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麹町中学校の工藤校長の教育理念に基づく「家庭で探究学習」の試みーメルケル首相の国民向けメッセージを使って

私は、工藤校長(この3月で定年退任されたので、正確には前校長)のされた改革が、心の底からスカッとするので、一昨年前に大ファンになった。

ファンと言っても、私も教育学(それも学校教育学専攻)も学び、中学校ではないものの、長年、教壇に立ってきた人間である。単に、外からみてカッコいい、と思ったファンというだけではない。

昨年度の2月下旬にオンラインで開催された、この中学の実践報告会を拝聴した2日後に note「君の家や学校も「区立麹町中学校」にしよう」という記事を書いた(ご興味のある方は、私の記事から探してみてください)。

この記事は、感謝の報告として案内を知ったFBの工藤先生のウオールに、リンクを貼って報告したら、読んでくださり「超いいね!」をつけていただいた。義理で頂いたとしても嬉しいものである。

そんな私だが、あるきっかけで、なんと麹町中学の現役の中学生の教育相談を受け、引き続き、総合的に勉強を見る機会が与えられた。

実際にやっっていることの例

そのあたりを下のnoteの記事に書いた。基本的に探究学習の進め方をベースに、中学生が学校で学ぶ範囲のものは、それを先取り学習あるいは復習しながらの進め方なのだが、探究テーマは、彼の個人的な興味に合わせるスタイルとしている。

本人起点のテーマについては、プライバシーもあるので、ここで詳細はかけない。ただし、それ以外の全国民が、今なら誰でも取り組むべきであることも、探究課題にしてみることにした。そこで、今日は、そのあたりを書きたい。

きっかけ

 それは工藤先生のFacebookを通したメッセージを発見したことによる。


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スマホで読まれている方には、字が小さくて読みにくいかも知れませんので、下記に、打ち直します。
「凄いスピーチです! 平和で民主的な社会はすべての人々を当事者にすることでこそ実現できること、そして、それを推し進めいくために必要なリーダーのあるべき姿を教えてくれます。これからの自らの歩み方、改めて考えさせられます。」

「すべての人々を当事者にする」、「リーダーのあるべき姿」という言葉が、工藤前校長は、自分と同じリーダーとしての側面に着問されたようだが、さて、このメッセージを、どう中学生に届けるか。

学校の教育理念と具体的な方法


彼は今年で新中2なので、工藤先生が校長をされていた期間に1年間学んだわけだが、先生の教えを宝物のようにして心に残している生徒である。

そのため、「先生が言われていたので、読んだら」と言えば、素直に反応してくれるだろう。しかし、それでは、あたかも先生をカリスマのように崇めて従う、ということになってしまい、それこそ工藤先生の好まれる方法ではないだろうと考えた。

そこで、まず彼が在籍する学校の理念や教育方針を探し、それに沿って見ることにし、その上で、彼が自分の関心を見つけ出す、という手順をとることとした、まずは、今年度以後も続く、学校の教育方針をネットで探したら、さっそく下記が見つかった。

進取の気性

ここには、理念とともに各科目の具体的な進め方も記載されていた。読まれる方は、写真の下の「タイトル未設定」をクリックいただくとリンク先に飛ぶので、今、すぐ見れますし、印刷してじっくりご覧になりたい方は、さらにその下に緑色で「ダウンロード」とあるものをクリックされると、PDFファイルで読めます。

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教材化の方法

読み進めると、「目指す生徒像」というのがすぐに出てくる。そして、

1言語や情報を使いこなす能力
❶ 様々な場面で言葉や技能を使いこなす
❷ 信頼できる知識や情報を収集し、有効に活用する

というものが最初に掲げられていた。そのため、ネットから得られる生の知識や情報を使うことは、理念に沿っていることがわかった。また、「言語を使いこなす」とあるので、日本語はもちろん、できれば、ほんの少しでも生の外国語にも触れてみることも大事だと考えた。

