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「婚活記」公募インタビュー#37

〈島さん(仮名)2022年12月中旬〉

30代半ばで大手結婚相談所に入り、何度か休会をはさみながら婚活をしたしまさん(女性)がその数年間に出会ったこと、思ったこと。“正直なところを吐き出したい”と応募してくださいました。

婚活こんかつ=結婚活動の略。結婚を目指し、その相手を探すための活動。

※個人的な経験と感想に基づくお話です。
※結婚相談所にまつわるお話は、すべて島さんの入会した相談所に限るお話です。

婚活スタート/男性は年収・女性は年齢

島さんが婚活を始めたのは2018年。きっかけは、離れて住む母親からのプレッシャーが大きかったこと、恋人と別れたこと。島さんご自身にも結婚願望がなくはなかった。

婚活の手段は、大手結婚相談所を選んだ。ネットで情報収集をした結果、登録者のプロフィールの信頼性が高く、また出会いを求めるというよりは自分と同じく“結婚”を目的とするスタンスの人が登録しているため、より効率的だろうと考えたから。

安くはない入会金を支払い、まずは自分のプロフィールとともに、相手に求める希望条件を登録した。

島さん 具体的には、年収や学歴、タバコを吸う・吸わない、お酒を飲む・飲まない、メガネをかけてる・かけてないとかもあるんですよね。視力はいくつ以上がいいとか、身長や体重、あと親御さんが大卒かどうか、その辺りまで、多岐にわたる質問に答えます。 

 性格的な条件も聞かれましたし、自分自身の価値観もヒアリングされました。「休みの日はアウトドアがしたいか、それとも美術館とかに行きたいか」なんて質問もありました。パソコン上で100項目以上はある質問にクリックして答えて、相手に求める希望条件に加え、自分の価値観もバーッと全部データ化されていきます。

そして、男性も女性も、登録者から検索し、いいなと思った相手に相談所のサイトを介してお見合い(お互いを知るために二人で会い、話す)を申し込んだり、相談所から条件に合う人を紹介されたりする。

──婚活は条件で人を見る面があると思うのですが、自分も条件で見られるというのはどういう気持ちがするものですか?

島さん ああ、でも、その辺は最初に覚悟していたというか。

 男性側は、女性からまず年収を見られるんですね。男性側からは女性の年収ってそんなに気にされないんですけど。

 それに対して、女性は絶対的に年齢を見られます。男性はお相手を検索する時に、例えば「35歳以下」に絞って検索をするので、そもそも35歳を超えていると、検索に引っかからないみたいな状態になるんですよね。私は入会した時に35歳か36歳だったので、これはもう婚活市場ではかなり厳しいゾーン。スーパーレッドオーシャンのようなところに、足を踏み入れたみたいな(笑)。

 そういうことは事前の情報収集でもわかっていました。自分はそもそも検索の条件から漏れてるから、きっとお見合いを申し込んでもお断りされるだろうし、申し込まれることすらあまりないんだろうなということは思って始めました。あとは、男の人はもちろん写真で容姿をチェックすると思うんですけど、それは好みとかもあると思うし、しかたないやくらいに私は思っていました。

──島さんもお相手の年収は気にした?

島さん 私は一応、希望条件としてはこのくらいが理想です、っていうのはあったんですけど、でも絶対にはしてなくて。お見合いを申し込んでいただいた方を、お金を理由に断ったことは一度もないです。自分よりも100万ぐらい年収が低い人でも、全然OKして。会ってみないとわかんない、一回しゃべってみないとわかんないみたいな感覚だったので。
 
ちなみに島さんは、お相手に求める条件は「学歴は高卒以上。年収は自分より多ければOK。年齢は15歳上までOK。身長、肥満、薄毛不問、バツイチもOK」と設定した。『でも実際は中卒の方からのお申し込みも受けていましたし、年収が自分より150万円以上低い方からのお見合いのお申し込みも数回受けました。』とのこと。
島さんご自身は4大卒、大企業に勤務する正社員の女性だ。

お見合いーマッチングの難しさ

お見合いの申し込み連絡は相談所の人を介してもいいし、当人同士でやりとりすることもできる。また、お見合いの場所は相談所の面会室でも、一般の喫茶店や飲食店などでもOK。コロナ禍に入ると、オンラインお見合いも始まったとのこと。

──どんなペースで申し込みしたりされたりしましたか?

島さん 男性からのお申し込みは毎月10数名ずつくらい、相談所からプロフィールが送られてきていました。その中からお見合いしたい人を選ぶんですけど、正直、お見合いしたいと思う人がいなくて、選べないと思ったくらいだったんですよ。じゃあ誰でも同じだ、くらいの感覚だったので、最初は送られてきたものからランダムに申し込んでたんです(笑)。なんか、受け身も良くないなと思ったので。

 自分が検索して自分からお見合いを申し込んだ分に関しては、6割くらいはお断りされていた感じがありますね。最初の頃は選んでしまっていたところがあって、同世代くらいの男性に申し込んでいたんですね。そうすると、さっき35歳の壁のお話をしたように、まあ断られます。お相手の年齢を10歳上くらいまで上げると、ほぼ承諾していただけるという感じでした。

