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【symposium3】「クバへ/クバから」第3回座談会(シンポジウム)上演記録「『沖縄の風景』をめぐる7つの夜話」第7夜(12/27)「写真集制作に向けた公開編集会議の上演」(Part.2)

(Part.1はこちら

「遠ければ書ける」

笠井 ふり返ると、第1夜から第6夜までの話題は、三野さんが第1回の座談会で自作について語ってくれたことと弱く響くところもあれば、ダイレクトにつながる論点もありますね。

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笠井 ちなみに三野さんは、(夜話を聞きながら)どんなことを考えていましたか。

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三野 いま、みなさんの話を聞きながら考えていたんですけれど……みんないっせいに動き出しましたね(笑)……全体的に自分と相手の関係性についての興味があるんだな、と。hさんの回について、三野と山本くんとhさんの3人で久高島をまわることがあって、写真にも山本くんとhさんがめっちゃ写ってるんですが……(笑)。

 今見せてもらったら、たくさんいました(笑)。

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三野 その旅程の中で話しあっていた具体的な「この場所」の話とか、「ここにこれあるよね」とか「あれ見えるよね」みたいな、そのときは身体的に反応したことをちりじりに話していくみたいな感覚があったので、その後、hさんの夜話の際に、「あ、こういう観点で色々見ていたのか」ってことが、論理的に整理されていたことによって改めてわかった部分が大きかった。

 え、どこらへんですか? それは。

三野 なんだろう。「遠ければ書ける」みたいな話があって。

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 そうですね。

三野 そこの話について、久高島でずっと話をしていた気がするんです。……どうしよう、時間がたぶんいろいろあれだと思うんですけれど、ちょっとばっと言っていってもいいですか?

笠井 どうぞどうぞ。

三野 参考文献の回に関しては、みんなが買ってるやつを自分も買ったりしました。あー、これ買わなきゃな、と思っていたものが先取りされた形でみんなしっかり購入されていて、Amazonで即日配送をお願いしました。

 (笑)。

三野 一つ一つに関して言及していくとおそらく膨大な時間になっていくので、本当に端的に所感を言っていきます。山本くんのやつ、すごいよかったです。もちろん、みんなすごいよかったんですけれど、特にインスタレーションの話が、写真集をものとしてなぜ出版する必要があるのか、写真集自体を現実にある空間においてどのように「配置」して考えていくかっていうときのヒントになっていたように思えます。大岩くんの論考「ダンスホール」の話に結びつけつつ、東松の話をしっかりと考察していたので、歴史的な問題と空間をつなげていく感覚も整理できたし、最初の座談会から考えると議論の深まりとして実感されました。

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三野 第4夜の笠井さんの夜話に関しては、契約という社会的かつ現実的な問題を語りつつ、当事者同士の関係性がいかに文章として可視化させられるのか、という今回のテーマとしてもあるアーカイブのあり方に敷衍して考えさせられました。そのなかでも一般的には関係性を考える時に、範疇から逃れてしまうものをどのように記述するのか、と言った話はとても面白かった。「表現の自由」の話ってまさにそういう話だったりもするので、厳密化されるところと厳密化されないところの「あいだ」をどのように契約として記述すれば良いのか、と言う部分を自身の制作を考えるきっかけとなりました。

 と、こんな感じでばんばん言っていく感じですいません……(笑)、それぞれいろいろ話ができていくといいなと思っています。(僕は一回と二回の座談会でも喋りまくっているので。)

 で、次になまけさんの夜話ですね。日記という形式についてと写真それ自体の話。夜話の中で、一番僕の写真一枚一枚自体の話をしていただきました。なまけさんの話は、自分が考えている以上に「こう見える」ということを強く打ち出していただいたので、他者性を最も感じた夜話です。僕自身は、「こう考えている」、「こういう感じのイメージの写真を作っているぞ」と思っていたところが、なまけさんは、全く違う視点で「こうなんですよね」みたいに言ってくるのが面白い。「例えば影、まっくろなのいいんですよね」みたいなことを言っていただいて、「あ、そういう風に見るのか」みたいな。僕自身は全くそういう観点で見ていなかったから。

