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第78回:思い出し笑い「やっぱ志ん生だな!〜暗闇にヘタを着けて世界一のナスを創った伝説の巨人」(&ツルコ)


第78回:やっぱ志ん生だな!〜暗闇にヘタを着けて世界一のナスを創った伝説の巨人

*intoxicate vol.134(2018年6月発行)掲載

 東京五輪までいよいよ2年を切ったところで、開閉会式のプランニングチームが発表されましたね。狂言師の野村萬斎がこのチームのチーフに選出されたとのことで、一気に高まる期待! 寛斎じゃなくてよかったー。萬斎ゴジラ、出てくれないかしら? あの記憶に残るロンドン五輪の開会式を越える演出、お願いしまーす!


 オリンピックといえば、来年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』は、クドカンこと宮藤官九郎脚本で、明治時代に初めて日本人がオリンピックに出場した1912年のストックホルム大会から1964年の東京オリンピックまでの半世紀が描かれるドラマになるようで、こちらもとても楽しみ! オリンピックとは縁がなさそうですが、ドラマには噺家の古今亭志ん生が登場し、明治、大正、昭和と東京の半世紀の変遷も描かれるみたい。若い頃を森山未來が演じ、その後をビートたけしが演じるそうです。立川談春が師匠・立川談志とのことを綴った『赤めだか』ドラマ化の際には、談志を演じたたけしですが、今度は昭和の大名人を演じることに。さらに、志ん生の妻・美濃部りんを、志ん生の孫である池波志乃が20年ぶりに女優復帰して演じることも話題になってますね。ドラマには志ん生の息子である馬生や志ん朝も登場するのでしょうか。戦後の日本で、寄席だけでなくラジオを通して日本中に笑いを届け大変な人気ぶりだった志ん生ですが、1961年に脳出血で倒れ、東京オリンピックが開催された頃は、体が不自由になっていたものの復帰を果たしていて、オリンピック開会式の10月10日には、落語会で《富久》を演じていたそうです。


 ビートたけしは6月に出版された、自身が演じる志ん生についての本『やっぱ志ん生だな!』(フィルムアート社)で、生の高座を見たこともあり、いかにすごい噺家だったか、どうすごかったのか、また、映画監督ならではの視点から、志ん生を熱く語っていますが、読んでいると、改めて志ん生の落語を聴きたくなります。噺家らしいエピソードもたくさんあり、お客から愛された志ん生。ラジオ出演が多く、音源は豊富に残っていますが、映像で残っているものが少ないのが残念なところ。そんな欲求不満を埋め合わせてくれる素晴らしい作品が、志ん生の口演音源と山藤章二のイラストアニメを合わせた「ラクゴニメ」。90年代に発表されるや大ヒットし、1973年に亡くなった志ん生が、没後20年も経っていたにも関わらず、若い世代にも「かわいいおじいちゃん」と言われる、まさかの人気再燃! 志ん生の特徴を捉えたアニメで高座を再現している逆2.5次元状態で、映像の残っていない演目もたくさん見ることができます。さらにそれから20年を経た来年は、大河ドラマをきっかけに、また志ん生にスポットライトが当たるのかもしれませんね。


 志ん生も演じていた《居残り佐平次》をベースに、《品川心中》や《お見立て》などの物語も散りばめられた映画『幕末太陽傳』の監督である川島雄三が、今年生誕100周年ということで、様々なイヴェントが行われることが発表されました。落語ファンなら必見のこの映画、六本木で行われる〈お江戸@ハート『幕末太陽傳の巻』〉は、映画に関連する落語を上演するという企画ですが、出演者が超豪華! これ、チケット即完でしょう!


BOOK『やっぱ志ん生だな!』
ビートたけし・著
フィルムアート社 
ISBN:9784845917082

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