第82回:思い出し笑い「6人の噺家による全50席!1席5分の落語入門」(&ツルコ)
第82回:6人の噺家による全 50 席! 1席5分の落語入門
*intoxicate vol.139(2019年4月発行)掲載
新井浩文に続いて、ピエール瀧までも! 大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺」でいい役どころでしたのに、残念なタイミングすぎる!
ピエール瀧はNHKの「超入門! 落語THE MOVIE」にも出演して落語の登場人物を演じていましたが、噺家役での映画出演もありました。林家しん平が監督した「落語物語」(2011年公開)で、主人公が弟子入りする今戸家小六という噺家役でした。この映画、一人の若者が弟子入りして噺家になっていく姿を描いたもので、噺家が監督ですから落語の世界がしっかりと表現され、さらにたくさんの噺家さんが登場している(噺家役だけではなくて、いろんな役で。たとえば、柳家喬太郎はスナックのマスター、春風亭一之輔はおまわりさん、などなど)のも話題になった作品です。主人公を演じたのは、現役噺家の柳家わさび。当時はもう二つ目になっていましたが、噺家の内弟子となり師匠の家に住み込みで暮らす今戸家小春がとてもハマっていて
素晴らしかったですし、師匠のピエール瀧もそのおかみさんの田畑智子も人情噺のようないい夫婦で。久しぶりにまた観たくなりましたが、まさかこれも出荷停止?!
柳家わさびはNHK Eテレで放送されている「落語ディーパー! 〜東出・一之輔の噺のはなし〜」にも出演していますのでご存知の方も多いかと。日大芸術学部の落研での新歓コンパが初めての出会いだったそうですが、春風亭一之輔の後輩にあたります。落語協会の柳家さん生門下で、今年の秋にいよいよ真打昇進です! そんなおめでたい年に、CDも!
2012年に、二つ目の若手噺家が行なっている新宿末廣亭での「深夜寄席」をCD化した『新宿末廣亭 深夜寄席〜百花繚乱編〜』に柳家わさびの《権助提灯》が収録されていますが、今回の作品は『5分落語』という面白い企画のシリーズです。落語1席がほぼ5分に凝縮されていて、1枚のCDに10席を収録。それがなんと5巻同時発売! 書籍では落語の演目を簡単に解説したものが出ていますが、音源でこういうものは初ではないでしょうか。6人の噺家がシリーズ全50席を口演しています。笑福亭瓶二は、笑福亭鶴瓶門下で、現在は落語芸術協会に所属して東京を拠点に活動している上方の噺家さん。古今亭今輔も落語芸術協会で古今亭寿輔門下。新作落語なイメージですが、このシリーズではきっちり古典落語を。立川志ららは、立川志らく門下で落語立川流所属。柳家小太郎は、落語協会の柳家さん喬門下。鈴々舎八ゑ馬は、大阪出身ですが、落語協会の鈴々舎馬風に入門し、上方落語と江戸落語の両方を演じられる噺家さん。そして柳家わさびの6人で、江戸落語も上方落語も楽しめるんですね。なにしろ1席5分ですから、噺の導入となるマクラはなしで、省略する部分と残す部分は、それぞれの噺家さんの裁量に任されたのかと思いますが、どの噺もきれいに5分にまとめられていて、お見事です!
落語のCDというと、落語会や独演会などの高座を収録したライヴ音源が多いですが、本シリーズはスタジオで収録されているので、お客の拍手や笑い声はありませんが、5分という短さで次々と落語を聴いていくというのは新鮮な感じ。6人の噺家さんのバリエーションもいいんですね。本シリーズのディレクター大槻淳氏は、桂三枝( 現・文枝) の創作落語を後世に残したいと、2000年代初めに『桂三枝大全集〜創作落語125撰』という大仕事を手がけられてました。今回は落語ビギナー向けということなので、これを聴いて興味を持ったら本寸法の高座を聴いて欲しいという狙いもあると思います。このシリーズで、落語に出会える人がたくさんいるといいですね。柳家三三が子どもの頃に絵本で落語に興味を持ったように、子ども時代に出会えるととてもいいかも!
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