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個人出版におけるブランディングとは?

ブランディングとは、なんだ?
自作小説の個人出版を決意してから、私自身が感じた疑問です。
ビジネスを始めようと考えた時、誰だって利益を上げたいと考えます。
では、どうやって利益を上げるのか?

小説を書く。売れる。わーい。
いや、そんな簡単な訳はない。

何かを売ろうと考えているのなら「売り方」についても勉強しなければマズイのではないか。
まして、ブランド力のある大手出版社が売るのではない。
乾縫なんて言う、どこの馬の骨かも知れないライターが個人で売る。
少し考えただけでも、売れそうにない。と、わかります。

なぜ、売れそうにないのでしょうか。

この記事は、馬の骨ライター乾縫が「ブランディング」について学んだことの要点を、皆様にお伝えするための記事です。

1.ブランディングとは何か

ブランディングとは、要約してしまえば「信用を構築し、購入者の期待に応える事」です。(私見です)
信用を構築し、購入者の期待に応える事ができれば、収益は上がります。

「当たり前の事だろう」

と思いましたか。
(凪いだ海のように何も思わなかった方は※「需要について解説したこちらの記事」や※「ビジネスの根本について解説したこちらの記事」を、是非ご一読ください)

そうです。
当たり前の事を言っています。
「ブランディング」はビジネスをしようと考えた時、当たり前に考えるべき事です。
つまるところ「需要」と「供給」の話でしかないのです。

2.そもそもブランドとは何か

ブランドとは、商品やサービスを区別するための概念です。商品・サービスの個性と言い換えても構いません。

「この商品は、他の商品と、ここが違う」

会社、その会社が展開するレーベル、レーベル内でのシリーズ。
それぞれ規模は異なりますが、全て個別の「ブランド」です。
ブランドとは、販売者が自由に規模を選択できる「カテゴリ分けの外枠」でしかありません。

2.1.購入者にとってのブランドとは

なくても良いけれど、あれば助かる。
それが、購入者にとってのブランドです。

購入者の視点に立って考えてみましょう。
実際に商品を購入する際には

・商品の品質・性能
・デザイン
・多機能性
・価格の高低

などの要素を複合的に考慮し、自分の求めるものに最も合致する1つの商品を選択します。
「ブランド」なんて区別がなくても、購入者が困る事はありません。

なぜならブランドという「販売者から与えられた情報・区別」では、実際の商品の事は何もわからないからです。
実物を見て、触って、材質や仕組みを理解した方が、絶対に間違いのない確実な情報が手に入ります。

「こういう機能があって、これくらいの値段で、こういう大きさの物を買う」

と厳密に判断基準が定まっている購入者にとって重要なのは、間違いなく目的を達成する商品です。
市場に希望と合致する商品がない場合は妥協して選択する可能性もありますが「良く分からないけれど何となくで買う」と言う事は基本的にしません。

例えば、車を購入しようと考えている「A」は、車について詳しい「B」に相談をしたとします。
それまでのAは車に全く興味を持っていなかった人で、車に関する知識はあまり持っていません。
Aが車を購入するに際に重視する点は

・購入価格が安い
・維持費が安い
・普段使いする移動手段として十分なら走行性能にはこだわらない

という3点でした。
移動時間の効率化と、いつでも自分の思う通りに運行できる。という根本的な目的が達成できるなら、どんな車でも構わない。安ければそれが一番。と考えていたのです。

しかし、Aが望む条件を達成する車は、世の中にいくらでもあります。(軽自動車がメインの選択肢になるでしょう)
選択肢を狭める条件としてAが提示した3つのポイントは、はっきり言って力不足です。
相談された手前、できるだけ力になりたいと考えたBは、車を選ぶための条件をより詳しく尋ねました。

・予算は100万円以下(できれば50万円以下)
・価格最優先だから新古にはこだわらない
・軽トラはイヤ
・ある程度のデザイン性(丸っぽい可愛いフォルムが好き)

新たに聞き出した条件から判断し、BはAに「中古の軽自動車」を勧めると決めました。
50万円以下であれば、気が遠くなるほど選択肢が多いわけではありません。
Aは車の管理にも詳しくないので、サービスの評価が高いディーラーを数社選び、そこから10台まで厳選した候補の画像をAに見てもらいました。
車の外見も満足してもらえたのか、Aはご機嫌な様子でBが提示した画像を見比べています。

