【慶応SFC流】『休学のすヽめ』 学生よ、休学せよ。 #0
「休学のすヽめ」を編纂しようと思った理由は2つある。一つは自分も休学しようとしていること、もう一つは休学に関心がある人たちの声だ。
自分も休学をしてみたいと思ったが、それらのハウツー的な記事はあるものの体験記のようなものは見つけられなかった。そこで今回、自分が休学を検討する上での相談と休学経験者の体験のインタビューを兼ねて記事としてまとめることにした。
それがこの「休学のすヽめ」である。
モラトリアムの時期にある学生にとって休学は自分を見出す絶好の機会と言える。海外ではギャップイヤーなど休学のような一定の空いた時間に対して寛容であるが、日本だと風潮としてあまり寛容ではない。
だからこそ、この連載を通して休学選択のハードルを下げ、学生が自分を問う時間を確保する目的として休学を考えるきっかけになって欲しいと思う。
たくさんの休学経験者の体験をもとに、自分だけの休学ストーリーを紡いで欲しい。
1. 休学のすヽめとは?
「休学のすヽめ」には提唱者がいる。東京大学名誉教授の黒川清先生だ。黒川先生はSFCの入学したての1年生に「休学のすヽめ」を提唱し、休学をすることを勧めた先生である。以下のTEDで休学のすヽめについて述べられている。
この動画の要旨を引用してまとめる。
重要なことをたくさん仰られていたので、長くなってしまった。見てない人はぜひ見て頂きたい。
とにかく、ここで重要なキーワードは「知恵の獲得」だと捉える。現地でしか体験できない経験というのはやはりただ大学に身を置くだけでは獲得することがとても難しいと考える。そこで知恵にフォーカスしてインタビューをすることで、休学の真価が明らかになるのではと考えた。
またもう一つ重要なメッセージが動画にはあった。それは「明確な目的ありきではない」ということだ。というのは、明確な目的があって休学するというのはよく聞く話だろう。しかしそれだけではないということがこの動画で述べられている。黒川先生は「自分が本当にやりたいこと」は他人が気づかせてくれるものだと仰っていた。だからこそ、休学してコンパスを見つけるべきなのだと。そこから本当にやりたいことが見えてくるのだと。
SFCあるあるとして、やりたいことが見つからないことへの悩みが挙げられる。確かにAOでやりたいことを見出している人がいたり、逆にそれが引っかかっていたり。やりたいことを見つけた人が前進していることに焦ったり、入りたい研究室がよくわからないと嘆いたりと「やりたいこと」に対する悩みをよく耳にする。SFCの先生方は何度もマイペースに見つけて良いんだと言ってくれる。そのマイペースに見つける期間の提案として休学はどうだろうか?つまり、やりたいことが明確でないからこそ休学してみるのも良いのではと考えさせてくれるのだ。
2. SFCにおける休学という選択肢
上記の動画を見つけたきっかけは去年2020年3月に行われた Final Presentation だった。村井純元環境情報学部長が休学経験者に対して黒川先生が以前、休学のすヽめを提唱していたことをコメントしたのだ。
2020年の Final Presentation でも休学に関するするどい洞察を耳にすることができる。
発表者の一人、中川絵梨さんが発表の中で「ドローン休学」をしたことを述べると脇田玲環境情報学部長が以下のコメントをした。
また村井先生も以下のように述べていた。
さらにこうも言った。
村井先生のお話は、SFCの開拓性を述べた非常に良い例だと思う。前例がどうこうよりも、自分らしくいつづけることが何よりも大事なのだ。特にこの話は、休学における同世代とのギャップに悩む人には響いたのではないだろうか。さらに言えば、後の持田太陽さんへのコメントで以下のやりとりが見えている。
年齢ギャップに関して就活で悩む人もいるだろう。斎藤ゆうさんの発表で2人が就活についてのコメントをしているので、興味がある人はぜひ見て頂きたい。以下に2020年の Final Presentation のアーカイブを載せておく。
ここで重要なことは2つある。
一つは脇田先生の言った「大学経験の拡張」と言う言葉だ。黒川先生の話でもあったが、大学ではできないことをやりにいくために休学するということである。大学生というのは、学ぶだけに時間を費やすことが社会的に認められる時期だと考える。そんな時期だからこそ、教室を飛び出して知らない地に踏み出すのが良いのかもしれない。
もう一つは年齢への不安である。就活世界でも新卒採用と言われるように、いかにストレートに卒業できるかが問われているかの様な風潮が見受けられる。しかしそこは安心して欲しいと述べるのが2人の先生だった。年齢なんていうものは関係ない。就活で何か言われたとしても、そこをはねのけよと二人は言う。こんな人が学部長なんだから仕方がないと。強調するように言うが、自分らしくいつづけることが大事なのである。
以上よりわかるように、SFCにおける休学は選択肢のひとつとして捉えることができる。休学費の大幅な減額により休学はしやすくなった。村井先生も言う様に、うまく活用すべきシステムなのだ。ここから言えることは、少なくともSFCにおいて休学はたくさんのメリットが潜むもう一つの学生生活だと言えるのだろう。
3. この連載の目指すところ
以上から2つのキーワードが見つかった。「大学経験の拡張」と「知恵の獲得」である。
大学経験の拡張は、いかに大学生という枠組みを超えられるかだろう。大学に通い授業を受けて、バイト・サークルを楽しんで、卒業する。そんな既存の大学生活を越えて、その時しかできないことをどれだけ経験するか、それがのちに大学経験の拡張として活きていくのだろう。
知恵の獲得は、いかに経験して、感じて、繋がって、考えて、可視化・言語化するかということである。それは人や本で教えてもらえる知識ではないことに注意して欲しい。