1)まずは日本語で

 日本語で全文を読んでもらうことにした。下記のサイトをクリックすれば、すぐに読んでもらえます。

 課題として生徒に提案したことは、

・まず全文を読んで見る。

・その中で、感動したところ、自分の生活で実践できると思ったところを選んで、ラインマーカーを引く。

・できれば、家族の一人ひとりも読んでもらって、気に入ったところをインタビュー形式で教えてもらう。

というものである。「家族にも」というのは、まずは誰にも読んでもらいたいということと、続いて、「人によって関心を持つところが異なること」を知ることや、見解が違えば家族の間でディスカッションをする機会を作ること、さらに、多少、意見は異なっても、大事な点の認識を共有していつでも協力できる体制をつくること、などを意図したものである。

これは、工藤前校長が、「最上位の目的」を考えることとともに大事だとされている「「合意形成」のプロセスにも通じる。

私は、メルケル首相の記事を、「スーパーで勤務されていて、日頃は感謝されていないが、こんな(外出禁止の中でも)働いてくださっていることに感謝をしましょう」というフレーズとともに、メルケル首相が、地元のスーパーでSPをつけずに一人で買い物をされている姿の写真が添えられた記事

で知った。その側面に、まず心を動かされていた。そのことも、彼には伝えた。

2)次は生のドイツ語で

日本語の翻訳を読むと、あたかもその通りに発言された錯覚に陥るが、もちろん肉声ではない。やはり本物にふれることが大事だ。メルケルさんの声のトーンから、感じるものがあるはずだ。これも、「進取の気性」の

1言語や情報を使いこなす能力
❶ 様々な場面で言葉や技能を使いこなす

に対応するはずだと考え、youtubeで対応する演説を探した。

あった! そして、翌日のセッションのために、私自身が何度も聞いた。冒頭など覚えてしまうほど。大学での第二外国語はドイツ語で、大学院の試験でもドイツ語を選んだが、もうすっかり忘れて、理解できない。

 中学生なら、全くわからないはずだ。でも、ドイツ語云々というよりも、やはり生の響きに音としてふれると、特に、今は、悲壮な状況を伝える切迫感ともに、あえてそこで冷静に振る舞おうとしている声、また表情など、速度なども感じてもらえるだろう。(読者の皆様のぜひ上をクリックください)。

中2の彼への課題として、「日本語で感動したところから、さらに1文だけでいいから選び出し、それを覚えるまで、何度も音読してみれば」と提案した。

これは、「進取の気性」の中に

◆暗唱コンテストで
 表現力の基礎を身につける
国語科と英語科において、各年1回、3年間で計6回の暗唱コンテストを行い、思考力の基礎となる語彙、表現力の基礎となるリズム感などを身につけます。わかるまで努力する力と努力すればできるという自信を得ることができます。

という部分にも対応するはずだと考えてのことである。

最初は、「ええー。出来ますかね」と動揺していたが、

「今、習い事をしている集まりに、日本語が堪能なドイツ人の方がおられるから、助けてもらえるかも知れません。なんか僕、ラッキーな環境にいるかも」

と、だんだんとその気になってきてくれた。

3)最後は英語で

 中学生だから、一応、英語の勉強にも使えないかと、英語の字幕があるものを探しておいたい。そして、これを紹介しつつ、ちょっと英語の勉強もしてみようと流した。

時々、止めて、英語の字幕を音読してもらったら、1年間しか英語を習っていないはずなのに、意外に読めたのには、驚いた。

でも、Virusとvaccineが入った一文で、これらの読み方がわからない。ヒントを出したのに、なかなか思いつかないようだ。

そこで、それぞれ「ウイルス」と「ワクチン」だよ、と伝えたら、新鮮な驚きを感じたようだ。これは、和製英語のカタカナ表記の弊害だろう。このあたりは、一般的な英語教材なら、体験できないことだ。これが、英語の勉強に関心をもってくることにつながればいいのだが・・・。

英語の勉強にドイツ語が生きる?

