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占いと心理療法 2

こんばんは、治験のいぬです。
今日は占いと心理療法と題して書き出した記事の後編です。
やはり長くなりましたが、お付き合いいただけたら嬉しいです。

実際の手技における対比

問題解決へのアプローチという観点
心理療法は、患者さん自身の内面を理解し、問題解決のための主体性をはぐくむことを目的としています。患者さんの内面をとらえるためのモデル (考え方の枠組み) はいくつかありますが、それはまた今度…。

さて、ある困難があったとします。そして、それに対する受け止め方は人それぞれです。この「受け止め方」を、ストレス反応によって変わるものであると捉えるか、患者さん自身の性格によるものであると捉えるか、あるいは考え方の癖によるものだと捉えるか…の違いはありますが、どの心理臨床家も、自分の介入によって、最終的には患者さんが起こすアクションを変えることをゴールにしています。

一方で、占いは未来予測やアドバイス、気付きを与えることで、問題解決を支援します。その手法はインスピレーションのような占い師の特性によるものだったり、四柱推命のような統計学に近似する根拠だったりしますが、いずれの方法も、占い師の助言によって相談者の行動が変化することが目的となっています。占い師には「この人をより良い方向に変えてやろう」という意思を持った方は少ないですが、少なくとも「よりよく生きられるようにメッセージを送りたい」と思っている方は多いです。

ちなみに、朝のニュースでやっている星座占いのような、カジュアルな

「てんびん座のアナタ!今日は医療機関とのトラブルがたえなさそう…。
ラッキーアイテムはネクタイピンです!」

…みたいなものは、いわゆる「お楽しみ」ですので、ここでは除外しています。

手技と方法
占いはタロットカード、星占い、手相など、様々な手法を用いて行われます。一応、入門書もあり、ある程度の訓練が可能となっています。最終的には占い師の感覚による解釈が加えられますが、この感覚を養うためには、西洋史や魔術、キリスト教、ユダヤ、カバラ、宗教画、絵画に用いられるモチーフが想起させるアニマ (原型) などの知識が必要となってきます。
巷には占い師があふれていますが、彼らはある一定の上記のトレーニングを積んでいるということになります。

一方、心理療法は、カウンセリング、認知行動療法、箱庭療法など、多様な手技を用いてクライアントと対話します。心理士は自分の主軸となるカウンセリング手法を1~2つ身に着け、解釈方法を勉強会や臨床によって深めていきます。この際、臨床結果をレポートで提出し、スーパーバイザーに意見を求め、誤った解釈があれば軌道修正し、学びます。

3. 専門家の役割

占いは、占い師が解釈やアドバイスを行います。営利活動なので、価格帯は様々です。近年ではオンラインで占い師に相談できるサービスも充実しています。
人気占い師を育てるため、各社が競合しています。相談者は自由に占い師を選ぶことができ、1回限りの相談だったり、数回の相談にて利用します。

心理療法は、心理士と呼ばれる専門家が、専門的な知識と技術に基づいて患者を支援します。基本的には医師の指示のもと、治療行為の一環として提供されます。
病態水準 (古典的な精神症状の分類方法のひとつ) によっては禁忌 (実施してはいけない) となることもあるため、医学的判断と解釈が必要となっています。心理士は医師に対してレポートを提供し、そのレポートは薬剤調整や社会的資源の調整のために役立てられます。心理士は専門職の立場から、患者さんにとって心理療法が役に立つかどうかを評価 (アセスメント) し、治療の見通しが立つ場合には心理療法を実施します。

科学的根拠
占いは科学的な根拠に基づいていないため、その効果は客観的に証明されていません。
一方、心理療法は社会学・心理・科学的な研究に基づいており、一定の効果が認められています。

現代では、相談をする身としては、科学的根拠があるかどうかを考えて選択することはないと思いますが、よく話を聞いてくれる人だと良いなぁと思う点は、共通しています。
患者の話を心から聞くアプローチを、心理療法では「来談者中心療法」と呼びますが、
占いの最初の部分にも似た部分があります。そういった意味では、軽微な精神の不調 (気分の一時的な落ち込み) に対しては、
占いが寄与する可能性も秘めています。

倫理的な配慮
占いは依存性があります。一人の占い師に何でも、小さなことでも相談する人や、一つの相談事項をいろいろな占い師に聞いて回ることなどが確認されています。こういった相談者に出くわした占い師は、相談者が経済的に困窮しないよう、相談者が受け入れられるようなアドバイスを行うようつとめる必要があるかもしれません。

一方、心理療法は、クライアントのプライバシー保護や安全確保など、倫理的なガイドラインに基づいて行われます。
自由診療であることも多いですが、占いと比較すると完全な営利活動とは呼べないので、安価であることもポイントです。

おわりに
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
占いと心理療法は、歴史的・文化的背景や実際の手技において、多くの共通点があります。そして、相違点があります。
それぞれの長所と短所を理解した上で、自身のニーズに合致するものを選択することが重要ですね。

もちろん、占いや迷信を信じないというスタンスも大切ですし、僕自身も科学の徒なので、信じていませんが、科学を経て占いを俯瞰すると、
こういう気付きがあるんだなぁと思いました。

古代、学問が Universe (世界の真の値) を知ろうとした行いであったように、
人の行いは何らかの形で共通認識に通じているのかもしれません。

明日からは新年度ですね。
アタマが少しオーバーヒートしている気がしますが、早めに寝たいと思います。

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