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占いと心理療法について 1

こんばんは、治験のいぬです。
今日はタイトルの通り、占いと心理療法についての記事です。
一見するとあまり関係なさそうなのですが、実は・・・と
日頃思っていることを書いてみました。

突然ですが、僕の専門は精神病理と神経心理学です。
人は外界からの刺激を感覚器から受け取り、身体の内側へ走行する感覚神経を通り、感覚器の刺激は大脳へ入力されます。
これは医学の通説ですが、この刺激について意味づけや分類を行い、精神疾患の原因だとみなすのが精神病理学です。

神経科学は、脳の特定の部位が特定の機能を持つという前提に立ち、入力された刺激を脳がどのように処理しているのかをあきらかにする学問です。

これらはフレームが大きく異なるのですが、近似する部分も多いです。
詳細はまた別日にしますが、学問や似た領域というのは、
非常に近い性質を持っていることが多いです。
近年では、その「似た者同士」を橋渡し、新たな視点を与えてくれる学問領域も多く登場しています。
これらは一般に、「学際的な領域」と呼ばれます。

そんなわけで、今日は精神病理 (心のお悩み) と文化的に近似する領域である、占いと心理療法に関する記事。
少し長くなったので、2回に分けてみました。

歴史・文化的背景について

古代文明における起源

人類は古来より、自然や宇宙との神秘的な繋がりを感じ、未来を予測したり、人生の指針を得るために占いを用いてきました。
これらを担ったのは、シャーマンと呼ばれる伝統的な降霊術師や、魔女と呼ばれる存在でした。

古代メソポタミア、エジプト、中国、ギリシャなど、世界各地の文明において、占星術、易学、タロットなど、様々な占術体系が発展しました。
いつの時代も、人のお悩み (現代医学では心身症や適応障害) はあったのだと拝察されます。

一方、心理療法の起源は、古代ギリシャの哲学者プラトンやアリストテレスによる、魂の性質や治療に関する考察にまで遡ります。
古代ギリシャでは、精神をプシュケーと称し、命そのもの・精神 (息遣い) という意味も込めていました。
確かに、胸がギュッとする感覚や息が詰まる感覚は誰でも味わったことがあると思いますし、
古代ギリシャ人の考え方も理解できる部分がありますよね。

中世における宗教の影響

中世ヨーロッパでは、キリスト教の影響により、占いは迷信として排斥される一方で、聖職者による悪魔祓いや祈祷などの宗教的な儀式が、心理的な癒しや問題解決に役立てられることもありました。
現代医学の枠組みで捉えると、悪魔が見える方のそれは、
「おそらく統合失調症の陽性症状だったのではないか」と考えられています。

治療法もメカニズムもわかっていない時代で、悪魔が本気で信じられていた社会では、悪魔が幻覚として出現することも納得できます。

余談ですが、統合失調症の症状である妄想や幻覚は、時代や社会情勢によって内容が異なります。
昔は「私は伊藤博文の家系の子孫だ」と言い張る患者さんも居ました。

イスラム世界では、占星術は医学や哲学と密接に結びつき、精神的な健康維持にも活用されました。
この時期にはこれをやらないほうがいい、やったほうがいい・・・という、決断の後押しになったんですね。
医学が提示するのは手段ですが、最終的に実行に移すのは当人ですので、
そういう意味では、間接的に占星術が健康維持に役立ったと言えるかもしれません。
医学的な処置に対して「やろうかな」「やらないでおこうかな」という選択は、今でこそ考えられませんが、
当時は当たり前だったのだと考えられます。

近代科学の発展と心理療法の誕生

18世紀以降、近代科学の発展とともに、占いは非科学的な迷信として否定的に捉えられるようになり、科学的根拠に基づいた心理療法が徐々に発展していくことになります。
19世紀後半には、フロイトの精神分析学、アドラーの個人心理学、ユングの分析心理学など、様々な心理療法理論が登場し、心理療法は専門的な治療法として確立していきます。

教科書的で古典的な手技として紹介される、フロイトの自由連想法があります。

これは、患者を個室のカウチ (ソファーのような寝椅子) に座らせ、
心に移りゆくものごとをセラピストに話すという内容です。
無意識に登場するシンボルが治療上重要な意味を持ちます。
自由連想法で得たシンボルが、患者にとってどのような意味を持つのかをディスカッションしたり、
セラピストが分析したりします。

フロイトは医師でしたが、現代では心理療法士がセラピーを担当することが多いです。
無意識を表出させるためのリラックス、個室で自分と向き合わされる非日常な環境・・・占いに少し似ているんですよね。

現代における占いと心理療法

現代社会においては、科学的な心理療法が主流である一方、スピリチュアリティへの関心の高まりとともに、占いを活用する人々も少なくありません。

心理療法では解決しにくい問題や、心の奥底にある潜在的な意識にアクセスしたいというニーズに応えるものとして、占いが補完的な役割を果たすことも考えられます。

先ほどの自由連想法の例にも見られますが、潜在的な意識・・・つまり、無意識へのアクセスという面では、
占いの目的の一部は、フロイトの手技と近似するということになります。

文化人類学的視点からの考察

文化人類学の視点では、占いと心理療法は、
いずれも人間の苦悩や問題解決へのニーズに応える文化的な実践として捉えることができます。
それぞれの文化や時代背景によって、占いと心理療法の役割や形態は大きく変化してきました。
ある時代では「神の声を聞く者」、ある時代では「魔女」・・・時代や文化が異なれば、その存在の扱いは大きく異なることになります。

長くなりましたので、前編終わりです。
後編は具体的な手技として、占いと心理療法を比べて見たいと思います。


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