山本 (笑)。

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三野 あと、写真を撮影する際、「隠れて撮っている」のは何故なんだろうという話も興味深かったです。

 一平くんの夜話は、それぞれのメンバーの夜話の後に、一平くんと残ってちょくちょく話していたりもしたところだったんですけれど、詩と写真の関係性についての話に切り込んでくれていました。笠井さんと一平くんは沖縄に渡航しなかった組なので、そういった立場のなかでどういうふうなことが表現として行えるのか、制作として行えるのかみたいなことが話されていた。昨今の状況について併せても、考えさせられるお話でした。

 全体的な夜話に言えることですが、メンバー全員が初めてこのプロジェクトの「他者」としての観点が見えてきた。第1回と第2回では、僕が「こういうことでどうですか」みたいな話を、メンバーに振った上で、それを各メンバーが引き受けていただいて、ディスカッションしていくというかたちだったんですね。今回初めて、はじめにみなさんそれぞれが感じていることだったりやりたいことだったりがバッと出てくるというか、それぞれ個人とこのプロジェクトとの関係性が出てきたものが、ガバッと掴まれていく感じがありました。それでようやく「ああ、ここってそういうことだったのか」ってことが、僕自身もわかったし、たぶんメンバー自身も明確になった部分もあったんじゃないかなというふうには思いました。

 以上が、全体的な、極めて端的な僕なりの所感です。

写真集のプラン

笠井 さすがに論点が多いですね。

三野 そうなんです。一個一個をめちゃくちゃ引き伸ばして話していきたい部分もあるんですけれど、ちょっとhさんのときに、これは、やばい、と思って……。

鈴木 初っ端じゃないですか!(笑)

なまけ これがあと6回続くんだ、というね。

三野 これはやばいぞ、と思って、笠井さんの参考文献についての話に向かっちゃったんですけれども。

笠井 (これから作る写真集は)約8ヶ月のプロジェクトのアーカイヴとしての機能も持ちつつ、三野新という個人の写真家・アーティストの作品でもあって、コンセプトが入り組んでいる。加えて単に期間が長く、6人でやっていることで、かなり複合的な論点が――。

三野 出てきましたね。

笠井 どれを収録する/しないは今日も話すことになるでしょうけど、すでに収録可能な表現の素材がかなり溜まってきたし、これからさらに、いろいろ書き足したり、各々の作品を書くことでも増えるでしょう。それらをどのようなかたちにまとめつつ、且つ、先月頃からこの言葉が出てきましたが、「インスタレーション」としてエッジを立たせていくかがポイントになりそうですね。

 山本くんが、写真集の企画を温めるなかで、今までの素材を整理をしていたと思うんですけれど――。

山本 そうですね。今日は、具体的に、写真集に何を収録し、どのようにレイアウトし、編纂していくか、見せ方(全体のコンセプト)も含めて検討していく段階に入っていく必要があるのかなという気がしていて。

三野 そうだと思います。

山本 そうした、写真集に向けた具体的な検討をみんなで行なうことによって、今回の連続配信で各々が行なった発表も、より具体的な展開へとつなげていけるだろうなとも思い、事前に、議論のとっかかりとなる写真集プランをちょっと考えてきました。(三野さんといぬのせなか座にはすでにテキストで共有済みなんですが今日は)どうやって見せようかな……口頭で一気に話してもいいですか?(笑)

