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【社会起業家取材レポ #11】子どももママも自分の価値を最大限発揮して人生を思いっきり楽しめる社会。


SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2021卒業生の中原絵梨香さんにお話しを伺いました!


1. 中原 絵梨香さんについて

株式会社キューテスト代表取締役。小学生時代に母を産後うつで亡くした過去を持つ。自身も母になって子育ての大変さ・周囲の支援の重要性を実感したことで、母子ともに楽しんで子育てができる社会を目指して2021年に起業。現在は保育・家事代行事業やベビーケアルームの販売事業に加え、育児のためのコミュニケーションアプリを開発中。
▷株式会社キューテストweb:https://cutest.biz
▷SIA2021最終pitch動画:


2. 取り組んでいる社会課題


「子育てのしにくさ」
「子育てのしにくさ」は、宮城県のみならず全国的に大きな課題となっています。

特に、お母さんは出産によって交通事故でいう全治3か月分のダメージを負っているにもかかわらず、社会からの支援が不十分であったり、働き方や家事育児の負担に選択の余地が少なく、24時間体制で育児を行わなくてはならなかったりなど、現代でも子育てがしづらい社会構造・思想が根強く残っています。

また、「子育てのしにくさ」が原因で、産後うつになる女性の多さや、働きながら子育てする母親の幸福度の低さなどの課題も発生しています。国立成育医療研究センターの調査によると、出産後1年未満に亡くなった女性のうち、自殺が死因である事例は92人と、がんの70人や心疾患の24人に比べても多いことが分かりました。それらの自殺の原因が全て産後うつであるとは断定できませんが、その多くに産後のストレスや不安感が関与していることは事実でしょう。


3. インタビュー:これまでの歩み&今後の展望

Q. 社会課題を自ら解決しようと思い始めた時期はいつですか?
A.
きっかけは娘を出産した2018年でした。

自分のバックグラウンドには母が産後うつで亡くなっているという経験があります。2018年に私自身も出産、その後の育児経験の中で、子育ての大変さや周囲の支援のあり方などさまざまな課題を実感したんです。1999年時点で母が感じていた課題と2018年に自分が感じた課題とが実体験を経て、リンクした(真の意味で理解する)きっかけになりました。


Q. SIAプログラムへの参加前と参加後で何か変化はありましたか?
A. 悩みを共有できる仲間ができました。

参加前は「起業したから経営について学びたい」「会社のVision・Missionを言語化したい」という程度の気持ちしかありませんでした。

SIAプログラムへの参加を経て、当初の目標であったVisionやMissionの言語化をすることができたことに加え、同期やメンターなど多くの起業家との繋がりを得られたことも大きかったです。経営の悩みやさまざまな経験談はこれから事業を本格化させていくフェーズであった私にとって、とても学びになりました。

また、SIAプログラムのその後という点でも、同期と補助金などの情報共有や交流をしていたり、SIAプログラムのプログラムパートナーだった医療法人社団やまと様にメンターとして定期的にミーティングをしていただいたり、キューテストが目指している新規事業のリサーチのために一緒に動いていただいたりと、積極的に関わっていただいています。


Q.現在の事業の状況について教えてください。
A.現在はベビーシッターや家事代行、ベビーケアルームの販売などを行っています。

保育家事代行事業を行うファミリーシッター仙台では、他サービスよりも早い0歳0か月からの受け入れを行っていることが強みで、訪問件数は月に80件を超えています。また、乳幼児の授乳やおむつ替えのための個室ブースであるベビーケアルーム「mamaro™」は宮城県内の公共の施設に設置が進んでいます。段ボール製のベビーケアルーム「mamaro lite」を地元秋田県鹿角市・大館市に10台寄付しました。

このほか、SIAプログラムの最終pitchでもお話した子育てのためのコミュニケーションアプリの開発にも着手をしています。これは健康状態を夫婦間でお互いに把握することが目的のアプリです。デジタルデバイスによって女性のバイタルデータを測定し、それに基づいたコミュニケーションアドバイスをパートナーに送るという仕組みになっており、家族間のコミュニケーションだけでなく、行政が産後うつを早期に発見するツールとしても利用できるようにしたいと考えています。


Q.現在新たに感じている社会課題はありますか?
A.シングル家庭・ヤングケアラー・虐待について注目しています。

シングル家庭・ヤングケアラー・虐待といった課題を抱えている家庭に対して、ファミリーシッター仙台のサービスを届ける仕組みを作りたいと思っています。

近年はこのような問題を抱えた家庭の存在がニュースでも多く取り上げられるようになりました。これらの課題は、私が取り組む社会課題「子育てのしにくさ」と強い関わりがあると感じています。

現在は、これらの課題に特化したサービスの提供は行っていませんが、ファミリーシッター仙台のサービスが課題を抱える家庭に届くことで、負担の軽減や問題発生の抑止に繋がると思っています。


Q.大学生へ一言メッセージをお願いします。
A.何のために自分の人生の時間を使いたいのか、大学生のうちに考えてみてください。

あなたが強い怒りを覚えた経験や悔しい経験・つらい経験は、もしかしたら社会の課題かもしれません。それを経験した人だからこそ解決方法も考えることができるし、あなたが経験した大変さは必ず誰かの役に立ちます。

何のために自分の人生の時間を使いたいのか、ぜひ、大学生のうちに考えてみてください。
みなさんのこれからを応援しています!


4. 編集後記

自らのバックグラウンドに基づく課題観に、
真摯に向き合い、強い信念を持って行動する方。


中原さんとお話しさせていただく中で、まず、課題を一直線に見据えているという印象を受けました。幼少期に辛い体験をされている中原さんですが、そこから発見した課題から目を逸らさずに、自ら解決しようとする心意気には感銘を受けましたし、なかなかできることではないと思います。

また、大学生に向けた「何のために自分の人生の時間を使いたいのか、大学生のうちに考えてみてください。」という言葉が、進路に迷っている自分に強く響きました。他の人の価値観や行動に合わせるのではなく、自分が何を課題に感じていて、それにどのように向き合っていきたいのかが大切なのだと気づかされました。
このような取材や記事の執筆自体初体験の私でしたが、インタビューに答えてくださった中原さんや、アドバイスしてくださったSIAC事務局の方には本当に感謝しております。ありがとうございました!

取材・執筆担当:鈴木葵(東北大学 2年)


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マガジンはSIACプログラムに参加する大学生が執筆しています!
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