 でも逆に向こうからお申し込みいただく分に関しては、意外と同世代が多かったんですよね。

 だから、1ヶ月に10数人ぐらいずつしか紹介されなくて、そこから選ぶとなると、自分の好みに合う人を引き当てるのはお互いに難しいのだろうなと思います。

「婚活はもって1年」

島さん 最終的に40人くらいとお見合いしたと思います。最初の頃は元気だったので、週末はずっとお見合いのアポを入れて、なんなら1日に2件入っている時もありました。

 でも、入会の時に相談所の婚活カウンセラーさんに言われたんです。「婚活って、もって1年ですよ」って。

 理由を聞いたら、「人間、あんなこと1年以上できるもんじゃないです」って言われたんですね。「とてもじゃないけど、そういうもんですよ。心を病んでしまいますよ」と。相談所のカウンセラーが言うならよっぽどなのかなと思いつつも婚活して、それがどういうことを意味するのか私も体感しましたし、1年経ったくらいでかなり病んで、何度か休会しました。

 3ヶ月休会して1回復活してまた3ヶ月休会して、そのあとまた復活してしばらくガーッとがんばった時もあったんですけど、結論から言って、今はもう休会してます。もう、いつ退会しようかなくらいの感じです。

いろいろな人がいた 

カテゴリー1:ストーカー

──実際にお見合いをされてみて、いろいろな人がいたということでしたが。

島さん はい。本当にこれは面白い経験でした、あはははは。どの話をするか迷うくらいです。私の中で、特に印象深いキャラクターをご紹介しようかなと。

 いくつかカテゴライズできるんですけど、ひとつの大きなカテゴリーとしては、ストーカータイプの方。
 このタイプの方は、ちょっとしたメールのやりとりや会話の中で出てきた固有名詞などを頼りに、住んでる場所をとにかく特定しようとしてくるんですね。
 「ということは〇〇のお近くですか?」とか、「△△によく立ち寄られるってことは、この沿線の□□駅ですか?南口ですか?」みたいにひたすら探ってくる。しまいには「じゃあ●●公園が家から近いですよね。来週の日曜日の何時何分から、●●公園で待ち合わせをしましょう。そしてお弁当を作ってきてください。以上」みたいな。

──え……

島さん なぜ私がお前に弁当を作る必要があるんだ?と(笑)。もちろん、お付き合いとか全然してない段階ですよ。でもそういうことを言えてしまったり。

 あとは朝の「おはようございます」から、夜の「おやすみなさい」まで一方的にメールが来る人。仕事もしてますし、全部返信できないですし、シンプルに負担に感じましたね。好きでもない人からそれだけ連絡が来るのがいかにストレスかって、体感して初めてわかりました。
 毎日のことに、最終的に気が狂いそうになって、私からは何度も「返信を返せなくて申し訳ないから、ペースを緩めてほしい」と言ったんですよね。「わかった」とおっしゃるんですけど、まず変化がない。
 大事な仕事がある時、「業務に集中したいので、しばらく連絡をストップしてほしい」と言ったんです。了承していただいてほっとしたその翌朝、何事もなかったように「おはようございます」ってメールが来た時には、さすがにもう限界だ!と。「ストップすることにあなたも了承しましたよね?」って返信したら「僕は大丈夫です!どうぞご心配なく、僕は強い男です!」って来たんですよ。もう、その怖さですよね。

 あ、これはだめだ、と思って。次は、どうはっきり断るか考えました。そんな人ですから、普通に断っても受け入れないかもしれない、無視されるかもしれない。もしくは逆上されるかもしれないという恐怖感もあり、めちゃくちゃ丁寧な、相手に配慮しまくったお断りの文面を考えました。「あなたはとても素晴らしい、でも私が至らなくて、あなたの価値観にうまく添いきれない。あなたは私にもったいない人だから、申し訳ないけど今回は身を引かせてほしい」と相手を立てまくった長文を送り、なんとか収まりました。

──お付き合いはしていない段階でたくさんのメールが?

島さん はい、ステディ交際はしていない段階です。
 
島さんが入会していた相談所における「交際」の仕組み:お見合い後、互いに良いと思ったら数回会って、その後「トライアル交際」に進むかお別れするかの選択をする。そして3ヶ月間ほどのトライアル交際を経て「ステディ交際」に進むかどうか決める。ステディ交際は、相談所から婚前交渉を禁止されている以外は、いわゆる普通の恋愛における交際に近い。トライアル交際までは何人と交際しても構わない。ステディ交際からは一人とだけ交際する。

──トライアル交際中は同時期に複数人と交際していいんですね。

島さん そうなんです。だから、さっきお話ししたようなヘビーな案件が同時に5人とか起こり得るんです。……となると、もうわかりますよね? 気が狂いそうになるんですよ(笑)。

厳しい世界で麻痺/“普通”だからって

──デートを何回かしたりトライアル交際に進むということは、いったんは相手をいいかなと思って?

