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【社会起業家取材レポ #04】  子どもたちが小さな成功体験を積み重ね、夢を描き、世界へ羽ばたく。

SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2019卒業生の小川智美さんにお話しを伺いました!


1. 小川智美さんについて

4年間のアメリカ留学を経て塾講師として勤務。東日本大震災を機に「頭がいい人=人のために動ける人」というわけではないということ、子供の偏差値だけを伸ばすという現代教育の在り方に違和感を覚える。そうした想いから、子供たちが安心して失敗できる場を作ろうと、2014年に株式会社dreamLabを設立。SIA2019卒業生。SIA2021メンター。
↓小川さんのSIAプログラム発表動画                   (奥羽の杜HP(https://sendai-startups.org)より引用)

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はじめに、小川さんご自身のこれまでの歩みについて伺いました。

2. これまでの歩み

● 小川さんはどのような子どもでしたか?また、当時、安心して失敗できる場所はありましたか?

多分なかったですね。私、四人兄弟の長女なんです。なのでお姉ちゃんは心配ないねという感じで言われてきましたね。ただ、おじいちゃん、おばあちゃんからは初孫だったこともあり可愛がってもらっていましたし、父方のおばさんにも姪っ子ということですごく可愛がってもらっていました。そして、改めて当時を振り返って見ると、すごい冷めた子どもだったなと思います。小学校のころは、映画を見ているように教室の中を俯瞰していました。そんなちょっと冷めた子どもだったので安心安全な場所があるという認識はなかったですね。


● 学生時代に留学をされたとのことですが、なぜ、留学しようと思われたのですか?

国外逃亡ですかね(笑)。進路を考えたときに勉強はしたくなかったけど社会に出る勇気もなくて。そんな時に、母方のおばさんがアメリカにいたこともあり留学をすることにしました。


● 留学を経て、小川さんの目に日本の教育はどのように映りましたか?

日本の教育は戦後から大して変わってないのに比べてアメリカの教育は全然違うなって思いました。必ずディスカッションがあって、「What do you think?(あなたはどう思いますか?)」と必ず聞かれるんです。日本の教育では「正しいかどうかという点」が重視されますが、アメリカでは「どう思うかという点」が重視されるという点で大きな違いがあると感じました。他にも、パブリックスピーキングといってプレゼンをみんなの前でする機会が多くありました。自分の考えをしっかりもって話をしないといけないというのはすごくアメリカらしかったなと思います。


●これまでの人生を振り返って、 やって良かったこと、やっておけばよかったことはありますか?

未来志向なので後悔はあまりありません。自己探求、特に強みや興味を知るのは、した方が良いと思います。


● ご自身の強みは何ですか?

何でも笑いに変えるところですかね(笑)。楽しむこと、どこにでも笑いを見つけることは上手かなと思います。

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ここまでは、小川さんのこれまでの歩みをご紹介してきました。ここからは、小川さんが取り組む事業についてお伝えしていきます。

3. 事業について

<事業内容について>

● 事業について教えてください。

福島県いわき市で株式会社dreamLabを運営しています。株式会社dreamLabは、小学1年生から6年生を対象としたアフタースクールと、小学生から高校生を対象とした学習塾です。私たちのスクールでは、全てにおいての土台作りを大切にしています。


●プログラムは、誰がどのように決めているのですか?

スタッフや子どもたちのリクエストで決めています。英語やプログラミングを教えていますが、これは、試行錯誤をするための良い道具だと考えているからです。これらを学ぶことで上手くいかないのが当たり前であると、子どもたちが知ることが大切だと考えています。


● 小学1年生から6年生までの子どもたちが所属しているとのことですが、様々な年代の子どもたちに対してプログラムを提供する上で気を付けていることはありますか?

低学年と比較すると高学年は知的欲求が出てきます。1年生から3年生は学童、4年生以上は塾と分けて考えています。プログラムについては、学年ごとに異なる内容にしています。


● 「与えられる教育」と「自分で考える教育」では違うメリットがあると思いますが、どのようにバランスをとっていますか?

「与えられる教育」だけでは、意味が無いと思いませんか?学校は、広く浅く学んでやりたいことを見つける場という意味で必要だと思いますが、やりたいことを見つけた後は、自分で自由に学ぶというスタイルで良いのではないかと思います。そのため、dreamLabでは「自分で考える環境」を作っていきたいと思っています。子どもたちには、正解は一つではなく、無数に存在すると伝えています。また、いろいろな視点で考えられるようになってほしいと思います。


● 一般的な塾とは違う気がしますが、どのような採用基準でスタッフを採用しているのですか?

楽しいことや挑戦することが好き、自分から行動でき、子どもたちとフラットなコミュニケーションがとれるスタッフを採用するようにしています。


● この事業を始めて新たに知ったことはありますか?

子どもが家で十分にくつろげていないことです。親に気に入られるために家では良い子にしている代わりに、外で隠れて悪さをする子が増えていると思います。また、親は愛情をしっかりと注いでいると思っていても、それは子どもたちが本当に必要としているものとは異なることが多いなぁと感じています。
そして、事業をやっていて思うのは、私の場合、協調性を重視して、自分が我慢しすぎると、ものごとが上手くいかないということです。他人軸に振り回されることなく、「自分がどうありたいのか?」と自分の想いをカタチにしていくことを大切にしています。みんなを引っ張っていくというリーダーシップが向いているのかなと感じています。


<失敗について>

● 『失敗』を怖がって、なかなか一歩踏み出せない子どもには、どのように接していますか?

