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採用市場とマッチしない、求人票をどう整えるのか?

人材紹介やダイレクトリクルーティングなどでは、企業が人材を募集する際に、肝となるのが“求人票”です。人事担当者は現場の声を優先するがあまり、結果的に必要以上のスペックを求めた求人票を作成し、応募につながらないケースが散見されます。どのようにして、反響の出る求人票を整えていけばよいのか、その考え方や手順について解説します。

執筆者プロフィール

InterRace株式会社ディレクター
村上幸弘

神戸大学卒。リクルートにて一貫して人材斡旋領域に携わり、営業、事業開発、法人営業企画Mgr、営業部長を歴任。年間1000名の超大型採用PJや日本発グローバルアパレル企業の採用立ち上げ支援・海外進出支援等、幅広い企業規模、業界/職種の採用支援の実績を持つ。現在はInterRace株式会社にて、人材紹介事業のリードと、複数企業の採用コンサルティング・採用業務支援を担う。

①自社の求人の相場観を掴む

求人票を整える前にやるべきは、自社の求人の相場観を把握することです。これが掴めていれば問題ありませんが、相場観がないと、求人票のどこを見直せばいいのか、その「打ち手」も考えられません。そこで採用マーケットにおいて自社の求人がどう評価されているのかーーその相場観から身に付けましょう。

まず、ダイレクトリクルーティングを使って、定量的に相場感をつかむ

まず「ダイレクトリクルーティング」を活用して、自社が求める人材候補者にアプローチしてみましょう。検索条件を入力すれば、求める候補者が何名いるのか、定量情報を把握することができます。
 
仮に、エンジニア募集で200名が検索できたとします。基本的には、一人ひとりのレジュメを閲覧できるので、そこからアクティブユーザー且つ転職回数が3回未満など細かな要件に加え、検索条件だけではわからない要件をレジュメ上で確認をしていくと、約20〜40名(1〜2割)ほどに絞られます。このようにして、アプローチできる求人候補者数の概算が、相場観としてつかめます。ちなみに職種などによりますが、ダイレクトスカウトの応募者のメール返信率は1桁台です。
 
なお、このダイレクトリクルーティングの精度をより上げていくためには「職種理解」が必要となります。例えば、自社では「営業」という仕事でも、他社では「企画」に該当することがあります。こうした企業ごとの違いを理解した上で、条件設定やアプローチができるようになると、応募者の間口を広げることができます。
 
現場の人や、外部のエージェントと連携をとりながら、自身で「職種理解」を高めていくやり方もありますが、理想なのは、そういった知見を持ったエージェントやプロのリクルーターを巻き込んで、検索条件を設定していくことです。早期の採用に繫げられる可能性を高めることができます。

総合型の人材紹介会社を活用して、定性情報を把握する

次に、人材紹介会社(転職エージェント)にヒアリングしてみることをおすすめします。最初は採用マーケットと近しいデータベースを抱える総合型の人材紹介会社に相談し、定性情報をつかみにいきましょう。もし、現状なかなか求人を推薦してもらえない時は、考えられる理由は2つです。
 
●CAさんが案内したが候補者が応募していない場合
●CAさんから求人が案内されていない場合
それぞれで対応が変わってくるので、注意が必要です。
 
●候補者が応募していない場合
これはCA(キャリアアドバイザー)さんに案内されたものの、応募に至らないケースです。「何名の応募者に案内して、そのうち反応があったのは何名だったのか」。こうしたデジタル(定量)を押さえつつも、定性情報を細かく収集します。
 
どのCAさんが、どの求職者に自社の求人を案内したかが履歴で分かることも多いので、RA(リクルーティングアドバイザー)を通じてその状況を確認できないか、相談してみます。「応募しなかった候補者は、自社以外にどのような会社に応募して、なぜ自社が選ばれなかったのか」を詳しく聞きことで、候補者が動く理由、動かない理由を立体的に掴んでいきます。
 
候補者に案内されていない場合
RAにとって、注力しても採用決定に繋がらない可能性が高いと見立てられているケースが多いです。この場合大事なのは、まずは自社の味方になってもらうことです。そのために、例えば「この求人を決定に繋げる為に、どのように要件を変えるとよいか、協力してほしい」といった意思を伝えて、CAに推薦につなげる求人票の見直しポイントなどを聞き、RAやCAの業績につながる動きをすることが大切です。「人材紹介会社(転職エージェント)の有効な付き合い方」については、後日記事を公開する予定ですので、詳細はそちらを、ぜひご覧ください。
 
