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アパホテルがルームキー回収装置の特許を取得

アパホテルが「エクスプレスチェックアウトシステム」を導入しており、この特許を取得しました。

「ルームキー回収ボックス及びこれを用いたチェックアウトシステム」(特許第7430491号)です。

J-PlatPat(特許庁、INPIT)よりダウンロード
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

チェックアウト時はフロントが混雑します。アパホテルは「1秒のチェックアウト」を推進しており、利用客がルームキーを回収ボックスに投入することにより、チェックアウトができます(ただし、これはチェックアウト時の精算が必要ない場合の発明です)。

またチェックアウトにより、次の宿泊客のために部屋の清掃が必要になります。迅速に清掃できるように、チェックアウトした部屋情報がホテル側に知らされます。

この発明には次の4つの特徴があります。

  1.  精算を必要としない場合のルームキー回収ボックス

  2.  回収したルームキーに基づいて部屋情報を取得し、ホテルのフロント業務装置に出力する

  3.  利用者の接近をセンサが検知、発光する

  4. 「キーの回収と部屋番号取得」という簡易な構成であり、任意の場所に設置できる

  5.  読み取りが正常に行われた場合、正常に行われなかった場合、(差し込まれたルームキーを案内する)案内路におけるルームキーの移動により読取音を発する

「チェックアウト時のキー回収装置って前からあるんじゃないの? 」という印象を持つ方も多いでしょう。確かにこの特許も先行文献を2つ組み合わせて、「進歩性なし」との判断が下っています。
しかし、これらの先行文献は、チェックアウト時の精算装置です。アパホテルのこの発明は、精算を必要としない場合のルームキー回収装置です。

引用発明は、精算装置と回収装置を一体化しています。しかしアパホテルのこの発明は、精算が必要な場合に利用されるものではありません。
また、上記「3」の特徴についてですが、引用文献1にも点滅装置はありますが、利用者が装置の前面に立った場合に初めて点滅するものであり、利用者の接近を検知して発光するものではありません。
 
従来から存在する複数の技術の隙間を狙い、その隙間に必要な構成(発光部、読取り音発生の音声発生装置など)を付け加えることにより特許されたのが、この発明です。今後も全国チェーンで設置されるとのことで、アパホテルを利用するときは、精算を必要としない利用を行って、この装置により簡易にチェックアウトを済ませたいものです。

コンビニの発達で部屋の飲料を利用しないお客さんが増えており、このアパホテルの装置はますます利用されると予想されます。

参考サイトhttps://news.yahoo.co.jp/articles/29a49dc5a172dc6e25a1d2dbb4c39227e9d6dd61

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。