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元コンサルが本当におすすめする論理的思考力を高める書籍~思考編~

金融編に引き続きコンサルのおすすめ本を紹介していきたい。特にコンサルは初めての業界やテーマについて、1週間程度でキャッチアップをしてその道のプロの顧客に示唆を出す必要のある仕事である。

コンサルの仕事は主に①インプット→②考え→③アウトプットに分けられるがすべてのプロセスを高いレベルで行う必要があり、特に②の考えるフェーズは非常に重要なステップである。

今回はコンサルの基礎能力である「考える」ことについて重要な示唆を含む書籍をおすすめ本として紹介していきたい。
これからコンサル業界に足を踏み入れる就活生や、中途採用者の方々は必読である書籍であると考えている。

考える技術・書く技術(シリーズ)

最初の紹介書籍は原点にして頂点であるバーバラミント著「考える技術・書く技術」である。この本はコンサルタントが思考を進めるうえで、どのように考えるべきか、その考えた軌跡をどのようにアウトプットするかの基礎技術が、非常に具体的にかつ網羅的に書かれている。

コンサル初心者の方やコンサル業務の経験がない事業会社の企画職についている方々から見ると本書の内容は非常に難解に思えるらしいが、本書の内容は極めてシンプルである。
つまり、考えを開始するには「複雑化を含んだストーリーから開始すべき」、「考えは一定の法則に従って順序立てて行うべき」の2本立てである。

確かに経験がない場合は想定している場面が想像しづらいかもしれないため、いわゆる「考える仕事」を行う場合は業務を進めつつ本書を読んでいくという読み方がよいのではないだろうか。
なお個人的なテイクアウェイは「複雑化を含んだストーリーをベースに考えを始める」ことであり、初めて本書を読んだときは感動した。それを使い顧客への示唆出しを考えたところ、袋小路に陥っていた顧客の課題に光を与えることができたので、破壊力は抜群である。
なお「白紙の主張を避けろ」という項目も非常に示唆に富んでいる内容であった。ぜひ一読してみてほしい。

さて考える技術・書く技術は(その題名に反して笑)コンサル歴の短い方からは「非常にわかりづらい」とかなり評判が悪い。この本は実務にもまれ、上司に詰められ続けて、必死に答えを探す毎日を打破しようとすがるような気持ちで読んだときに答えがすべて書いてある系の本なので、実務を経験した後の方がより理解できる可能性が高い。

しかしそれではなかなかすぐには役に立たないので、入門書として以下の書籍が発売されている。本書は日本人が特に苦手とする論理的思考について具体的な対処方法が書かれており、より日本人に合った内容になっている。そのため入門書としては非常にわかりやすい。原版を読む前に、または読んだけど内容がいまいちわかりにくかったと思った方はぜひ本書を手に取っていただきたい。

そしてある程度内容が理解できてきた後は、実際にその内容を実践できるよう自分で手を動かしてトレーニングを行うことが重要である。実際本で読んで理解できた気になっていても、実行する段階になってみると実は全くできていないことが判明するケースは多い。そのため考える技術・書く技術には公式の問題集が存在するのである。

例にもれず難易度はそれなりにあるが、これらを実際に自分の手でやりきることができれば、論理的思考力とアウトプット力は大きく成長できるはずである。

地頭力を鍛える(シリーズ)

まず論理的思考初学者には、細谷功氏の「地頭力を鍛える」シリーズをお勧めしたい。(シリーズといっても地頭力を鍛えるが何冊も出ているわけではない)

本書はコンサルの面接でよく出題される「フェルミ推定」を例にとり、何が「地頭」を構成しているのか、それをどのように鍛えるのかを平易な文章で解説している良書である。具体と抽象をどのようにつなげるのか、知的好奇心をどのように保つのか、それが地頭力をどのように育てるのかを、非常にわかりやすく解説している。

地頭がいいとよく言うが、それが何のことかわからない方はぜひ本書を手に取ってみてほしい。

単純なフェルミ推定の対策本としても使えなくはないが、それでは圧倒的にもったいないため、しっかりと味わって読むべき本であろう。

そして細谷氏の著作は具体的な思考と抽象的な思考を行き来することを示すものが多い。

具体と抽象を行き来することは非常に重要である。日々の仕事においては、文章をどの程度具体的に書くか、が良く問われる場面もある。

そして特に新しいビジネスを発想することについても具体と抽象を行き来すると新たな発想を得ることができる場面が多い。

例えば今成長を続けているONE CAREERは、「食べログ」と就活をつなげる形でその着想を得たといわれている。(というか社長のインタビューか何かでそう言っていた)。もともと就活の不透明性に課題感を感じていた社長がどのように透明度を上げようかと考えていたとき、「食べログ」のメカニズムに着目し、それを就活にも応用することで新たなビジネスの形を生んだ、ということのようである。