情報をもとに、自社の求人のどこをどう変えていけばいいか?を分析する
転職エージェントでは定性情報を、ダイレクトリクルーティングでは定量情報を理解しているので、採用マーケットと自社の求人がマッチしているか、してないかが、採用競合企業の求人と比較した上で、把握できるわけです。それによって、自社の求人のどこを、どう変えていくと応募が見込めそうかの当たりがつけられるようになります。
 
候補者が応募しない理由をしっかり捉えて、それを解消しに行く、もしくは、別の魅力を付与して、 応募者に検討してもらえる状態を作り出す。このように、いくつもの求人票の改善パターンを考えて、効果につながる求人票に整えていくことを、人事担当者はやらなければいけません。

②求人票の何を変えるのか

現場や現場の部門長、面接官とすり合わせをして、求人票を変更していくわけですが、採用相場に応じた変更箇所が広がれば広がるほど、候補者を増やす可能性が広がる一方で、採用効率が悪くなる恐れがあるため、限定的な変更をしている企業が大半です。その際には、他社と差別化できる部分を見出せるかどうかが重要となります。ここでは、見直すべき代表的なポイントをいくつか紹介します。

仕事内容が曖昧で、具体性に欠ける

CAさんに聞くと、「求人票にある仕事の内容が曖昧で、よく分からなかった」という理由で応募されないケースが多いようです。組織・仕事のミッション、この求人要件にしている背景、事業的な背景を明確にするだけでも、反響が増えます。

長らくの慣習的な理由で、設定されている

例えば「転職回数が3回以上の方はNG」などのように、長らく慣習的に設定されている求人要件が多々見受けられます。転職回数が多い裏には、家族や企業などの本人以外の要因などもあり、必ずしも定着しない理由にはなりません。求人要件を1つずつ確認して、必要がない条件であれば見直していきましょう。

採用の間口が狭くなりすぎている

人手不足で、育成に時間を割けない理由などにより、採用要件が高くなる傾向があります。そうなると職種によっては、応募がなかなか集まりません。こうした場合は、スカウトメールの候補者数(出現率)や返信率などの定量情報をもとに、現場と交渉して、条件を見直していきましょう。
 
「この出現率だと、今応募がなければ、7、8カ月待っても来ないことが予想されるので、早くても入社は1年後です。1年後まで、この組織体制を維持するのか、要件を緩和して、いろんな人に会いながら、良い人材がいたら採用して育成するか、どちらを選びますか」といった、具体的なシーンを伝えながら、働きかけていくのが良策です。

同業界・同職種の採用にこだわっていないか

現場の人たちは即戦力がほしいので、「同業界・同職種」経験者を求めます。しかし一般的に「同業界・同職種」経験者を採用できるのは、業界の上位企業か、もしくは高年収の企業の、どちらかしかありません。実際のキャリア採用では、「異業界」もしくは「よりキャリアの浅い層」からの採用が大半を占めています。
 
業界上位の企業も、同上位からの採用は難しく、業界同列あるいは下位の企業から採用するケースがほとんどです。他社と差別化できる求人要件がなければ、「異業界」「異職種」「経験少」で、採用の間口を広げていきましょう。
 
ただし、エンジニアの場合は、その技術を有していなければ、プロジェクトにアサインできないことがあるため、求人要件を簡単には変えられません。その場合は、社内異動やリファラル採用も行いながら、地道に探していくしかありません。

リアリティのある情報を伝えていない

一般的には、求人票にはポジティブ(良い)情報しか掲載されないことが多いです。しかし、求職者は求人票だけでなく、企業の評判・口コミの専門サイトでリサーチしてから、応募を検討します。そのため、口コミに対する応募者の疑問に答えるような内容を求人票に反映するのは、求人要件を改善する1つのポイントになります。
 
例えば、事業再生企業や事業統合企業の人材募集では、あえてその現場の状況を包み隠さず、ありのまま伝えることで、当事者として火中の栗を拾おうという志のある人材が応募し、採用に至った実績もあります。リアリティのある情報を伝えることで、入社後の早期退職などの、採用のミスマッチの防止にもなります。

