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二十歳の夏の甘すぎるストロベリーショートケーキ

純白のクリームの上にあしらわれた真っ赤ないちご
断面からは淡い黄色のスポンジに挟まれた
クリームと薄紅色のいちごが顔を覗かせる…

日本ではスーパーやコンビニでも手に入る
ケーキの定番「いちごのショートケーキ」

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幼稚園のこどもに
「ケーキの絵を描きましょう」と言ったら

恐らく半数以上の子が
いちごのショートケーキを描くんじゃない!?

そんなショートケーキが
実はワールドワイドなものじゃない…
と知ったのは二十歳の夏だった

大学2年生の夏休み
大学の教授に勧められて飛んでみた
アメリカ、ワシントン州シアトル

マグノリアという名前の町で
約40日間のホームステイ

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初めての海外…何もかもが新鮮

昔から食べることに興味津々の私は

サーティーワンアイスクリームの
ワンスクープの大きさに驚き

自宅で大きなターキーを焼くという
豪快な台所文化に心をときめかせ

週末に近所の仲間を誘ってのBBQでは
まるで映画のワンシーンにでも
入り込んだような錯覚を覚えていた

異文化を知るのに
食の違いほど楽しいものはない

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ある休日に連れて行ってもらったのは
ダウンタウン近くで開かれたフェスティバル

たくさんのブースが並んでいて
いろんな食べ物が売られていた

日本のお祭りで見るのとは違う
大きくてカラフルな
りんご飴や綿あめに釘付けになり

「Pink Lemonade」っていう看板に
いったいどんな飲み物なんだろう!?と
想像を膨らませていると

ホストファミリーのママが
「ストロベリーショートケーキは好き?」
と声を弾ませて聞いてきた

私の頭の中に浮かんだのはもちろん
あの「いちごのショートケーキ」

そう…日本人なら誰もがイメージできる
あの「いちごのショートケーキ」

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アメリカに行って以来
正直なところ甘すぎるお菓子に
ちょっと疲れかけていた私は

甘酸っぱいいちごとなめらかなクリーム
ふんわりとやわらなかスポンジの
上品な甘さを欲していた

ふたつ返事で「食べたい!」と伝えて
お店に連れて行ってもらった
私の目に飛び込んできたのは

想像の域をはるかに超えている
「いちごのショートケーキ」とは
似ても似つかない衝撃の食べ物

手のひらサイズの紙カップに
丸くカットした固めのスポンジケーキを入れ
(※後日、これはビスケットと呼ばれる
スコーンのようなものだということを知る)

そこにバニラアイスクリームと
甘~いストロベリージャムをたっぷり乗せ

その上からさらにドッサリ
スプレー式のホイップクリーム!?

注文すると目の前で作ってくれる
その甘そうなスイーツを手渡され

大混乱の頭の中をどうにか落ち着かせて
「Is this a Strawberry short-cake?」
と恐る恐る確認してみた

「ええ!そうよ!
ストロベリーショートケーキは初めて?」
と笑顔のママ

あの時
なんて返事をしたのか覚えてないが

たぶんひきつった笑顔で
あやふやなことを言ったんだと思う

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脳内で膨らんでいた
日本式の「いちごのショートケーキ」の
姿・香り・味は見事に消え去って

恐ろしく甘くてボリューミーな
アメリカ式「ストロベリーショートケーキ」が
私の胃袋にズッシリと収まっていった

お昼にホットドックを食べたことを
心の中でちょっと後悔した(笑)

40日間のアメリカ滞在中
いろんな食べ物を見て口にしたけれど

あの「ストロベリーショートケーキ」は
見た目も味も間違いなくNO.1のインパクト

50歳を過ぎてなお
「いちごのショートケーキ」を見るたびに
想い出しているんだから

自分の想像以上に
衝撃だったことは間違いないだろう

井の中の蛙大海を知らず…

「いちごのショートケーキ」が
世界共通のものではないことを

強烈な甘さを伴って知った
二十歳の夏の想い出




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