この連載はこの2つのキーワードをもとに、休学の真価を見出そうという取り組みである。真価を見出すのは取材者の私ではない。読者のみなさんである。たくさんの方にインタビューし、その事例をまとめる。もちろん自分なりの意見や真価を見出す取り組みもする。しかしみなさんにもぜひ取り組んで頂きたい。 #休学のすすめ というハッシュタグで、みなさんの意見を共有して頂きたい。
取材方法についてもこちらに記載させて頂く。ZOOM を用いて、以下の様に取材していく。
あくまでこれらは取材の骨格である。これを軸に、どんどん突っ込んでいきながら休学の実態に迫ることにする。
4. SFCの休学方法
休学の方法についてまとめる(2021年3月13日現時点)。更新される可能性があるため、詳しい内容は大学のパンフレットやこちらのサイトから確認して頂きたい。
<休学するまで>
<休学費用>
入学年度によって異なるので注意が必要。
上記の金額は1年分の金額になる。
なので半期休学して次の学期で復学した場合、その1年間の学費は、減免された1学期分の学費と通常の1学期分の学費の合計になる。
休学許可通知・減免案内は、学期末成績発表(春学期は9/5(予定)、秋学期3/10(予定))以降に保証人宛に郵送される。そのため、減免案内が来るまでは通常の学費は納めなければならない。
学費を全額支払った場合は、案内に従って手続きすることで後ほど減免分が返還される。また減免適用後の差額のみの支払いもできるようだ。
<休学願提出期限>
※ 履修申告せずに休学する場合は、できるだけ各学期Web履修申告最終日までに提出すること。ここまでにできないと退学通知が来るそうです。
※ 履修申告の最終日:春は4月中旬。秋は10月初旬。要確認。
<休学期間の上限>
2023年1月31日に学部学則が改正され、休学期限に上限の定められました。詳しくは公式ページをご覧ください。
なので現行制度で休学期間における上限はない。
よくある質問として以下の学則に関わるのではとあるが、以下の学則はあくまで在学年数が論点になるため、在学年数に算入されない休学は考慮されないことになる。
<休学における注意事項>
私が休学しようと思ったわけ
感染症 Covid-19 に翻弄された2020年を終え、新しい時代が幕開けした。
ICTの利活用により、時間・場所を超えたサービスを提供できるようになっているが、現状の科学技術で転移ができるほど簡単な話ではない。私はそれを1年間のオンライン授業を通して強く実感した。これを踏まえ、私は休学に至る理由が3つある。
①大学のリソースをフル活用できない
私がSFCに入学した最大の理由は人との出会いである。SFCという異質な環境を目指して集まった人間が面白くないわけがない。そのような人との出会いを期待したが、オンライン下ということもあり、なかなか出会いをデザインできていないのが大学の現状である(この出会いに関しては、別途計画中)。またデザインの授業などで感じたのは、課題への知見を共有できる機会がないことへの残念さだ。例年であると、授業後であったり残留したりして関わり合っていたのだろうが、オンラインだとZOOMの中だけが接続できる機会であり、ルームを閉じてしまえば一瞬で接続は切れてしまうのである。そのような事からも、まだ充実した授業を受けることが難しいというのが挙げられる(もちろんメリットもあると思うが、そこは自分が期待する要因とは異なる)。
あとは施設なんかもそうであろう。SFCは他キャンパスに比べて高い学費であるが、それを構成する施設などが全く活用できないのが現状である。メディアセンターは解放され、本の貸し借りはできるようになったが、SFCの特徴とも言える Fab などはなかなか使えない。現状のメディアの Fab は研究会目的のみの利用を可能としている。また DFF などもあるが、こちらは研究会に所属している人しか使えないなど制約も多い。このように施設に関して言えば現状、外部の Fab に頼る必要があるのだ。
これに関わらず、リソースがフル活用できていないことは大いにあると考える。それは卒業生などのお話と現状のギャップから示される。「かもる」などを知らない我々がどうSFCに関わっていくのだろうか。
②プロダクトの社会実装のためのまとまった時間の確保
1年間の授業を通して感じたのは、自分のやりたいことにコミットできないということだ。これはもちろん良い意味である。SFCには魅力的な授業がたくさんあり、つい取りすぎてしまうことがある。そうして自身が本当にやるべきことを見失う可能性があるということをこの一年で学ぶことができた。
私は発明家を目指す中で、アイディアの社会実装の機会を伺っていた。そうした中、COVID-19による生活様式の変化という転換点に居合わせることになった。この機会を逃すわけにはいかない。まとまった時間を確保して、やるべきことに取り組む時間にしようというのがこの2つ目の理由である。
③SFCでは学べないことを学ぶため
SFCは多様なことが学べる一方で、穴もいくつかあったりする。そこは自分の力で学ぶことが必要とされているが、それが一つの学問体系だと両立が難しいのである。自分が学ぶべき学問をまとまった時期に学ぼうとしたのが3つめの理由である。またそうした知識のみならず、休学のすヽめのキーワードのように「大学経験の拡張」と「知恵の獲得」に力を入れてみたいというのも理由である。社会的に学ぶためだけに時間を使うことが許される学生という時代、この時代での経験が後に活きることを期待して有意義に活用していきたいと考える。
私はこれらの理由よりほぼ休学をする予定である。ただ少しばかり引っかかりがあるため、そこを解消する目的と休学期間の充実化を目指してたくさんの人の経験談をインタビューで集めることに至った。
休学に関心を持つ人がこの連載を通して、休学を捉え直せるきっかけになることを期待する。多くの学生が大学経験を拡張し、自分独自の資産「知恵」を獲得できることを願う。(滝本)
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