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第17回:思い出し笑い「最初が肝心」(&ツルコ)

落語#70 柳家小三治II-1MHCL01111_LJ003389


第17回:最初が肝心

執筆者:&ツルコ
*intoxicate vol.70(2007年10月発行)掲載

長瀬くんや国分くんなど、落語に挑戦する芸能人が続出してきたなか、また新たに初挑戦を試みる人々が! 食レポーター(でいいの?肩書き)の彦麿呂は笑福亭鶴光に、ますだおかだの増田は春風亭昇太に、アンガールズの田中は春風亭小朝に、カンニングの竹山は林家正蔵に、それぞれ師匠について落語の稽古。その落語を発表する落語会の日も決められていたため、各自試行錯誤しながらも見事に、初めての落語を披露。その日は、すでに落語会も行っている腕前の南原清隆もゲストで出演。それまでの経緯がドキュメンタリー番組「芸能人落語研究会 お後がよろしいようで」で放映されました。4人の成果は、DVDで観ることができますが、皆さんそれぞれにキャラクターが出た落語になっていて楽しめます。落語に関心のなかった人が興味をもつきっかけになるかもと思う反面、初めて聞く落語が竹山の「子別れ」ってのはどうよ?とも思いますが。


このところ、ほんとに落語関連作品のバリエーションが豊富になりました。ワザオギという落語専門のレーベルからは、新作落語の帝王、三遊亭円丈を始め、柳亭市馬、柳家喬太郎、三遊亭白鳥、桃月庵白酒といった若手たちのCDも次々発表してくれるんだから、たまりません。レーベルのプロデューサーは、落語情報誌「東京かわら版」の元編集長。達人のセレクトですから、どれを選んでもはずれなし。ジャケットがまたよくて、まったく落語CDには見えないものもありますが、でもよくわかっていらっしゃるナイスなビジュアル。ジャケ買いもあり、ですよ。


また、ビクターも今年から落語会「蓄音器の犬」をスタート。毎回いい顔ぶれの中堅どころが出演するこの会で収録されたDVDがどーんとまとめて11月に登場予定。しぐさや表情など、映像ならではのお楽しみ。いい時代になりましたねー。


まだ時代がレコードだった頃、落語のLPといえば、志ん生、円生、文楽、金
馬など人気話家の音源をコロムビア、テイチク、キングなどがリリース。そこに新たな音源を登場させたのがソニーでした。スタートしたばかりの新興レコード会社だったソニーに落語好きのプロデューサーが入社、クラシックを手がけながら時機をうかがい、大御所・三遊亭圓生にアプローチ。はじめて人情噺の収録をした「圓生百席」という後世に残る一大作品が生まれるまでの経緯は『圓生の録音室』(京須偕充:著/新潮文庫)に詳しいので、ぜひご一読を。その若き(当時)プロデューサーは、その後、古今亭志ん朝、柳家小三治のシリーズも制作しています。今でこそ真打になりたてでもCDを出してますが、当時、30代だった志ん朝は“芸は消えもの”となかなか承知しなかったそう。芸が完成されていないから、と渋る志ん朝に、カラヤンだって30代の頃から、歳を重ねて何度も同じ曲を録音している、落語にも30代ならではの芸があるはず、と説得したことで、いま若い時代の志ん朝落語を聞くことができるんですね。


21世紀間近の99年に、この京須プロデューサーが「朝日名人会」というホール落語をスタートさせ、その時代の落語音源を残すということでCD発売も行われるようになったため、東西の様々な噺家の落語音源を楽しめるようになりました。60代を迎える志ん朝のCDも登場し、ファンを喜ばせたのですが、残念ながら2001年10月1日に他界。でも京須氏の元に残されていた音源で新シリーズがリリースされたのはありがたいことでした。


そして今年はうれしいことに、“朝日名人会ライブシリーズ”で、久しぶりの“柳家小三治”がスタート。飄々とした孤高の高座をじっくりと味わうことができます。本シリーズ4作めとなる最新作は9月発売の『四、ドリアン騒動〜備前徳利』。小三治といえば落語に入る前の“マクラ”という導入部の面白さでも有名。「柳家小三治トークショー」と題しマクラのみ収録したCD3作、また『ま・く・ら』『もうひとつま・く・ら』(講談社文庫)と本にもなっているほど。今作の「ドリアン騒動」はまさにそのマクラ全開。30分以上あるので、もうこのまま落語はやらないのかな?と思ってしまうくらい。笑わされっぱなしなのですが、声のトーンがふっと変わると、もう落語に入っていて、この瞬間は鳥肌モノ。そろそろ志ん朝の命日だなと思っていたときにこのCDを聞いたのですが、京須氏のライナーによると、高座の収録は2001年9月21日。病に倒れた志ん朝の代演だったとのこと。感慨深いものがありました。ところで、マクラでさんざん言ってた有楽町駅前の果物屋さんのドリアン、買って帰ってトライした人、いたんでしょうか?

CD『柳家小三治II-1「野哂し」-「朝日名人会」ライヴシリーズ42』
[ソニー・ミュージックダイレクト 来福レーベル  MHCL-1111]
CD『柳家小三冶II-2「お茶汲み」-「朝日名人会」ライヴシリーズ43』
[ソニー・ミュージックダイレクト 来福レーベル MHCL-1112]
CD『柳家小三治II-3「船徳」-「朝日名人会」ライヴシリーズ44』
[ソニー・ミュージックダイレクト 来福レーベル MHCL-1113]
CD『柳家小三治II-4「ドリアン騒動~備前徳利」-「朝日名人会」ライヴシリーズ45』
[ソニー・ミュージックダイレクト 来福レーベル  MHCL-1114]
DVD『芸能人落語研究会「お後がよろしいようで」完全版』
[Victor Entertainment VIBZ-5036]

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