島さん そこもですね……正直、「いいかな」と思う人は存在しないんですよ。だけど、婚活していると、さっきお話ししたようなあまりにもやばめな人が多いので、麻痺していくんです。ちょっと普通に会話できたなとか、見た目もすごくやばいわけじゃないし、がんばればいけるかもと思えるくらいでも、「いいかな」に入っちゃうんですよ。

 そういう世界で1年とか2年とか婚活してれば(心が)蝕まれていくっていうのは、振り返るとすごく納得感があります。

──いい人はなかなかいないんですね。

島さん 全登録者を母数として見たら、すてきな方もきっといらっしゃると思うんですけど、出会うのは確率的に難しい話なのかなっていうのがひとつ。

 あとはですね、相談所の登録者の男女比率が、今、女性が6で男性が4なんですよ。加えて、婚活市場は全体的に低年齢化してきていて、特に女性の20代登録者がすごく増えているんです。となると、30代の男性は基本的にまず20代にアタックする。30代前半の女性なら、30代後半から40代前半の男性がいく。でも30代後半の女性となると、もう、30代の男性も、40代前半の男性も(対象として)見てないんです。そもそも条件として完全に外しちゃってるから、検索にすら上げてくれないし、紹介条件からも外してるから、(30代後半女性の)プロフィールが相手に届くこともない。そういう市場なので、女性は30代後半になるとかなり厳しい戦いだと思いますね。

──何回か会ってみたらやっぱりいいかもという人も現れずじまいでしたか?

島さん 見た目も、話した感じの人柄も、別に奇妙な点が何もない、っていう人もいたはいたんです。年も近いし年収も高いし、容姿も全然普通だし、みたいな方が。その人に出会った時に、ああ、やっといい感じの人来たかも!って思ったんですよね。思ったんですけど、会話も全然弾まないし、楽しい感情が1ミリもわかなくて。

 考えてみれば、婚活とか抜きにした時に、普通っぽい人だったら誰でも好きになれますかって言われたら、無理じゃないですか(笑)。だからそもそもそうなんですよね。当たり前の話なんですけど、人間だからそりゃそうなんですよね。

いろいろな人がいた

カテゴリー2:男尊女卑・学歴差別

島さん やばい人で言うと、ストーカーカテゴリーの他に、男尊女卑系の人もすごく多かったです。
 「女性だから〇〇出来ますよね?」っていう質問をお見合いで浴びせかけるとか。例えば「島さんは女性だから、まさか洗濯物を週末にまとめてやったりしませんよね?」「島さんは女性だから、乾燥機に頼らず、ちゃんと日光で乾かしますよね?」とか「女性だから〇〇して当然」「僕は男性だからこうしてもいいと思うんですけど、女性だからこうですよね」といったことを一気にバーッて言われて。
 いやー、フルタイムで仕事してれば、そりゃ週末に洗濯するよ、って思うし(笑)。年収も高い方だったので、あなたそんだけ収入があるなら、それこそ洗濯乾燥機のいいやつ買えばいいし、食器だって食洗機買えばいいんじゃない、そうやってうまく家電を使って時間を買うほうが豊かじゃん、って私は思うんですけど、そういうことを一切許容しない方で。

 あと、私よりも一回り以上年上の50代の男性から、相手の年齢について「45過ぎてるとねー、さすがに、女性としてどうかなーっていうのもありますし、子供を産めないでしょう?子供産めない女性は意味ないんで」「島さんは30代なんで、子供産めますよね!」っていうのを、けっこう静かなホテルの喫茶店で大きい声で「ガハハハ!」みたいな感じで言われたり。

 そういう方はざらです。これらはまだましなほうです、全然。

 自分の中で一番やばくて、かつ面白かったのは、世の中的には有名企業にお勤めで年収も高い、高学歴の人なんですけど。お見合いで、普通はテーブルを挟んで向かい合って相手の方を正面から見るじゃないですか。その人は、「はじめまして」の段階から、椅子にまっすぐ座ってなくて、体を思いっきり斜めにして椅子にふんぞり返る感じで、たまにちらっとこちらを見てくる感じなんですね。ずっと背中を見せながら、(投げやりな口調で)「はい」「はい」っていう感じ。それが1時間続きました。

──すごいですね……

島さん でもなんとか会話を弾ませようと思って、共通項を探しながら話してたんです。たまたま部活が一緒だったので、これは!と思って「部活、同じですね!」と言ったら、「僕は大学の〇〇部、あなたは高校の〇〇部、高校と大学では格が違いますから」って言われたんですよ。

 学歴に関しても、私は私立大卒で、彼は国立大卒だったんですけど、「本当は、国立大学の旧帝大レベル以上の人間でないと話が噛み合わないんで」って言われたんです。でも、プロフィールの段階で私の学歴もわかっているはずだし、彼のほうから申し込んだ話なので、じゃあなぜ申し込んだお前は、っていう感じなんですけど(笑)。私の出身大学も、名前を言っても恥ずかしくないようなところで、正直、学歴にコンプレックスを持ったこともなかったんですね。でもその方に関しては、私の学歴をわかった上で自らお見合いを申し込んでおきつつ、「私立大卒の方とは言葉が通じないんで、何言ってるか、僕は一切(わからない)」とか「相手にするつもりないんで」みたいなことを言われました(笑)。

──何しに来たんですかね、その人は。

島さん (婚活で会った人は)そのレベル感でやばい人が9割でした。

カテゴリー3:お金関係

島さん あとはお金がらみでやばい人ですね。

 私よりも年収が高い人に「専業主婦になる道も考えていますが、なってもいいですか?」と聞いたら、「僕のお金を使われるのは嫌なので、僕のお金には一切手をつけないでほしい」「結婚相手の女性には、年収何百万以上は求めています」と言われました。なおかつ「家事も育児もすべて女性にやってほしい」と平気でおっしゃる。年収が高い人でやばい人はけっこうそういう方が多いです。