「どの車も、Aの言った条件を満たしている。気に入った車を選べば間違いない」

と、Bは自信をもって太鼓判を押しました。

「なるほどありがとう。ところでこの10台の車は、どこがどう違うんだい?」

メーカー、形状、カラーリング、車体の状態、オプション装備の有無、何もかもがバラバラな10台です。
車に詳しいBから見ればバラバラな10台でも、車に関する知識のないAから見れば大差の無い10台でしかなかったのです。

商品の本質的な個性は、専門的な知識がなければ理解のしようがありません。
かといって、物を1つ買うのに一々専門家になっている時間もある訳がないのです。
購入者の大多数は専門知識を持ち合わせていないので、販売者が売り出した商品の「ここが他とは違う」という本質を知ることができません。
Aは自分の設定した条件に合致する車が10台もあり、けれどそれぞれの車の違いが分からないから「これを買う」と決められないのです。

例えばBがAに、どうして価格が安いのか、どうして維持費が安いのか、このオプション装備はどういうものかを詳しく説明したとして、Aが「なるほど」と納得して、10台の中から1つを選んだとしたら。
それは商品に納得して選んだのではなく、Bの説明に納得したから購入を決意した。と言う事になります。
もしかしたら、Bの説明には間違いや勘違いがあったかも知れません。
けれどもAはBの説明が真実だと信頼し、1台を選んだのです。

ブランドとは「信頼できる情報」と、ほとんど変わりません。
※(ブランドの面白い所は、本来「分からない物」は買わない購入者が、納得して分からない物を分からないまま買う。という点です。不思議です)

自分が調べ、自分で納得した知識を元に商品を選択するのには、大変な手間と時間が必要です。
そんな手間も時間もかけられないから、Aは車に詳しいBに相談しました。

「Bが言うからには、そうなのだろう」

Aから、そのように思われるだけの信用を、Bは積んできたのでした。

AにBという友人が居なかったとしても、Aは車を購入する事はできたに違いありません。
本当に車が必要なのであれば、手間や時間を惜しむことは不可能に違いないからです。
ですが「信頼できる情報」を持つ友人が居れば、事前学習をしなくて良い分、迷って購入できない時間はぐっと短くなります。

購入者にとってのブランドとは「信用できる情報」であり、購入できない時間を短縮してくれる、先導者のような存在なのです。

2.2.販売者にとってのブランド

販売者にとってのブランドは「約束事」です。

先ほどの例話の通り、似たような商品がいくつか同じ場所で並んでいたら購入者は選択できませんし、本質的な魅力を理解する事はさらに困難です。
購入者が納得できるまで、選択を先送りにされてしまいます。
販売して利益を上げたい販売者としては、それでは困ってしまいます。
他の商品とは違う。とても良い商品である。自分の商品を是非選んで買って欲しい。

だから分かりやすい約束をします。

・自分の商品を買えば、必ず求めた効果を発揮します。
・その効果は、他の商品よりも、あなたに適しています。
・自分は、約束を破りません。

販売者は全ての商品を経由して、これらの約束を購入者と交わしているのです。

売買の根本には相互信用があります。
お金を払っても商品を渡して貰えないなら、怖くてお金は払えません。
逆に、お金を払って貰えないのなら、もったいなくて商品は渡せません。

「お金を払えば商品が必ず手に入る・商品を渡せばお金が必ず手に入る」

という前提がなければ、そもそもビジネスは成り立たないのです。

販売者が言う「約束事」を購入者が信用すれば、商品は売れます。
忘れてはならないのは、購入者は商品を購入した後、使用するということです。
使用して初めて、商品に対する「本当に信用できる、自分で得た真実の情報」を購入者は得ます。
その時「嘘を吐かれた」と思われたなら、2度と商品を買ってもらう事はできません。
約束を平気で破る様な嘘つきが信用されないのは当たり前の事です。
誇張・虚偽広告を絶対に行ってはならない理由は、こんな単純なことでしかありません。

誰しもが約束を破らない様に気を付けているビジネスという世界で嘘を吐くことは、致命的な過失だと言えます。

販売者にとってのブランドは、当たり前に守らなければならない「破ったら死ぬ約束事」と大差ないのです。

もちろん約束事には良い点もあります。
守っている限りは、信用され続けるという点です。

最低限度の信用がなければ、商品が売れる事はありません。
たった一度でも信用を失えば、商品が売れ続ける事はありません。
信用を得る方法は、約束を守り続ける事です。

販売者にとってのブランドとは「購入者の求めるものを提供する」という約束を守る事に他なりません。

2.3.ブランディングとは何か

ビジネスにおけるブランディングの目的は「選択され続ける商品・サービスを創出する事」です。

選択され続けるためには「需要の理解」と「適切な供給」、そして「唯一無二の価値」を理解し、戦略的にビジネスを展開する必要があります。

ブランドは、個別の商品・サービスに限らず、シリーズ、レーベル、会社、個人。ビジネスを行う集合体全てに適応する概念です。
関連ビジネスにおける自社ブランドは連動し、無関係ではいられません。