そのため具体と抽象を行き来することは新たな角度で物事を見る、新たな発想を持つことに対し非常に有益であるが、それを解説した書籍が以下の「具体と抽象」であり、「アナロジー思考」である。ぜひ頭の使い方の参考にそれぞれの書籍を手に取って読んでみていただきたい。


ロジカル・プレゼンテーション

ADL出身の高田貴久氏著の「ロジカル・プレゼンテーション」である。

この本は「どのように自分の考えを効果的に伝えるか」について平易に説明を加えた本である。上記の「考える技術・書く技術」とは異なり、誰が読んでもわかりやすい内容で解説がなされている。

個人的に最も重要であると考えるのは、論理的思考のステップとして①目的→②論点→③仮説→④検証とどのように思考を進めればよいかを順序化している箇所であると考えている。

仮説思考や論点思考がはやるにつれて、結局どのようにそれらを使えばよいかがわからず、単なるあてずっぽうやそれっぽいことを仮説的に言っているだけであることがよくある。
そうならないよう筆者は、上記の順序であれば着実に思考を進めることができるとしている。

これは非常に重要なステップだと考えており、私がコンサル1年目の時はこれらの順序を意識することで、おお外しするケースが減ったと感じている。
「ピントがずれている」といったフィードバックをもらう方はぜひ本書を読んでみることをお勧めする。


畑村式「わかる」技術

コンサルタントとしては業界や未知のテーマについて早々に理解し、顧客の話を理解できる水準になる必要がある。その方法としては一般的な公開情報が基になる場合もあれば、顧客の中の内部情報を提供され、それを確認する必要があるケースもある。

顧客内部データは宝の山であるが、同時に専門用語等で書かれており理解することが非常に難しい。資料を読んでも結局何について書かれているかが不明確である場合は往々にして存在する。私もコンサル一年目の時は、そもそも何を言っているか、書いてあるかを理解できず、1日かけて資料の内容を読み込んでも内容が頭に入っておらず、上席から怒られたときがあった。

そんなときに出会ったのがこの本である。非常に明確にどうしたら「わかる」状態になるのかを説明しており、何を以てわかるといっているのかを解説してくれている。そのため資料を読む際に何をゴールにすればよいか、何を目指せば資料の内容が分かるようになるかが明確になり、資料の理解力が上がったように感じる。
非常に平易な語り口で読みやすいため、おすすめの一冊である。


MBAクリティカル・シンキング

クリティカルシンキングと書かれているが、内容は論理的思考に近い。内容としては「イシューから始めよ」や「ロジカルプレゼンテーション」の内容がかみ砕かれ、簡単になって書かれている。

この本で特徴的なのは「目的が何かを常に問い続けろ」という思考姿勢を序盤に強調されるところである。複雑な問題に立ち入れば立ち入るほど、当初の目的を忘れ枝葉末節にこだわってしまうのは人間の悪い癖であるが、如何に目的が重要か、そのためにどのような思考ツールが必要かを平易に解説している書籍であるといえる。

考える技術・書く技術やロジカルプレゼンテーション等を読んだ後、それでも少し考え方が腑に落ちない場合に、本書を読んでみることを非常におすすめする。

コンサルとしてあるべき態度やスキルが明快かつ平易に説明されており、どのようなスタンスでコンサルワークに臨めばよいかが理解できるだろう。


知的複眼思考法

コンサルに限らず知的思考を本業しているすべての方に読んでいただきたい古典中の古典である知的複眼思考法である。

一つの事象を一つの側面からではなく、複数の側面から読み取ることを知的複眼思考法(複眼でいろいろな角度から考えること)と定義し、そのための具体的な方法を解説している本である。

コンサル関連の書籍をいくつか紹介したが、結局は本書に書いてあることが、説明の仕方を変えて説明されていることに気づき、知的思考の最初にして至高の名著であろう。
疑問形で論点化して考えるというある種のテクニックから、どのような姿勢で物事に当たるべきかを具体的かつ分かりやすく書かれている。

