知って得しない!?【それでも聞いてみたい手術の裏話】

手術って、どんな雰囲気なのか興味はありませんか?

テーマは『音楽』『汗』『メス』です。
今回の記事には結論もオチもありません。
知っても得はしないかもしれませんが、周囲に医療従事者がいないと聞けない話ですので、お時間あれば是非!

こんな人は必読

手術に興味がある人
医療ドラマが好きな人
医療従事者を志す学生さん
雑談の小ネタを探しているあなた

多くの方は手術室に入ったことはないですよね。
でも、きっと手術室の光景はなんとなく思い浮かびませんか?
その記憶、どこからやってきたのでしょう。

おそらくテレビですかね。
ドキュメント系のテレビも然りですが、大半の方が医療ドラマではないですか?もしくはマンガ。

手術は非日常かつ派手なイメージなので、物語のテーマとして取り上げられやすいんだと思います。

手術室の実際は、病院によって異なりますが、私の経験を少しご紹介します。
非医療従事者の方々には馴染みのない話だと思いますが、医療従事者でも手術室勤務ではない場合、実は知らないことがたくさんあると思います。

同じように、医療現場の実際を書いている他サイトもたくさんありますよね。
読み比べてみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

それでは行きましょう。

① 手術中には音楽が流れている。

これ、病棟勤務の看護師さんも知らなかったりします。

手術中にある「音」は、スタッフの会話と患者さんのモニター音(主に心電図)だけです。
もちろん術者間で会話はありますが、熟練したチームほど、手術中の会話は少なくなります。
阿吽の呼吸ってやつですね。

したがって、会話がない時の手術室は「ピッ、ピッ、ピッ、、、、」というモニター音しか聞こえない状況です。

「。。。。」

何時間もこの状態だと結構キツいんです。
無駄に空気が重くなったりして、特に新人さんや若手にとっては緊張の原因になります。

そこで音楽。

音楽の選択は術者もしくは看護師さん。
会話がない時に耳に入ってくる程度の、邪魔にならない音量で流します。

これがかなり効果的なんです。
集中力の維持にもなるし、空気が重くなり過ぎず、手術の山を超えた時の雑談のネタにすらなってくれます。

この音楽も、流し方は病院や先生によって様々。

昔は手術室にたくさんCDがあって、そこから選んでました。
なんとも懐かしい。
今は携帯とポータブルスピーカーで好きな音楽を。

毎回決まったプレイリストを流す部長もいました。
手術のリズムだったり、時間的な感覚を無意識にコントロールできましたね。
今でもその曲を聞くと当時の手術を思い出します。
心臓外科時代の辛い記憶ではありますが。。。

各部屋に有線が繋がっている病院もありました。
チャンネル表が横にあって、勝手にいじれます。
僕自身が執刀する手術では、自分でチャンネル選択してましたね。
結構昔のことなのに、今でも覚えてるB35。。。笑

② 「汗」というシーンは実際にある。

よくテレビドラマで、執刀医が「汗」と言って看護師さんに汗を拭いてもらうシーンがあります。

いやいや、実際ないでしょ。

と思うかもしれませんが、あります。

手術室にはもちろん空調がありますから、事前に適正な室温に設定して手術が始まります。

しかし、集中してると汗は出るものです。
特に汗っかきの医師は、事前に対策をしていても手術の山場や終盤になると汗が垂れてきます。

そして、現場の人間しかわからないポイントが1つ。
手術用のライト(正確には「無影灯」(ムエイトウ)と呼びます)が地味に熱を発するんです。
決して、あつっ!てなるものではないのですが、長時間ライトの下にいるとだんだん暑くなってきます。

こう言った理由で、術者は暑いから室温を下げてくれ、とよく口にします。
その結果、周りにいる麻酔科の先生や看護師さんは、寒いから上着をきたりします。
これも手術室のあるあるですね。

ちなみに、汗を拭いてほしい時、
かっこよく「汗」なんて言いませんよ。
そこは幻想です。
実際は「、、、すみません、ちょっと汗拭いてもらっていいですか?、、申し訳ないです。」みたいな感じで、看護師さんに下から下からお願いするのです。

病院で上手く生きるためには、看護師さんと上手に付き合う。
これ鉄則です。
またどこかで話します。

私は汗っかきではないので、汗を拭いてもらったことはないですが、術中に眼鏡が下がってきて直してもらったことは何度かありますね。

③ メスの出番は少ない。

あなた自身が外科医になって手術をする場面を思い浮かべてください。
あなたは何か一言喋りました。
なんて言いましたか?

目を閉じてイメージしましょう。

多くの方が

「メス」

と言って手を横に出すのではないでしょうか。

手術と言えばメス、間違いない。
誰も異論はないでしょう。

ですがこのメス、出番は非常に少ないのです。

どんな手術でも必ず最初に皮膚を切ります。
使うのはもちろんメス。
が、しかし基本的には出番はこれだけ。
その後手術終了まで出番がないこともあります。

もちろん、それ以外に使用することもありますが頻度は少ないです。
診療科目によって手術手技は異なりますが、私の領域では血管や気管支を切ったりする際にメス使うことがある、くらいでしょうか。

皮膚以外のものはどうやって切っているかって?
主に電気メスです。
メスだけど、電気メスです。
通電することで止血しながら組織を切開できる優れものです。

素晴らしい道具ですね。
外科手術の進歩は道具の進歩でもあるのです。
決して外科医だけの力ではありません。

昔の外科医の大先輩方の時代には電気メスなはなく、メスやハサミを駆使して上手に手術されていたようです。
今の私には電気メスがない手術は考えられません。

文明の進歩に感謝します。

さて、メスの話に戻りますが、メスには色々な種類があることをご存知でしたか?
刃の先が尖っているor丸い、刃が大きいor小さい、手に持つ柄の部分が短いor長い、、、

使用する場面によって使い分けます。

だから外科医が、
「メス」
と言ったら、看護師さんは、どのメスを要求されているのかを判断して渡す必要があります。
結果的に、
「これじゃないね。」
と言って受け取らないことも珍しくありません。

メスの刃の形によって番号がついているので(10番、11番
、15番など)
「〇〇番メスちょうだい」
なんて言ってあげると親切ですね。


と、後半はだいぶマニアックな話になってしまいましたが、手術室の光景を少しだけ見ることができましたか?

医療ドラマで手術室のシーンを見る時、今までよりも少しだけ楽しめるのではないでしょうか。

手術室で働くことを夢見ている学生の皆さんは、一度で良いので手術室の見学ができる機会があると良いですね。
きっとモチベーションupとなって、将来への励みになるでしょう。

チャレンジ問題

さて、最後に問題です。
術式にもよりますが、手術は長いです。
本当に長い手術は10時間を超えることもあります。

手術中に尿意を催してしまった時、外科医はどうするのでしょうか?

マラソン選手はレース中に尿意を催した際には、走りながら出すという技術を持っているようですね。

では外科医は、、、?
医師になったつもりで考えてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?