第51回:思い出し笑いinterview 草柳俊一「談志CD 大全 立川談志21世紀 BOX」いよいよ発売!(&ツルコ)
第51回:interview 草柳俊一 「談志CD 大全 立川談志21世紀 BOX」いよいよ発売!
*intoxicate vol.106(2013年10月発行)掲載
昨年12月の本誌vol.101で、落語エンジニア/研究家の草柳俊一さんの立川談志一周忌追悼文「談志が死んだ、からはや一年」は、「来年以降、“あっ!”と驚く様な企画が飛び出すかも」と結ばれていましたが、その1つが登場です!
―ライヴCD12枚組の「あっ!」と驚くリリースですね。
「03 〜07年の高座から選び、ほとんどが初蔵出しです。『居残り佐平次』と『芝浜』はDVDで出てますが、CDで聴きたいというご要望が多く、10枚組予定にその2席を加えて12枚に。いい高座は、映像が出ていても、音でも出していいと思ってます。むしろ音で聴いたほうが感動が甦ってくることもありますから。
『居残り』は、04年の町田での独演会。いい高座なのでDVD化してますが、実はこの日、会が始まる前に談志が帰ろうとしたトラブルがあったんですよ。にもかかわらず、あの名演だった。だから、どうしてあの『居残り』が生まれたのかをわかってほしくて、この日に演った前の2席も入れました。1席目で「帰ろうと思った」と話していたのに、だんだん機嫌がよくなり、お客様もついてきて、『二人旅』を演り、最後には劇中人物になりきって進んでいく『居残り』へと。家元がよく言っていた「人生成り行き」がそのまま現れているようでした。
「すげえな、この『居残り』は」って自分で自分に感激していて、会場の皆もそれを共有している。独演会丸ごとの雰囲気を味わってもらえますよ。
今回選んだ高座は晩年なので、調子が悪いときのものもあります。でもそれをなぜ収録したかは、聴いてもらえれば絶対にわかるはず。談志という人は晩年になっても落語を面白く変えようとチャレンジしていた。その最後まで持っていたチャレンジ精神がたくさん入っています。そこをぜひ聴いてほしいですね。
弟子の会などにゲストで出た高座は、独演会と違い気楽なのでリラックスしているし、さらに機嫌がよかったりすると本当にいいんです。それが『短命』と『黄金餅』で、この大全の白眉ですね。本来の〈爆笑王・談志〉がよく出ています」
―解説が『BURRN!』編集長の広瀬和生さんと草柳さんの対談形式で。
「広瀬さんも談志の高座はほとんど見ていて、著書でも談志の名高座をあげていますが、僕も自分が録った高座でよかったときは印をつけていて、それが9割くらい重なっていた。だから広瀬さんとの対談は面白いと思いますよ。僕は脇から、広瀬さんは客席から、別の視点で同じ高座を観てきているんです」
スタジオ録音の『談志百席』の現場など、その仕事ぶりで絶大な信用を得て、晩年まで高座の録音をまかされていた草柳さんですが、記録魔だった談志の膨大な落語の記録も、生前に「あなたが整理しろ」と言われていて、貴重なお宝の山から今後も面白い作品を届けてもらえそうです。
貴重な音源といえば、草柳さんが仲間と立ち上げたキントト・レコードからうれしいリリースが。今年が13回忌となる古今亭右朝の第2弾CDです。
「今作は右朝の真打ち昇進がテーマ。単独で抜擢真打ちになるほど実力を認められていた右朝の、真打披露興行の高座や当時ラジオ放送された高座のフルバージョン音源など若い時代の記録です。解説は、披露興行で40日間、トリの右朝の高座前に出ていた紙切りの林家正楽(当時・小正楽)も書いてくれてます。いま聴いても本当にいいですよ、右朝は」
残された音源をこんなふうに大切に丁寧に世に送り出してもらえることで、寄席で聴いていた右朝さんの端整な高座姿や声に久しぶりに会えるのは、しみじみとありがたいことです。
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