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海釣りで起こり得る恋愛事情

1月4日に高校のクラスメイトで海釣りをしようということになった。メンバーは春と友梨奈と私と康太の女子3人の男子1人になった。

そもそもは康太がよく釣りに行ってるって話し出したのがきっかけで、春が一緒に連れて行って欲しいと言い出した。

康太は2人より皆で行った方が楽しいと言うので、友梨奈と私も行くことになった。康太は背が低くて春や友梨奈よりも低い。私はさらに低くて1番小さい。この体型が後からひびいてくる。

船の手配や釣竿の手配は全て康太がやってくれた。のか、康太の両親がやってくれたのかは定かではない。

当日皆で電車で海の近くのお店まで行った。電車からの景色など気にすることもなく、皆でワイワイと取り留めもない話をしていた。

お店に着くと康太がいつになくテキパキとおじさんと話しながら準備に取り掛かった。私は学校での康太とは違う一面を見て驚いた。学校では花形の陸上部だったけれど、特に目立つ存在ではなかった。ましてや自分からおじさんとコミュ二ケーションをとって、動くなんて信じられなかった。

一通り準備が終わりバンに詰んだ所でおじさんが、小さい2人は前のシートで後の2人は後ろのシートに座りなと言った。小さい2人とはつまりは康太と私のことだ。

前のシートは運転席と他の人が乗るスペースが別れていないタイプだった。それでも普通の大人3人が乗るには狭かった。そこでおじさんは小さな2人を前に乗せたのだろう。

ここで春は不満に思う。康太と春の計画なのに、康太と春がとなりじゃないのが気に入らなかったようだ。

海には5分程で着いたが、私には春の機嫌の悪さから永遠にも思えた。康太のことは何とも思ってなかったが少し気恥ずかしくなった。

そこからは船で沖のコンクリートの所まで10分だった。船の上で釣りをすると思っていた私は少しホッとしたのと、こんなところに大きなコンクリートのかたまりがあるなんてと驚いた。

私達はそのコンクリートの上に乗せられて、おじさんはお昼にまた迎えに来ると言って返っていった。春と友梨奈は釣りは初めてで康太から色々教わっていた。私はお父さんや従兄弟と釣りをしたことがあるので、餌だけ付けてもらって後は自分で始めた。

春と友梨奈は大はしゃぎで側にいる私が恥ずかしくなるほどだった。

お昼までの釣りの成果はみな散々だった。おじさんが迎えに来てくれてお店まで戻るとお昼ご飯が用意されていた。コンクリートの上は寒かったので暖かい豚汁はお腹に染み渡っていった。お昼を食べて少しの休憩の後またコンクリートへと移動した。今度は4時に迎えに来ると言っておじさんは返っていった。

私と友梨奈と春はちっとも釣れなかったが、康太は3匹釣っていた。そんな時春がトイレに行きたいと言い出しついでに私達もおじさんを呼んでトイレに行くことにした。おじさんはあんまり釣れない私達にニッコリ微笑みながら、釣れなくてもトイレには行きたくなるから仕方ないなあと言った。私達はケラケラと笑った。

コンクリートに戻るとより一層寒くなっていた。私はダウンを持っていなかったので体の芯まで凍えてしまった。そんな私を見て康太は自分のダウンを貸してくれた。春と友梨奈はしっかりとダウンを着込んでいたからだ。

ここでも春は私に嫉妬したようだ。友梨奈と2人でコソコソとやっていた。私は疎外感を感じたが康太の手前何事もない顔をして釣りを続けた。

結局釣りは康太が5匹釣って他の3人は釣れなかった。おじさんは上機嫌で康太はやっぱりいつもやってるだけのことはあると褒めたたえた。釣れた魚はすぐにさばかれ、私達のお腹に入った。とても新鮮で美味しかった。

帰りの電車の中ではなんとなく気まずいながらも4人で釣りの話をした。


ところが冬休み明けに学校に行って私は驚いた。黒板に私と康太の名前が大きく書かれていた。春の仕業に違いない。私は意地悪な春に文句を言ったが知らないと言われてしまった。その上、身に覚えがあるから文句を言ってきたんだと言われた。

女子の仲良し4人組で1人行かなかった亜紀は私の味方をしてくれた。黒板の文字も消してくれて話もしてくれた。康太はというと、私が虐められているのはコンクリートの上から知っていたらしく、ごく普通に接してくれていた。勿論春や友梨奈とも話をしていた。何事もなかったようにしていた。

康太と私は同じ町内に住んでいて家も近かった。帰り道が一緒になり気まずかったが、康太はこうなったら付き合っちゃおうかと言ってきた。私は康太に特別な感情はなかったが、成り行きで付き合うことになった。

実は私には好きな先輩がいたが、どうしても告白することができずにいた。

そんなある日先輩に偶然道で遭遇した。先輩は前に好きだった人のこと聞いたよと言った。私は春の仕業だとすぐに分かった。春の登下校友達のお姉さんが先輩と同じクラスだからだ。

数週間前に誰にも言わない約束で先輩のことが好きだと春には言っていた。その場に登下校友達も居た。もし誰かに話をしたら、登下校友達は解消するという約束だった。


私は先輩に知られた恥ずかしさと康太のことでパニクった。頭の中では2つの返事が並んだ。

「今でも好きです」

「あの子とは絶交です」

康太と付き合うと決めたばかりなのに、裏切って先輩に告白するのは悪い気もした。それに前から好きではなかった春の登下校友達のことも頭によぎった。

とっさに私は絶交を選んでいた。先輩からは私と絶交すると言われた。先輩とも同じ町内でよく会うので、会った時には胸弾ませて会話を楽しんでいたのに。春と春の登下校友達のせいで大好きな先輩と絶交になってしまった。

悪いのは向こうだとずっと思っていたけれど、素直になれなかった私も悪いと気付いた時にはもう遅かった。先輩は引越してしまった。

先輩に謝りに行けばきっと許してくれたはずなのに私は1人意地を張って先輩との糸を自分で切ってしまった。

今でも後悔している。でも康太のことを裏切るのはどうかとも思う。


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