 逆に私よりも年収が100万円くらい低い方に、「収入全額、僕に渡してください。そこから、お小遣いを渡します。既に家を買い、親と同居しています。75才までローンがあるので、あなたの収入もその返済にあてます僕のお小遣いは、あなたと結婚したら3万円増えます子供も生んで、働き続けて、今の収入を維持してください」と言われたこともありました。

 なぜ子供がほしいのか質問したら「子供がいるほうが寂しくなくていいかなと思って」っておっしゃって、そんな動機?と思いましたし、もし私が仮に子供を産めたとして、その後もフルタイムで今と同じ年収を稼ぎ続けられると思ってるんだ……と。

 すごく性格悪い感じになっちゃうんですけれど、なぜ私よりも100万も年収の低い人が私の収入を全部持っていって私にお小遣いを渡すんだろうって、正直不愉快になってしまって(笑)。こわっ!とも思いましたし。
 その方には「私はあなたの要望に期待に応える度量がないので、本当に申し訳ないけれど、私はあなたにはふさわしくないです。幸せにできないと思います、ごめんなさい」と言って、お断りしました。

 助け合うことは全然OKなんですけど、すべてがご自身にとって都合のいいことだけで構成されていて。私に対して「親と一緒に自分の持ち家に住むことについて抵抗はないですか?」という質問も、「子供を持つことはどう思ってますか?」「子供産んだ後は家庭に入りたいとかありますか?」といった質問も一切ないし。こちらからの要望を言おうとすると聞こえないふりぐらいの感じだったので、そこはやっぱり厳しいなと思いましたね。

1歳の差/過酷な世界で、今日も/「婚活自傷行為」

──なんだか、今まで挙げられた人たちは、相手に求めることが多そうですね。こんな人たちばっかりだったらしんどいですね。

島さん そうですねー。当初は、なかなかこんな珍しい人に会える機会もないから、いい経験だ、ネタになるぐらいに思おうとしてたんですね。ポジティブにとらえて楽しもうぐらいに思ってはいたんですけど、次から次へとこういった方たちが現れますし

 それに、婚活って、1歳2歳の差がものすごく大きくて。36歳か37歳かの違いも大きいし、37か38かの違いもものすごく大きいんですね。だから1歳年取ると、申し込んでくる人たちの年齢もまたガン!と上がる感じがあって。去年になると、50代の方たちからの申し込みが5割、って感じです。それもまたダメージでしたね。50代の人から毎日のようにお申し込みが来るだけでもなんか……よくわからないダメージがあるんですよ(笑)。

 当初は自分より15歳上までとしていましたが、条件以上の人からも申し込みが来て、受けたこともありました。
 50代の方は、変わってる人が多くて。 「僕と子供をつくりましょう!!」 「僕、若く見えるでしょう?ぐへへ」 「30代の女性、いけるなんてうれしいな」 みたいな人が目立ち、後半からは、年齢で切るようになっていました。

 どうしても婚活って、結婚相手を探すのが前提じゃないですか。普通に、例えば職場とかで出会った相手だったら、相手を一人の人として見て、お仕事がちゃんとできるかとか、人柄とかだけでフラットに見ると思うんですね。そうやって見たら(婚活で出会った人たちも)たぶんいい人だし、なんの嫌悪感も持たない人ばっかりだと思うんですよ。
 でも、男女の交際をすることを前提に相手を見ざるを得ない状態で、目の前にその人が出てきて、ウワッと前のめりに来られた時に、やっぱり無理な人に対しては「ああ無理!」ってなるんです(笑)。

 それが(お相手の)年齢が上がれば上がるほどえぐみを増していくというか。50代とか50代後半とか、中には60代の方もいらっしゃいました。そういう人が迫りくる感じが、私からするとそれだけでも少なからずダメージを感じちゃうんですよね……
「手をつないでお散歩したいです」とか言われた時に「あ、したくありません!」ってなる(笑)。

 それはたぶん私だけじゃなくて、結婚相談所のサイトの中にある相談コーナーを見ていても、「ステディ交際にもなっていない段階で食事に行く道すがら、男性のほうが手をつないできました。触れられた瞬間、わああっ!!気持ちわる!ってなっちゃって限界で、食事に行く前に体調が悪くなったと言って帰ってしまいました」みたいな相談はあるあるで、こういう時はこうしましょうみたいなセオリーもあるんですけど(笑)、

 別に痴漢されたわけでもないし、いわゆる性犯罪とかとは全然違うんですけど、でも好きでもなんでもない人、なんだったらちょっと厳しいけどあと3回ぐらい会って話せばいい人かもしれないし、どうにかいいところを見つけてどうにか好きになれたらいい、そういうふうに努力したい、こんなふうに長引く婚活をできれば早く終わらせたい、って切実な思いの女性たちが必死にギリギリがんばって。今日も好きでもなんでもない人と会うために、力を振り絞って、ワンピースを着て、ヘアメイクをして、みたいな感じなんですよ、婚活って。
 