採用要件を変えても、応募者が集まらない場合

選考フローの短縮化

多くの企業で導入されている打ち手としては、「選考フロー(リードタイム)の短縮化」です。「面接回数を2回→1回に」、「書類選考をなくし、応募者全員に会う」など、求職者にとっては採用までのハードルが低くなるので、応募数を増やすことができます。こうした「選考フロー」での魅力づけも効果的な手法です。

正社員→業務委託へ雇用形態を見直す

採用要件を改善したものの、それでも思うように応募者が集まらない時は、正社員から業務委託への雇用形態の変更が有効な採用手段になります。いわゆる「採用計画の見直し」です。
 
例えば、特殊な要件が求められるエンジニアは、顧問サービスなどを使って業務委託で補填するケースもあります。採用難度の高い採用マネージャーの場合は、プロのリクルーターに業務を委託し、業務要件を設計した上で、キャリアの浅い採用スタッフを正社員として採用し、自社の採用業務を回していく事例も増えています。

現場との連携を強化するための施策

求人票を改善していくために、現場との連携が欠かせません。ここで苦戦してしまい、求人票に手をつけられずに、思うような採用ができずに、事業計画が後ろ倒しになるといった、より深刻な状況に陥ることも少なくありません。いかにして現場と連携を深めていくのか、その方法に触れておきます。

定量・定性データをもとに、現場との目線合わせ

現場との連携がとれていないと、「応募がこないのは、人事がやるべきことをやっていないからだ」と言われがちです。人事担当者は、そこに抗うためにも、これまでしっかり収集してきた定量情報と定性情報をもとに膝を突き合わせて、現場と話をすることです。
 
データをもとに「自社で募集すると、これだけの候補者しかいなく、結果コンバージョン(応募率)も業界平均でこれぐらいです」という話を積極的に行うことです。そうすれば、現場も理解を示し、同じ目線に立って、条件緩和などを検討してくれるようになります。

定期接点をもって、採用要件を変える理解を促進

現場と連携が取れている人事担当者は、現場の部門長らと定期接点を持っています。そこでは、主にダイレクトリクルーティングの候補者選び〜スカウトメールの作成〜反響の共有を実施。
 
思ったような応募がなければ、「今回は返信がなかったですね。今検索をしても、前回の候補者と変わりませんから、要件を広げるか、それとも伝え方を変えますか」といった話をしながら、ターゲットへのアプローチを一緒に体感して、求人票の内容を改善しています。このように採用活動を一緒にやりながら、現場の部門長などに採用の相場観を持ってもらうのが、関係を深める効果的な手法の1つです。
 
また、定期接点の場などにエージェントのCAを招いて、求職者の生の声を届けて、現場側の認識を変えるような取り組みを行っている企業もあります。

入社理由や内定辞退の理由をストックして利用

内定の辞退理由や入社理由も、有用な情報です。求人要件の変更の際にも活用できるため、企業によっては、それらの情報を定期的に蓄積しています。内定辞退理由の情報は、他社に入社されたタイミングに、辞退者へ連絡をして、「当時は、どんな理由で辞退されたのか」などをヒアリングします。一方、入社理由は中途入社者に時間をもらって、アンケートや面談で、事細かくヒアリングを行います。
 
採用領域は、定量情報だけで課題を解決できるほどN数があるわけではありません。それゆえ、N1の定性情報の効果は極めて高いです。特に内定辞退の理由は、現場にとっても知りたい情報なので、求人要件の緩和や、職場環境の見直しなど、いろんなシーンで活用できます。それゆえ内定の辞退理由や、入社理由などの定性情報のストックはおすすめです。
 
さらに可能なら、中途入社者の「前職」情報もヒアリングしておきましょう。リファラル採用では、前職でのつながりを活用すれば、迅速にアプローチできるので、社内の有用な資源になります。

さいごに

求人票の見直しなどの際には、他社事例などの知見があり、職種やマーケットに熟知したエージェント(RA)やプロのリクルーターなどの第三者を使うことで説得力が増し、現場とも同じ目線で意見を交わせて、効率的に進められ、結果的に成果がでやすくなるケースが往々にしてあります。
 
マーケット市場に合った求人票づくりや、現場との調整などのお悩みがあればお気軽にご相談下さい。課題に合わせた解決策をご提示致します。
 

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