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随筆(2020/5/22):「自分は粗略に扱われたくないが、他人を繊細に扱いたくない」、そう思っていても、他人に言うな

自分が「粗略に」扱われたくないなら、他人の傷や痛みを「繊細過ぎる」とか何とか言ってはいけない。こんなもん当たり前だ。

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誰しも、
「自分は粗略に扱われたくないが、他人を繊細に扱いたくない」
というところが、水面下にはある。

自分が粗略に扱われたら命の危険があるし、そんなのは困る。
また、他人を繊細に扱うことにはコストがある。払いたくない。

それは、一体の生き物の脳髄の思惑としては、まあ理解は容易い。
でも、そういう発想は、一体の生き物の脳髄の中に、自分の心の中に、とどめておいた方がいいですよ。

ごく当たり前の話だが、
「他人を繊細に扱いたくない」
ということを、当の他人相手に言うの、ムカつかれて当然ですよ。

まして、これとセットで、
「自分は粗略に扱われたくない」

とか言い出したら、そりゃあキレられもするわ。

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だって、これ、『カイジ』のラスボス、兵藤会長と同じメンタリティだぞ。

『カイジ』第二部『絶望の城』編終盤。
命懸けのゲームのチャレンジャーで、負けて足が折れた人。
それを、賞金出資者の兵藤会長は、杖で突く。
もちろん、チャレンジャーは痛がる。
それを、ここまで勝ち抜いてきたチャレンジャーのカイジが非難すると、
「見ての通り 折れた足をいじられると彼は痛いが わしは痛まない」
とのたまう。
そりゃそうだよね。自分は他人じゃない。しかも自分は痛まなくても良い立場だ。
つまりは、「わしは痛まない」。

要するに、こういうレベルの話でしかないんですよ。
「自分は粗略に扱われたくないが、他人を繊細に扱いたくない」
ってのは。

(こういう醜悪で邪悪なことをする兵藤会長に、カイジは猛烈にムカつくんですよ。
で、カイジは、自分の賞金を担保に、兵藤会長とギャンブル勝負を仕掛け…その後…というところで、第二部は終わるのです。
まあ、ムカつく気持ちは分かるが、カイジ、お前、博打にも程があるよ…)

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あと、ぎょっとする話をいくつかします。

常識として、
「子供は脆いので、繊細に扱うことは、望ましい」
というのがある。これはもちろんたいていそうだが、ここから派生する
「大人はタフなので、繊細に扱うことは、望ましくない」
という、別に成り立たない、しかし常識として流通しているものがあり、こちらの方は厄介だ。

確かに、子供より大人の方が比較的タフであることが多い。ここまではそうだ。
が、大人にとっても、子供ほど頻繁ではないが、脆くなる、繊細に扱われることが望ましい状況、ふつうにあるからね。
そこでは、繊細に扱わないことは、たいていマズイ事態を招く。よくあることです。そして、よくないことです。

そういう時に、それでも、
「自分は粗略に扱われたくないが、他人を繊細に扱いたくない」
なら、まあ、
「大人はタフなので、繊細に扱うことは、望ましくない」
というのは使いやすい理屈だよ。実際に正当かどうかは別として、正当化はしてくれるんだからな。(実際には正当とは思わんが)

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あと、
大人は自力でやっていくというのが基本であり、それが出来る程度にはタフでなければならない。
ここでずっと脆いままでいるやつは、自分でやっていくのが億劫だから、他人からリソースを吸ってコストを払わせているのだ。特に、精神の脆いやつは。
ふざけんな盗人猛々しい。こんなやつにリソース吸われてコスト払わされたら、人間関係も集団も、速攻リソースが枯渇して早晩コストが膨れ上がって終わるんだよ。誰が許すか
という話を好む人がいる。

いや、盗人猛々しさに腹を立てるのはもっともだが、そういう短絡的な思考の方は、ダメですよ。
精神が脆い人はしばしば、人間関係や集団や、それらを回すための仕事に、ボコボコのボロボロにされて、そうなっちゃったんですよ。
そういう場合、たいていは人間関係や集団や仕事「が」その人のリソース「を」吸ったのだし、同様にコストも払わせて来たのだ。
要するに、話が逆なんだよな。

そういう人たちが、
「自分たちはお前にコストを払っており、切り詰めたい。
お前は自分たちにそれを上回るコストを払え。餓死しない程度に。
馬車馬のように働け」

とか言い出したら、そんな人たち、まあどう言い訳しようとも、その人たち「こそが」盗人猛々しい。としか言えなくないですか。
人間関係や集団や仕事「が」、個人のリソースやコスト「に」手を突っ込んで、終わらせようとしている。
で、誰がそんなやつらのためにリソースを吸われたいと思うか? コストを払いたいと思うか? イヤですよそんなん。

で、吸われた人は、ふつう、あなたに信頼を抱いていない。
最悪だが当然ありうるケースとして、吸われた人は、あなた個人に対して、そういう搾取的な人間関係等の住人で「ない」という確証を持てない。
あなたはそんな身の証を立てたか? 立ててないだろう?
じゃあ、あなたは、脅威とまでは言わなくても、依然として脅威であるかもしれない、謎のリスクだ。残念ながら。

で、そういうリスクに見える人が、脅威である連中と、外形的には同じ理屈を繰り出して来たとしよう。
「こいつは単なるリスクではなく、実際に脅威である可能性が高い。
こわっ。ちかよらんとこ。
何の話も聞かないことにしよう。口先三寸でまたガメられてボられるのヤですよ」
とは、まあ思うわな。
あなたの発言は、悪印象でしか受け止められない。
そりゃそうだろう。信頼のないやつが、悪いやつら同じ理屈を繰り出してたら、そいつが悪人でないとは到底信じられんよ。
そんな状況で人をホイホイと信じていたら、その人は社交や処世ではいいカモだもん。誰がカモのムーブなんかやりたいものか。

だから、この手の助言やお叱りを、信頼のないやつがやっちゃいけないんですよ。

***

そんな訳で、傷ついている人に塩を刷り込む人の語る正論とやら、何を言ってもダメ。
相手が力尽きて、腹をさらけ出している時に、腹を指でつつくの、どうかしてるんじゃないのか。
まして、腹をつつかれた人がキレたら、つついた方が「そんな馬鹿な」という反応をするの、「バカハドッチダー!」としか言えなくないか…
これ、相手が大型犬だったら、秒で噛まれるの、ごく当たり前やろ…
ナンデ人間相手に、大型犬より粗雑な振る舞いして、ただで済むと思ってんだ…
怖いよ。そういうことしちゃう人。

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