 そういう中で、行ってみたら手をつながれた、その瞬間の、ああやっぱり無理だったという気持ちと、なんならもう痴漢にあったぐらいの傷みたいな感覚というか。それはどうやら私以外でもよくある話ということも、途中から知っていって、ああなんて過酷な世界なんだろうと(笑)。
 
 私自身、いいところをなんとかして見つければいい人だと思える日が来ると思って、いいところ探しを無理にしたけど、自分がその分とてつもなく削られていた自分が思ってたよりもすごくストレスを感じてたんだとということに気づいたんですね。

 何十人もお会いしたり、メールのやりとりもして、現れる人が9割こういうラインナップで、私がめちゃくちゃ運が悪いのかなと思ってネットを見ると、婚活カウンセラーの人がやってるブログなんか読んでも「変な人が8割9割の世界です」って断言していて、そもそもそうなんだというのも知りました。

 じゃあ、残りの1割は普通の人なわけで、たくさんお見合いを重ねれば出会えるんじゃないかと思ってやってきたし、実際普通の人もいましたけど、さっき言ったとおり、じゃあ普通の人だったら無条件に好きになれますか、誰でもすぐ付き合えますか、普通のお見合いじゃなくてもそれって無理ですよねっていう話だったりする。そうなった時に、自分の中で、「これをやり続けるの?」って。

 過去を振り返って、普通の自由恋愛の市場で、好意があって惹かれてる男性といい感じになって初めてごはんに行く時って、そわそわして、メイクや服選びも、がんばろうと思わなくてもついついがんばっちゃう、そういう自分が思い出されて、ああ人間ってそうだよなって。人間って、そんなに自分のこと騙せない

 好意がある人となら、支度を苦だとも感じず出かけていくけれど、(好きではない人と会う場合は)真逆の、むしろすごい苦痛に変わってしまう。体感して初めて、いかにそれが苦痛なのか知りました。
 自然と好きな服を選んだりメイクをがんばったりする相手が存在することが、いかに奇跡的で感謝すべきことなのかというところにも気づいたし。

 あはは、騙せると思ったんですよ、最初は。うまいこと割り切っていけるかなーとか思ったんですけど、自分のことを騙すってすっごい難しいんですよね。自分を騙すのって、すごく……ある種、婚活自傷行為みたいな感じ、だなと思いました。

 好きでもなんでもない人に会うためにお金も使って。そう、毎月会費も払ってるんですよ。そんなにお金がいっぱいあるわけじゃない中で、高い入会金を払った上に毎月さらにお金を払い続けて、で、それをする(笑)。ってなると、それは楽しいわけないどころの騒ぎじゃないよねと(笑)。病んで当たり前みたいなことをやってるのが婚活だな、って。

もうできない

島さん とはいえ、結婚相談所を退会するイコール、一生結婚できなくてもいいって認めるかのような感覚があったんです。親からもすごく言われたんですよ。「退会するってことは、一生結婚しなくていいっていう決意ね?」とか言われて(笑)。いやそんなつもりないけど、と思うと退会できずにずるずるずるずる休会を繰り返すみたいな感じでいってたんですね。今もその感情はあるんですけど、ここ最近やっと「退会しよう」と思うようになりました。

──退会しようと思えたのは何かあった?

島さん まだ100%きっぱり思えたわけではないんですけど……もうお見合いをする元気がなくなったっていうのが一番大きいかもしれません。今までは、まあなんとか、ぎりぎり取りつくろってお見合いに行っていたんですけど、化粧をしようとしても手が動かないんですね。なんか……今からお見合いに行くと思うと動悸がするっていうところにまで陥りまして。

 コロナが一番流行っている時はオンラインお見合いがあったんですね。その頃、年収が非常に高い方とお見合いすることになって。私は職場の規則で、会食を含む人との接点をあまり持ってはいけないということがあり、その事情と共に「申し訳ないけれどもできればオンラインでお願いしたい」と相談所の方を通してお伝えしたんですけれど、相手は頑として「僕は対面で会いたいって言ってるので」との一点張りで。「僕がそう言ってるんだから従うべきでしょ」みたいなスタンスでずーっと来られて、1ヶ月くらいその押し問答が続いた末に、私の方から会うことなくお断りさせていただいたっていうことがあったんです。

 そんなこともあって、お金がたくさんあるからと言ってそういう人と結婚しても絶対いいことないと思ったし、なんですかね……お金があるとかないとかは、まあ、もうどうでも……どうでもよくはないんですけど(笑)、そもそもこの市場で活動すること自体うんざりしてしまったというか。いったん自分を解放しよう、みたいな感覚ですかね……

島さんの結婚像/好きな人の子供なら

──島さんは結婚をどういうものと思って婚活をしていた?

島さん 個人の理想としては、良きパートナー、みたいな感じの人がいいなと思っていて。家事に関しては、私、今までは一人暮らしの経験がある男性しか知り合ってこなかったので、男の人も身の回りのことを自分でやるのが普通という感覚がすごく強くあったんですね。

 大学の時も、一人暮らしをしてる同級生の男の子が非常に多かった。私も一人暮らししてるし、男だから女だからというのは関係なく、まったく同じ立場・環境ですよね。社会人になってからも、そういう人が周りに多かったです。

 だから、なんとなく、完全に対等なパートナーで、家事にしても、生活全般に関しても、分担してやるイメージ。無理して晩ご飯作るくらいなら、今日はウーバーイーツでいいじゃんみたいな感じで、まあ自分達の身の丈に合った生活をして。子供ができたら、その時はさすがに、働き続けるかどうかはそこでいったん考えて、場合によっては専業主婦になるとか、そういう選択肢があればいいなという感覚でしたね。

──子供もできるならほしいなと?

