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〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉近藤嘉宏インタヴュー【2020.2 144】

■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、ピアニスト・近藤嘉宏のインタビューです。

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intoxicate 144


近藤嘉宏a

© 中村風詩人

すべては“ 美”のために〜近藤嘉宏の“いま”のピアニズムが凝縮した難曲揃いのディスク

interview&text:長井進之介

 近藤嘉宏は桐朋学園大学を首席で卒業し、ミュンヘン国立音楽大学マイスターコースにおいて名匠ゲルハルト・オピッツのもとで研鑚を積んだピアニスト。デビュー以来、ソロに協奏曲、室内楽など多岐にわたる演奏活動はもちろん、数多くのディスクをリリースして日本を代表するピアニストの一人として目覚ましい活躍を見せてきたが、今回、彼のこれまでの“ 集大成”ともいえるディスク、『リスト・パラフレーズ』をリリースした。


 「2015 年に、リストがキエフでピアニストとしての活動に終止符を打った1847 年に行ったリサイタルの再現をすることになり、《「ノルマ」の回想》や《「清教徒」の回想》などを弾き、そこに描かれているドラマや音楽の深さ、《ピアノソナタロ短調》や《巡礼の年》と全く変わりない精神世界が広がっていることに気が付き、それを伝えたい、できればディスクとして形にしたいと思ったんです」


 特にこの10 年、演奏表現について思うところがあり色々と研究を重ねていたタイミングで出会ったこれらの作品は、近藤の現在のピアニズムを実践するのに最適だと感じたという。


 「演奏するとき、旋律を浮き立たせ、ハーモニーや対旋律など他の要素をただ抑える…という表面的なアプローチで“ 立体感” を作るのではなく、さまざまな音色、響きを重ねることで、複数の音が同時に鳴っても、すべての要素が意味を持って聴き手に届くように…と研究を重ねています。そのようなアプローチは、まさにオペラのパラフレーズ作品で非常に効果を発揮します。なにしろオペラは歌手、オーケストラ、そして合唱…と様々な要素で成り立つ音楽ですから」


 あらゆる要素がクリアになって聴き手に届くことで、どんなに複雑で音が多い作品でも、作品の魅力や本質を届けることができるという。
 「難しいとか、ただ派手に聞こえるといううちはダメなんです。その作品の核にある作曲家の精神や哲学、そして“ 美” が聞こえなければ…。音色や響き、歌など…すべてが美しくなければなりません。結局のところ、私が行っている様々なアプローチは“美”のためで、楽曲の美しさを皆様にお伝えすることが最大のテーマなんです」


 録音技術が進歩し、演奏の“ 空気感” や“ 静寂” すらも伝えられるようになった今だからこそ、音を通して、音ではないものを表現したいと話す近藤。


 「特にこれまでにも3 回録音した《ラ・カンパネラ》と聴き比べて頂くとわかりやすいのではないかと思います。全く違う音色が聞こえてくるはずです」


近藤嘉宏j

『リスト・パラフレーズ』
近藤嘉宏(p)
[OTTAVA records OTTAVA10002] SACDハイブリッド 〈高音質〉


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