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江戸の世に躍り出たメディア王〜『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人』〜【9月実用書チャレンジ8】

今日は別の本を、と思っていたのですが、注文しておいたこの本が届いてしまったので、やはり読んでしまいました!

もうご存じの方も多いと思いますが、来年のNHK大河ドラマの主人公は、この蔦屋重三郎です。

蔦屋重三郎、通称・蔦重は、江戸時代の「版元」でした。「版元? つまり、今の出版社?」と思いますよね、私もそう思っていました。でも違うんです。「版元」とは、出版社兼書店、兼印刷工房みたいな感じで、そのすべてに通じている存在でした。蔦重は、今の世でも名の知られた喜多川歌麿、葛飾北斎に写楽、といった浮世絵師から、『東海道中膝栗毛』を書いた十返舎一九や『里見八犬伝』を書いた曲亭馬琴などの戯作者(作歌)など、多岐に渡ってプロデュースした人物なのです。彼を語るには出版王ぐらいでは足りませんね。まさにメディア王といえるでしょう。

本書を書いたのは、車浮代さん。時代小説家であり、江戸時代の料理と文化を研究している方でもあります。もともとこの方を最初に知ったのは、料理方面からでした。『江戸っ子の食養生』『江戸の食卓に学ぶ』といった本で江戸時代の食の知恵について読んでいたのです。

だから、最初に本を出したのは、この「蔦重」についての小説だった、ということはつい最近まで知りませんでした。

現代人が江戸時代にタイムスリップして、蔦重から仕事の極意を学んでいく、という仕立てのお話です。もちろん、これは小説なので創作ではありますが、実際に蔦重が成し遂げた史実は本当のことが含まれているでしょう。

この話を読んでみて、うっすらと知っていた「蔦屋重三郎」という人物、そして版元の仕事について、明確なイメージを持つことができたように思います。

そして、本書『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人』です。
ふふ、「13人」なんてまるで『鎌倉殿の13人』みたいですね!

蔦重は吉原生まれでけっして恵まれた環境で育った訳ではないのですが、紆余曲折を経て版元へとのし上がっていきます。吉原のガイドブックといえる『吉原細見』にはじまり、浮世絵、春画と絶好調に駆け上がっていきます。才能を発掘し、磨き、売り出し、新しい形の商売を始めたり、と辣腕ぶりを発揮するのです。マーケティングセンス、というか時代の流れをつかむことのできる人だったのでしょうね。

しかし、それもつかの間、老中・田沼意次の失脚があり、時代が松平定信の寛政の改革へと移り、遊俠引き締めの時代になると苦境に立たされて行きます。小説『蔦重の教え』ではそこは詳しく書いてなかったので、小説を読んだ私は「うう、大変だったな、蔦重」と共感してしまいました。昔、学校で教科書で日本史を学んでいたときは、「田沼=金権政治、松平=清廉潔白な精治」としか分かっていなかったのですが、こりゃどっちがいい悪いという話ではないな、と認識を改めました。

そして本の後半は、蔦重と一緒に江戸文化を創った13人がそれぞれ描かれています。喜多川歌麿、葛飾北斎、といったビッグネームは分かるけど、勝川春章とか、山東京伝とかなるともう分からない。でも蔦重と同じ時代に生き、絵師として、戯作者として、狂歌師として、蔦重と深くかかわってきた人たちのようです。

大河ドラマの予習だけではもったいない!
ほんの二百数十年前の日本のことですもの、知っていて損はない。そう思います。

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