島さん 以前はそう思ってました。今はもう、年齢的にも、なんかあんまり……
 もし今、普通に好きな人がいて結婚するってなったら、たぶん子供ほしいって思うと思います。でも、婚活中は、婚活でお見合い結婚するんだったら子供はいらないなって思ってました。

 そう、好きな人の子供だからほしいと思う、だけなんですよね。この人の子供だからほしいとか、この人と一緒に育てていくんだったらほしいっていう。相手に対する信頼や尊敬、安心感、愛情、生活設計もぜーんぶ、すべてがそろった上で発生する感情であって、それがない相手には思わない。子供がほしいから結婚するわけでは決してない、って感じですね。

好きにならないタイプの相手に好かれるために

──婚活に対する正直なところを相談所の婚活カウンセラーさんに話したら叱咤激励されそう、ということでしたが

島さん 向こうは商売なので、退会させたくないんですね。実際婚活でカップルになる人の数ってそんなにいないんですけど、相談所が何で儲けてるかって言ったら、結婚が決まらずに会費を払ってる人たちで儲けてるんですよ。だから向こうとしては婚活を辞めさせたくないから(笑)、一回休会してからまたやりませんか?とか、オプションでいくらか払ってもらえたら、条件に合う人をこちらで見つくろってお見合いを組むっていうサービスがありますとかって言われる。確かにその数千円を払うと、割とまともな人が出てくるんですよ(笑)。

 あと、婚活カウンセラーが女性の側に厳しく言うケースも多くて。「あなたは35歳を過ぎている。そんな人が相手を選ぶっていうのはさすがに厚かましい、そんなことをする暇があったら自分を磨いたらどうなの?」とか、「ピンクのワンピース着なさい、もっとひらひらした感じの」とか言われたり。
 
 そう、服もね、けっこう苦痛でしたね。当然第一印象もTPOをわきまえた服装も大事だし、そう考えると、お見合いに関しては万人受けというか、最大公約数的に好印象を与えるお洋服がいいのはわかるんですけど。

 相談所の婚活カウンセラーからのアドバイスとしては、絶対ワンピース。で、ひらひらしていて、色は薄ピンクか、白か、薄いベージュか、みたいな色にしてくださいと。髪の毛はロングで、おろしてサラサラな感じで行ってください、メガネかけずにコンタクトでって。確かにお見合いってそんな格好のイメージあるなぐらいに思いながら、最初はコスプレ感覚で行ってたんですよね(笑)。服も新調して。でも、私はそういう服装があんまり好きじゃないんで、ずーっとやってるとコスプレ感覚の遊び心では済まされなくなって(笑)、やっぱりストレスがありましたね、そこも。

 ある時親友に言われたんですよ。「今まで、こんな格好してる女と付き合うタイプの男を好きになったことなくない?」って。
 
 明らかに自分のいるコミュニティで自分が自然と親しくなる系の人達じゃない人達にうける格好だし、(お見合いでは)そういう人たちにうけるトークをして、うける趣味を言って。私はもともと営業職だったのもあって、相手を喜ばせる、気分を良くすることはできるんです。お見合いの時も、相手にしゃべらせて、相手に好かれて、ぜひもう一回会ってください!って先方から言われるところまではほぼもっていけてたんですね。でも、自分が苦しいですよね。それでお金がもらえてるならいいんですけど、お金払ってるので(笑)。

「普通」が遠い

島さん 婚活してると、どうしても「じゃあ何があったら幸せなんだろう?自分は何を望んでるんだろう?人を大事にするって何だろう?」みたいなことをふと考えるんですよね。

 さっき言ったみたいな、パートナーとして、相手の仕事が忙しいとしても、今日何時に帰るとかを連絡し合って、じゃあ私のほうが帰るの早いからごはん作っとくねみたいな感じだったり、そんな上等なものを作らなくても、おつまみくらい作って、相手が帰ってきて一緒に一杯飲んで、しゃべって楽しくて、みたいな。別にたくさんお金があるわけじゃなくても、普通ぐらいでいいし、とか。

 相談所の入会時に結婚に求める条件をいっぱい挙げたんですけど、実際何を求めてるのかなって考えたら、その中にはなくて、全部「普通」だったみたいな感じ。だけどその普通が難しいなあっていうのがありますね。

 人を大事にするっていうのも、特別なことをするわけじゃなくて、それこそ普通なんですよね。私のほうが2時間ぐらい早く帰れるからごはん作っとくし洗濯物片しとくねー、みたいなことっていうか。ありがとうって言って、後日、この前やってもらったからこれやっとくわ、みたいなことが当たり前に成立する関係性が、自分にとっては普通だったんですよね。
 普通であり、それが相手を大事にすることであり、自分の幸せであり。婚活の中で、それを再確認しました。

 普通……でも普通が遠いですね。普通はいずこへ、って感じです(笑)。

 普通はどこにあるんだろう? 若い時だったら、すぐそこにあったんですよ。でもなんかたぶん、逃すと得難いものになっちゃうんですよね、普通って。うん……

母からの詰め

──婚活を始められたきっかけの一つとして、親御さんからのプレッシャーがあったとおっしゃっていましたが、親御さんは、なぜ結婚してもらいたがっていた?