「とりあえずちょっとやってみな!」「こうやったら?」「どうすればいいのか考えてみよう!」といった声をかけるようにしています。ハードルの高いところからではなく、誰にでもできるところから始めます。みんな挑戦したくないのではなく、『失敗』したくないだけなんですよね。なので、「挑戦することに意味がある!」と伝えるようにしています。


● 小川さんご自身は、『失敗』をどのように捉えていますか?

今の時代、子どもたちにとって、『安心して失敗できる場』が、ほとんどありません。だから、子どもたちは、怖くて、失敗できないんです。でも、子どもの頃から、失敗して、起き上がり、再び挑戦するという練習をしていれば、大人になってからも挑戦しつづけるようになります。
『失敗は成功の基』と体験してもらいたいと考えています。


● 高校受験に『失敗』した子どもたちをどのように励ましていますか?

その子にもよりますよね。頑張ってた子には、「私たちの努力が足りなくてごめんね。次絶対リベンジしようね。」と伝えます。しかし、そうでない子には、「ここでしっかり自分と向き合わなければ、同じことを繰り返すよ!」と伝えています。


<子どもたちとの関わり方>

● 子どもの自己肯定感を削がないためにどのような工夫をしていますか?

先生のことを好きになると、その教科も好きになりますよね。そのため、授業では全く関係のない話もします。また、子どもたちの話をよく聞くようにしています。子どもたちは目的が見えてくると勝手に走り出すので、私は応援しているだけです。


● 勉強嫌いの子どもには、どのような言葉をかけていますか?

みんな勉強嫌いですよね。私は、単なる知識の習得は意味がないと思っています。自分がなりたい人になるための知識の習得であるべきですよね。なので、「何のためにやるのか?」ということを大切にしながら話をしています。やりたいことがない子に関しては、「自分の特技を生かして何ができるか考えてみたら?」と尋ねるようにしています。


● プログラムに参加したくないという子どもにはどのように対応していますか?

「練習しないと上手くならないから、とりあえずやってみよう!」と言って背中を押していますね。また、話を聞いたり、通常プログラムではないことを勧めてみることもあります。とはいえ、なかなか思うようにはいきませんよね。


● 子どもたちの心の自由を奪わず、叱るために気を付けていることはありますか?

信頼関係がないと叱ることができませんし、知らない人に叱られると腹が立ちますよね。その点では、子どもたちとの信頼関係を築くことを大切にしています。dreamLabでのグランドルール(他人も尊重、自分や人を傷つけないなど)を守れないときは、ちゃんと叱ります。

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小川さんの事業ついてご紹介してきましたが、皆さんいかがでしたか?
子どもたちを甘やかすのではなく、1人の大人として接することで、子どもたちが自分らしく成長できる環境になるのではないかと思いました。

最後にSIAプログラムへの参加についてお聞きしました!

4. SIAプログラムへの参加について

● SIAプログラムに参加して得られたことは何ですか?

すごく良かったと思うことは、切磋琢磨できる仲間ができたことですね。周りが成長していくのを見て刺激を受けたし、私自身も初心に戻って、力をつけなければ思いました。


● SIAプログラム卒業後、ご自身のvisionに変化はありましたか?

私の会社は初期の頃に一度、空中分解してるんですよ。最初、英語を話せるなら誰でもいいですよというスタンスでスタッフを集めてしまって、途中で目指しているところが違うなとなってしまったんです。SIAプログラムに参加しvisionを作ってからは、自分の想いに共感してくれる人が来てくれるようになりました。


● 今の目標は、何ですか?

"Green School"を作ることが目標です。日本の教育って与えられるものじゃないですか。そうではなくて、自分のやりたいことができる場が必要だなと考えています。

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SIAを通して様々な学びや変化があったことが分かりました。"Green School"が開かれるのがとても楽しみです!


5. 編集後記

この取材は、嶋田海音、笠原愛奈、髙久明日香が行いました。
最後に、取材を終えて私たちが感じたことや気づきを書いていきます。


■ 嶋田 海音
子どもたちは失敗することが怖いという理由で様々なことを拒むことを知りました。ですが、これを克服するだけで自発的に活動し、それぞれの個性も活かすことができるようになります。個性を出すこと、失敗すること、目立つことが悪いことだと思い込んでいる子どもたちにはdreamLabが必要だと思いました。dreamLabに通う子どもたちが世界中に増えて欲しいです。


■笠原 愛奈
アメリカの教育や失敗を恐れない学び方を知ることができました。私自身がまだ見ることのできない景色を小川さんから教えていただき、とても興味を持つことができました。子供が安心して学べるためにはその環境や触れ合う人が大事なのだろうなと思いました。今回教えていただいたことを兄弟と接するときに考えていきたいと思います。


■髙久 明日香
失敗を恐れない環境作りについて知ることができ、とても良い機会になりました。また、自己肯定感が下がってしまった時の対処法も教えていただいたのでみなさんにもシェアできればと思います。
▷原因を追究してしまうとネガティブに考えてしまうため、理想追及型が良い。
▷自分の理想に近づくために何をすればよいのか考える方がメンタルが楽になる。
また、人と比べてしまっていることや気分が落ちてることに気づくことが大切と教えていただきました。こうした心配事も年を取ると楽になるものだと伺い歳をとるのが楽しみになりました(笑)。

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