと?)

僕はすぐに反応した

「そんなわけないじゃないですか!」

精一杯の笑みを浮かべる

先輩は更に続ける

「だって自転車買ったばっかりやったんやろ?
お前が自転車停めた後
一旦自転車から離れたりしたんやったら
間違って隣の自転車に鍵つけてても
おかしくなくない?」

余裕を持ってそう続ける。

僕はゆっくりとその日の出来事を思い出した

あの日深夜に帰った僕は
自転車を停めると
あることに気がついた。

そうや!
今日はビン、カン、ペットボトルの
ゴミ出しの日や!

僕はパンパンになったポリ袋を
部屋に取りに行き
ゴミ捨て場に向かった。

その後

あ!鍵閉めなあかんわ
と思い

自転車の鍵を閉めに行った。


あ!


汗がダラダラと流れるのがわかった

多分鍵かけ間違えた

そこからの僕は必死だった。

「いやいや、ちゃいますやん!
さすがに買いたてでも
自分のチャリくらいわかりますって!」

「先輩!この話めっちゃ怖くないですか?」

「先輩も気をつけてくださいね!」

それこそ目も血走りながら
なんとか先輩に認めさせようと
必死に語りかけた。


この思い伝わっただろうか


僕のこの思いが
先輩にいったいどのくらい伝わっただろうか。

「ねえ先輩!この話怖いですよね!」


先輩は困ったような表情で
僕にこう告げた。


「いやいや
お前の方が怖いわ!」


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