島さん 母は、習い事のお友達が孫や娘婿の話をしてくる中で、自分は言えなかった、それが嫌だった、っていうのがあったみたいですね、実は。

 相談所に入会したら、ますます親からのプレッシャーが強まったんですよ。入会したってことは結婚できるんじゃないのって親も期待しますよね。今どうなってんの、どういう状況なの、早く結果出してよ!みたいな言い方で詰めてくる電話が毎週かかってきて。「どんな服装して見合いに行ってんの、ちゃんとリボンとかピンクとか、男を惹きつける格好しなさいよ」とか言われて、何言ってんだろうこの人、って思ったんですけど(笑)。

 「35歳過ぎて自力で結婚できてない人が相談所に登録して、なんとか助けてもらおうとしてる状況なんだから、自分で結婚相手を見つけられなかった罰として、気持ち悪い人と結婚するってこともやむを得ないって自覚しないとだめよ」って言われたんですよ。そんな理屈あるか?と思ったんですけど。親も悪気はなく、何とか結婚してほしくてはっぱかけようとして言ってるのかもしれないですけど、そのくらいのレベルのことを言ってきたり。「子供を産まないと女の人は一人前じゃない」「結婚しても家の中でものが言えるようになるのは子供を産んでから」とか、今時そんなことを言ったら炎上するよっていうような(笑)ことを、田舎の親なので、言っちゃうんですよね。
 その手の詰められる電話を週1ペースで受けていた、それもなかなかきつかったですね。

──それはきつそうですねえ……

島さん だからコロナでラッキーでした(笑)。あ、実家帰んなくていいわ、このままなんとなくフェイドアウトして、この件はもう諦めてくれればいいなって感じでしたね。

好きならなんでもいい/人生に後悔はない

島さん 途中から、婚活を長々とやってたのは、一応活動はしてるぞー、ってことで自分の中で気を楽にしてる面もあった気がします。だって、現実的に冷静に考えてこの人と結婚する可能性ある?って思ったら、ないだろうっていう人ばっかなんですね。「一応婚活はして、努力はしてるぞ」みたいなことに時間を割いてしまった、っていう感じはあります。

 結婚はやっぱりできればしたいので、何もしてないとなるとやっぱり焦るんですよね。誰とも会わなければゼロであり、ちょっとでも可能性を広げるにはとにかく動くことが必要なので、動いてるぞ、っていう感じですかね。

──婚活はいったん休んで、また気力が出たらやるかも?

島さん まあ今んとこは気力は出ないだろうなって感じはします(笑)。ちょっと休んでからまたっていう感覚は現実的に考えるとあんまり想像つかないんで、おそらくやめると思いますね。

──お仕事をして、自然に生活していくっていう感じですかね。

島さん 仕事も今そんなにうまくいってるわけじゃないんで、正直、誰かに養ってほしいなあっていうのはあります。でも、じゃあ、養ってくれるなら誰でもいいのかってなると(そうではない)。(婚活を始めた当初は)ちょっとぐらい妥協もするしいけるだろう!って思ってたんですけど、いやその妥協って意外とできないよなーって。「ちょっと妥協する」の「ちょっと」って、たぶん年収とかその辺は全然いけるんですけど、好きでもなんでもない人と結婚するのって、難しいなって。あったりまえのことなんですけど(笑)、それを痛感しましたね。うん……逆に、好きだったらけっこう何でもいいんですよね、私は。

──婚活では、好きになれるような人は出会わなかったと。

島さん 出会わずです、ゼロです(笑)。

 ……そうですねー、なんか、どこで何を間違えたんだろうとか思わず思ってしまうんですけど、

──間違い?

島さん もっと若い時に、友達にもっと必死に紹介をしてもらうとか、もっと結婚につながりそうな人と付き合えばよかったんじゃないかとか、あの時誰々君に告られた時に断らずに付き合ってたら人生変わったかもとかって、ひと通り思ったんですよ。

 でも結局、もし人生をもう一回やり直すとしても、たぶん同じ選択をするんだろうなって(笑)思ったんですよ。強いて言うなら、うまくいって結婚できてたらベストだったなって相手が一人いるので、その人に関しては、あの時私がこういう風に立ち回っていたら!とか、あの時自分が未熟だったからだめになっちゃったんだなっていう反省は素直にあるけども、でも大きなヒストリーとして(笑)考えた時には、全然後悔はないんですよね。

(終わり)

付記

この記事を作成中に、島さんから近況のご報告をいただきました。
インタビューの際には、記事中にもあるように、結婚相談所をいつか退会するとは思うが、退会イコール結婚を諦めることのような気がして決めきれないとおっしゃっていましたが、『結婚相談所を退会しました』とのこと。
『私、一度やり始めたことを目標達成する前にやめるのって、できない性格なんで、なかなかの快挙です』
婚活中に気づいたことが多々あったとお話しくださっていた島さん。退会を「快挙」と表現されているとおり、新しい一歩は明るい方向に踏み出されていると、願いを込めて思っています。