思考・論理・分析

続いては元マッキンゼーの波頭亮氏の著作「思考・論理・分析」である。

本書は人間の一連の思考プロセスを体系的に論じ、言語化する書籍である。正しく考えるとはどのように考え、何を以て理解したというのか、論理的であるとはどのような状態を指すのか?正しく分析したとはどのような状態のことを指すのか、といった根本的な疑問に対して答えを提示するような書籍である。

他の書籍と比べると抽象度が高く、若干理解することが難しい可能性があるが、読みごたえがありこれを読み進めることができれば相当程度、自身の思考力が上がっていることを感じられる書籍である。

イシューからはじめよ

次に紹介するのは言わずと知れた名著であり、コンサル業界に属する人で読んだことが無い人はいないほどの「イシューからはじめよ」である。

本書のポイントはタイトルにもなっているように、仕事に取り掛かる際は必ず「イシュー」と呼ばれる重要な論点(かつ検証可能なもの)を抑え、それを検証する形で仕事を進めていくべきだ、という点である。

この主張は非常に斬新であり、若手コンサルの皆様は自身が作成したスライドや資料があっという間にアペンディクスへ回される、という経験をした方が少なくないだろう。一心不乱に作業を行うことを「犬の道」として、いくら犬の道を通ったとしても、イシュードリブンのアプローチにはかなわず、意思決定の礎にはなりえない、という根性論を吹き飛ばすところは実に痛快だと感じた。

世間ではそこで本書の書評が終わる場合が多いが、本書が名著であるのは、イシューを見つけた後、イシューを解くためのアプローチを非常に具体的に解説しているところだろう。ぜひ本書は全サラリーマンが手に取るべき書籍であるため、読んでいない人は必ず読んでほしい。

(安宅氏は今NewsPickの解説員?をされているようだが、議論の抽象度が高すぎて何を言っているか理解できなかった。コンサルは引退すると謎の理想論を話し続けるマシーンとなることが多いが、、、、)

論理トレーニング101題

次に紹介するのは、まさに論理のトレーニングを徹底的に行うために作られた本である「論理トレーニング101題」である。この本は論理的な思考をやしなう問題が101題入っており、

私としては本書の帯の言葉が好きである。

解説書なんかいくら読んだって論理の力は鍛えられない ただ実技あるのみ

この本は簡単な例題をいくつか紹介しているわけではなく、問題の難易度はかなり高いといってもよい。その意味では101題すべてを終わらせ、理解するにはそれなりに時間がかかるだろう。しかしいずれも良問ぞろいのため、1周、2周とすれば、あなたの論理的思考力はただ本を読んだだけの人に比べて段違いに成長するだろう。

1つ例題を紹介しよう。非常にシンプルな問題であり答えが気になる方はぜひ本書を手に取ってみてほしい。

問1 次の文章のおかしな点を指摘せよ。
「清潔はビョーキだ」の著者がある東京医科歯科大の藤田紘一郎教授(寄生虫学)も、座り派の増加について「清潔志向が行きすぎてアンバランスになってしまっている」と指摘する。「出たばかりの小便は雑菌もほとんどいない。その意味では水と同じぐらいきれいだ。なんで小便を毛嫌いするのか。ばい菌やにおいを退けすぎて、逆に生物としての人間本来の力を失いかけている一つの表れでないといいのですが」

論理トレーニング101題2頁序論より

プロフェッショナリズムと問題解決の実践

イシューからはじめよやその他の思考力系の書籍に書かれているスキルをどのように実践すればよいかわからない人は、元Mckのトーキョーハーバー氏が書かれた「プロフェッショナリズムと問題解決の実践」を読んでみるとよいだろう。

位置づけとしてはイシューからはじめよ等をより具体化し、実践向きに作られた書籍だといえる。

どのようにイシューツリーを実務で使いこなすべきか、論点を実務で実際に運用するには?といったコンサルタントとしては必ず押さえておくべきだが、これまでのロジカルシンキング本にはなかった内容が書かれている。

是非最初の一冊としても手許に置いておきたい書籍である。


コンサルの業務に非常に参考になる書籍をこれまで紹介してきた。
いずれの本も名著であり、読むだけで様々な示唆が得られるが、やはり短期間で数冊を読み少しずつ頭に定着させていく読み方が、結局のところ最も効率が良いと考えている。
また実務に当たる方も、様々な悩みを持ちつつ、上記のいずれかの本を読んでみると意外なところで答えが書いている場合があるため、ぜひ手に取っていただきたい。

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