そのためブランディングには「一貫性」が必要になります。

自分のブランドが「嘘を吐かず」「求められるものを必ず提供する」「信頼に値する存在」であることを知ってもらうための行いを「ブランディング」と言うのです。

3.個人出版におけるブランディング

ブランディングの組み立て方・考え方を、私自身が小説を出版するにあたって行っている行動を例にして、説明します。

3.1.自分の小説に需要があるか考える

小説執筆者から見た時、ビジネスの展開の仕方は2パターンあります。

1.書きたい小説を売りたい(小説を書きたい、という感情が主体)
2.利益の上がる小説を売りたい(利益を上げたい、という感情が主体)

これは全く異なる考え方なので、どちらが自分にとってメインなのか、把握しておく必要があります。
つまり「需要を主点に据える」のか「供給を主点に据える」のかという事ですが、ブランディングのアプローチ方法が異なります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、簡単に説明します。

・「書きたい小説を売りたい」場合のメリット・デメリット
書きたい物が書ける。
需要にマッチするかは未知数。(書くのは良いが売れる保証はない)

・「利益の上がる小説を売りたい」場合のメリット・デメリット
需要について途中で心配する必要がない。
書きたい物は書けない。(自分の得意ジャンルでない場合、執筆するのがそもそも難しい)

ほとんどの小説執筆者は「書きたい小説を売りたい」のではないでしょうか。
私の場合は「書きたい小説を売りたい」なので「供給を主体に据える」という判断になります。

私が現在執筆中で、電子書籍として出版しようと考えている小説はライトノベルに分類されます。
タイトルは「少女はまだ不幸を知らない」です。
おまけ程度に魔法はあるけれど、基本的には現実世界と大差ない中世ヨーロッパ的ファンタジー世界を舞台にした、人間の心の暗い部分、どうにもならない不幸な出来事、けれども救いは自力で掴める。
という、暗いか明るいかは読み手の感性次第。な小説です。

さて、この小説に需要はあるでしょうか。(ご意見がありましたら是非コメントをお願いします)

昨今のライトノベル市場はビッグタイトルが牽引している影響か、拡大傾向が強いようです。
ライトノベル自体の需要は、小さくありません。
ですが、ライトノベルの中でも、「異世界物でもなく」「業界深堀物でもなく」「ほんわか日常物でもない」私の書きたい小説の需要はどの程度なのでしょう。
個人出版のマーケット自体は成長途中の段階のようですが、それが「実際にはどのような需要」なのか、という点は情報が少なく、明確には分かりません。
成長中のマーケットだから注目度が上がっている可能性はあります。
大きくはないが無くもない。ゼロでないなら私にとっては上等です。

3.2.自分の小説をどう売るか考える

私自身の「書きたい」という供給を優先する以上、商品である小説自体をどうこうする事は不可能です。(品質を向上させる事は可能ですが、方向性は変えられません)
大きな需要が見込めないため、執筆所要時間と売り上げから見たコストパフォーマンスは、間違いなく劣悪になります。(仕事の執筆速度はまた別ですが、私の小説執筆速度が特別遅いのもさらに悪い)

けれども、できれば、たくさんの人に私の書いた本を読んでもらいたい。

という考えも、私の本心です。
大きな売り上げが見込めないので、コストをかける事もできませんが、今の出版業界にはコストゼロで大量に供給する手段が、既にあります。
電子書籍です。
私が電子書籍出版をすると決意した最も大きな理由は「金銭的コストがゼロ」という点と、「在庫切れが原理上ありえない」ため、読みたいと思ってくれた方がいつでも買える。という点になります。

また、私個人の知名度もゼロに等しいため「どこで売るか」も大変重要です。
ライトノベルに強く、個人出版にも明るい。
そんな電子書籍マーケットを持っているのは、やっぱりKADOKAWA。
だと思いました。いつもお世話になっております。今度は著者としてもお手間をおかけします。

3.3.「1と2」を考えた時の、問題点を見つける

需要については、商品を変更する事が不可能なため、重視しません。
供給の仕方、供給量に関しては電子書籍が構造上最強すぎるので、全く問題になりません。
何より「大きな利益」を目指していないため、利益を重視しなくて良い所は非常に気楽です。