また、相談所を退会して見えてきたことがあると、文章に書いて送ってくださいました。Zoomでのインタビュー中は明るく、サービス精神でもって冗談まじりに語ってくださいましたが、口頭では表すことが難しかった傷や心情がおありだったことを感じました。
婚活中の方、これから婚活をされる方へのメッセージでもあります。一部編集し、以下にご紹介します。

婚活でお断りされることは割と平気で、むしろほっとしていた。お相手が事を前に進めようとすると、ストレスを感じた。

「なぜなんだ?婚活なんだから、前に進める方が上手くいっているということじゃないか!
お相手だって事を進めようと努力して、無理や我慢をしている部分も多分にあるだろうし、有り難いじゃないか!なぜ、喜べない?」
なんて、思っていた。

でも、答えは、シンプルだった。
好きか嫌いか、楽しいか楽しくないか、本心から意義を見いだせているか否か、希望を見いだせているか否か。

そこの本音の部分で自分をだますのはけっこう難しくて、それを強引にやると、婚活が自傷行為になる。

「いい人だけど、異性として見れない人」「生理的に無理な人」「人間として無理な人(男尊女卑、モラハラ、自己中な言動など)」と結婚を前提に向き合うのだから、ストレスを感じて当たり前。
結婚ってことは、毎日、一緒にいる、というか、男女の接触も持たないといけない。
どこかの段階で、その前提で相手を見なければならない。

好きでもなんでもない人どころか、無理な人に会い、一生懸命お店を探し、予約し、コミュニケーションをとる。
好きでもなんでもない人ならまだ良いが、会うのが憂鬱な人にそれをする。ひたすら笑顔をつくり、相手に感謝し、気持ちのよい時間になるように努力する。

さらには、結婚を見据え、関係を築く。
「この人と結婚?ぞっとする」そう思う時もあるが、そんなこと考えたら、やってらんない。思考を殺し、限界を感じたら、お断りさせていただく。
諦めてくれず、暴言を連続で送ってきた人もいた。夢に出るくらい怖かった。 

また、びっくりするような人に出会うことも多く、それによる疲れもある。

やばい人ではない時でも「こんなに楽しくない時間が、この世にあるのか?」と思いながらのデートもある。

高いお金を払い、それを続けることは、ストレスになる。

気づけば、男性が苦手になり、見合いに行こうとすると、動悸がしたり、蕁麻疹が出るように。動けなくなったり。

最後にもう少しがんばってみようと、退会前に活動した。しかし、やはり厳しいと悟った。

「明日か明後日の21時からならOKです」と連絡してきた人もいたが、今思えば、全然親しくない初回の見合いで「明日」とか「21時から」とか、その選択肢の出し方って……と思う。

でも、そういう違和感も見てみぬふりをし飲み込まないとやってられないし、「普通」なんて存在しない世界観にいると、人間、麻痺をおこす。
自分が、嫌と感じることが何なのかすら、わからなくなる。

ここまでくると、回復には時間がかかる。



もし、婚活にストレスを感じている人がいたら、これだけは言える。

たくさんの人とお見合いすれば、きっと素敵な出会いはあります!
しかし、そのたくさんの人が、10人か、50人か、100人か、200人か、そこは分からない。運もある。

そして、お相手に感じる違和感、ちょっとした不快感は、かなり、精度の高いもので、時間の経過に比例し、膨らみます。そこは、違和感を事実として受け入れ、大事にしてよい。

そもそも、本当に関係を築ける相手や、良い形で継続したい相手なら、変な我慢をしないコミュニケーションがとれる。

婚活で、自分の良さ、自分の神経を殺すと、後遺症がやばい。

婚活自傷行為でついた傷は、簡単には消えない。
しかもそれを、婚活を頑張ってるという感覚で捉え、ちょっと安心感にしてたりしがち。無意識に。
これまさしく自傷行為。
しかも、高いお金を払い続けるので、経済自傷でもある。

お相手の方には何の非もない!ただ、自分とは合わなかっただけ。今もそれは思う!

だけど、自分が嫌な思いをしたり、怖い思いをしたり、傷ついたり、気持ち悪かったりしたことも、相手を尊重するのと同じように尊重すべきだった。

自分を大事にできないと、他人も大事にできない。

愚痴や悪口になってもいいから、ノートにいったん書き出すとかしたほうが健全。書き出してから建設的に整理して、アクションプランや解釈を考えたらよい。

そんな当たり前のことの大切さに気づき、私の婚活は終わった。



ちなみに、私は、素敵な出会いに恵まれるまで婚活を続けることができなかった人です。

続けていけば、いずれはきっと素敵な出会いがあるとは思いますが、続けていく中での課題や困難があり、続けていくにも限度があるというのも感じました!

友人の同僚は、200人と見合いして198人目と結婚したらしいので、そういう人もいるという意味で「たくさんの人とお見合いすれば、きっと素敵な出会いはあります!」と言えますが、本当に終わりが見えない話ではあります。

途中まではコミュ力が磨かれたとか思ってたけど、婚活自傷行為を続けてると、コミュ障や対人恐怖・嫌悪、無気力になるし、コミュニケーションに歪みが生じ、むしろコミュ力は、落ちます(笑)

(付記 終わり)


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