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大量のテキストをどう扱うか

山本 まず、今回のプロジェクトを通じて現時点ですでに生じている、写真集に収録されうるテキストを把握しておく必要がある。

 第一に、10月10日の情報解禁時に公開したテキストたち。これだけでも相当量ある。公式Webサイトのaboutページで公開されている「はじめに」。実行委員会メンバーの略歴。synopsisと名付けられた、今回のプロジェクトの企画意図や背景などをめぐるテキスト群、2、3万字ほど。また、メンバーひとりひとりによるstatementも、結構な量ある。さらに、夜話の第4夜をめぐってさっき話題にあがったものでもあるけれど、契約書や団体規約といった、笠井さんの作った「作品」、と言っていいのかわからないけれども、今回のプロジェクトが進んでいく上である種の戯曲としてメンバー内に共有されたテキストたちもある。普通だったら写真集に、その制作プロジェクトの契約書とか団体規約なんて載らないと思うんですが、今回は、ぼくは載せうると思う。……みたいに言っていくと、プロジェクトの冒頭段階で、すでにテキストがかなりの分量あることになる。

 次いで、座談会のテキストがある。第1回第2回とすでに座談会を行なっていますが、それらを毎回映像で記録し、文字起こしし、写真なども入れながらすべてテキストアーカイブ化しているわけですね。例えば第1回だったら、ひとりひとりの発言のなかに、三野さんの過去作の映像やテキストなども大量に挿入していって、noteの定期購読マガジンで公開している。第1回のテキストが6万字ほど、第2回が4万字ほど。それだけでもやはりかなりの分量ですが、加えて、6回行なわれた夜話や、今日の第3回座談会の記録もある、と。

 さらに、いぬのせなか座のメンバーによって(三野さんへの応答として)制作される予定の成果物もありますね。鈴木が詩や論考(?)を書き、なまけとhが小説を書く。笠井さんも、契約書などのほかに、新しく書くかもしれない。

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伴走と滞在の記録

山本 また、「伴走者」という役割で関わってもらっている、小田原のどかさんと佐々木敦さんによるテキストもある。まだ批評なのかエッセイなのか小説なのか、形式はおまかせしているからわからないけれど、なにかしらの応答のテキストが写真集には入ってくる。

 最後にもうひとつ、沖縄へ10月末から11月頭にリサーチしにいったときに、ライブ配信を何度か行なったけど、そこで話されたことや考えたことも、もしかしたら入ってくるかもしれない。テキストではないけれど、いぬのせなか座のメンバーにより撮影された写真だけで1200枚くらいあるわけで。

 ……といった、「写真集収録予定コンテンツ」が諸々大量にある上で、写真集の核となる、三野さんの写真があるわけですね(笑)。

三野 多いですね(笑)。

山本 三野さんによる写真は、まず第一に、プロジェクトが始まる前からすでに撮られていた沖縄での写真がある。ここに今、簡易プリントされたものがありますが、まだ公開はしていません。何枚かは、なまけによる夜話での発表で扱ったながれで、noteの記事に掲載されているけれど。

三野 そうですね。何枚かは。

山本 この写真群だけでもかなりの分量がありますよね。

鈴木 何枚くらいある?

三野 これで120枚くらいある。

山本 そして、三野さんが10月末から11月頭に、いぬのせなか座の一部メンバーと一緒に沖縄に渡航した際に撮った写真もある。これも今日、簡易プリントしてきてもらいました。

 さらに、ここからまた沖縄に取材に行ったり、あるいは(東京をはじめ)どこかでまた撮影したりした写真も、収録コンテンツに加わってくる可能性がありうる、と。

三野 かなり大きいです。

山本 では、これらの大量のコンテンツを、どのように取捨選択し、どういう並び順で、「写真集」というひとつの形態にまとめていくか……というのが、コスト面などの問題も含め、かなり重要なところになってくる。そうした具体的な課題を抜きには「写真集」の制作は考えられない。じゃあ、どういうプランがありうるか?

(Part.3につづく

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写真家・舞台作家の三野新と、いぬのせなか座による、沖縄の風景のイメージをモチーフとした写真集を共同制作するプロジェクト「クバへ/クバから」…

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