これで問題なく個人出版できる。

とはなりません。
出版自体は可能です(趣味なら何も考えずに電子出版できます)が、一応、利益も見ています。

可能な限り多く売るには、何が問題か。

という点を分析します。

・知名度ゼロ(広告力ゼロ)
・実績ゼロ
・販売力ゼロ

ゼロから始める電子出版。なんて小説書いちゃおうかな、とか思うレベルのゼロ連打で悲しくなってきましたが、現状の把握は問題点を分析する際に避けて通れません。

3.4.問題点を解決する方法を考える

KADOKAWA様のマーケットをお借りするので、いずれの問題点も、ある程度は緩和されたと言えます。
道端で手売りするより、100倍は売れそうです。

ただ、自分の書いた小説を多くの商品の中から選んでもらうには、ブランディングを行う必要があります。

自分のブランドが「嘘を吐かず」「求められるものを必ず提供する」「信頼に値する存在」であることを知ってもらうための行いを「ブランディング」と言うのです。
と、上の方で偉そうに言いました。
基本は全くその通りだと考えていますが、では具体的に「どうするのか」を考えなくてはなりません。

・供給を主点に考える
広く認知してもらう努力を怠る事はできません。
が、需要に対応する事が不可能な場合は、マッチした需要を逃さない事にも注力すべきです。
自分の作品をジャンル分けしたら、必ず似た作品がいくつもあります。
その中で自分の作品が選ばれるためには、何が必要でしょうか。

興味深いタイトル、あらすじ、アオリ文、イラスト、価格。

ライトノベルを出版する際は、いずれも重要な要素です。
購入者は、自分の要求に合致する作品が複数あれば、その中で「最も良いと判断した」作品を購入します。
読者が判断するために必要な要素が、この5つです。

そこで私は、自分のブランドが「大手出版社に下剋上を仕掛ける弱小出版社である」と定めました。

つまり「大手出版社が販売する作品に劣らないクオリティで、ちょっと安い」を、購入者と約束するのです。

タイトル、あらすじ、アオリ文。の3つは、作品のクオリティをベースにした部分ですから、出版者兼作者でもある私が、素晴らしい作品を書き上げれば問題ありません。(私自身が面白いと思えない場合「少女はまだ不幸を知らない」は出版しません、発表はどこかでするかもしれませんが)
イラストは初見の印象を決めますから、プロに依頼すると決心しています。(イラストレーター様募集中です、写実寄りのアニメ絵みたいなタッチが得意な方、ぜひお仕事料の目安と合わせてご連絡ください)
挿絵もあると嬉しいので、当然入れます。(各章に最低1枚、全体で10枚くらいでしょうか)
価格はおおよそ10万文字前後で600円から700円の作品が多いので、それ以下に設定します。
イラストに関しては、大手出版社とほぼ対等。
価格はやや優勢。
問題は私が執筆する作品のクオリティだけです。
これで売れなければ、100%私の実力不足だと言い切れる条件でしょう。

小説出版は「面白い」が最強の切り札です。
面白ければ、プロ作家とも同じ舞台で戦えます。

3.5.行動する

実績に勝る信用はありません。
厳しい約束を何度も守り続けていたなら「約束を破らない」「期待を裏切らない」というブランドイメージが得られます。

そのためにはまず、行動しなければなりません。

面白い小説を書く事が小説執筆者にとって一番の武器になります。
「面白いよ」と嘘無く約束できるからです。
多くの人に自分のブランドを知ってもらいたいなら、多くの人が居る場所で自分が果たせる約束事を発信するのが良いでしょう。
note、Twitter、Instagramなど、大勢に使用されているツールは沢山あります。
まずは知ってもらわなければ、興味を持ってもらう機会すら持てないのです。

私自身、そういう狙いがあってnote、Twitterで情報発信をしています。(Instagramもアカウントは作ったのですが、出版と方向性が合わない気がして、あまり活用できていません)
わざわざ自分の下心を宣言する必要も無い。とも、思うのですが、黙っているというのも隠し事をしているようで気分が悪いのです。

乾縫は、そういう物書きだと思って頂けたら幸いに思います。

4.まとめ

商品・サービスを求める人は「自分の要求に合う商品」を「お金を払えば必ず手に入れる事ができる」と信用して、お金を支払います。
商品・サービスを提供する人は、「必ず要求に応える」と約束しているのです。
約束を破れば信用を失い、ビジネスは成り立たなくなります。
約束を守れば、信用という容易には得難い付加価値が、自身のブランドそのものに積み重なって行くのです。
ブランディングとは「より多くの人に自身のブランドを知ってもらう行いのこと」と言えます。

参照WEBサイト

ウィキペディア(ブランディング)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0

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