 すこしドイツ語に関心を示してくれたようなので、

「ドイツ語の勉強、少しする?」とふってみた。「でも、周りからは、

「あなた、英語もロクにできないのに、何がドイツ語よ。そんな暇があったら、英語に専念しなさい!」

って言われるかもね」とも付け足した。

もちろん、マスターするためではない。ただ、

「ドイツ語を少し学べば、英語の文法がラクだと思えるし、似ている単語もかなりあるよ。それに、「ドイツ語が出来て英語が出来ないならおかしいから」と英語の勉強もするようになるかもよ。」

と、彼には、さらに畳み掛けた。彼の興味次第だが、私の知り合いで、多国語を学ぶ人は、こんな感じで複数の外国語を同時に得意になっていったのを聞いていたからだ。

セッションが終わってから、前日に探しておいた下記のサイトのURLを送っておいた。さて、明日のセッションでは、これの感想、聞けるだろうか。

社会の「公民」の勉強

 言語を学ぶのは、その国の文化や歴史、政治などを学ぶことにも通じる。今回、新型コロナの対策では、ドイツは、死亡率の低さ、PCR検査の徹底、さらに抗体の獲得の有無の検査の開始検討など、世界をリードしている。単に首相の演説が素晴らしいだけではなく、各方面の専門家が遺憾なく力を発揮している。

彼にはそれを感じてもらいたかったので、無理な課題を提案してみたのである。また、彼に、そういうことを話すと、「僕の趣味みたいなものですが、第一次、第二次世界大戦のドイツに関心がある」とのことだった。

そこで、ドイツという国についての理解を深めてもらうべく

「ドイツは、第二次世界大戦のナチスが犯した罪のことを、きちんと反省し、そこから学ぼうとした姿勢があるから、おそらくそんな歴史的な背景が、メルケル首相の演説にもつながったのだとと先生は考えるよ」

として、ヴァイツゼッカー大統領の有名な演説のことを話しておいた。

でも、その場では、事前に用意していなかったので、後からメールでこのリンクを送っておいた。これは、私が大学院を受験する際に、ちょうと前年ぐらいにされたもので、NHKのドイツ語講座でも、何回かに分けて、教材に取り入れられたこともあり、思い出の演説である。


ただ、ドイツにおける首相と大統領の関係が、私自身、いまいちわからなかかったので、自分のためにあとで調べて、参考になったサイトのURLを彼に送っておいた。

 ちょっと専門的過ぎないかな、と後から調べたら、世界史は高校だが、このあたりは、中3の公民で習うようだ。

 明日、彼との次のセッションがある。あれこれと課題を出したが、あくまで提案であり、そこから何を選んで取り組むかは、彼が決めること。だから選択肢として、あれこれ提示しているつもりだ。

 明日が楽しみだ。

大人もこのメッセージを改めて読んで(聴いて)みましょう

探求学習のための生きた教材として使うことにしたおかげで、私自身も、改めて、かつ丁寧に見直すことが出来た。こういうものは、単なる情報と異なり、さらっと1回、読めば終わり、というものではない。

もともとはドイツ国民のための発されたメッセージであるが、日本や諸外国でも、内容に感動し、励まされたという感想が、今もSNSで流れている。おそらく、歴史に残る演説になるのだろう。

そこで、これをお読みいただいた皆さまも、この記事を読まれた後、上に戻って頂いて、日本語で読まれ、できればドイツ語で聴いてみてください。引きこもり生活が続きますが、全世界の人と同じ課題に対して、連帯しているのだ、という気持ち、また具体的な生活上の指針も、きっと得られると思います。

仲間の募集中(若干名)

探求学習として、こんな感じで進めているが、今は生徒と先生が1対1の良さが活きているが、やはり同じ中学生同士で、学年は違っても、発見したことや自分なりの考えを、教え合い、疑問をぶつけ合う仲間がいた方がいい。

そこで、彼にも、そのあたりを聞いたら、すこしはいた方がいいとの考えだったので、若干名を探すことにした。


生徒の「自分起点」だから、内容はもちろん、進め方も、参加者によって変わることも多いにあります。その仲間になってみたいと思われた方、あるいは「あの人のお子さんは確か、中学生で、こんな感じなら、参加したいと言うのでは」というお知り合いがおられたら、案内をしてみてください。

 決して、今、勉強が好きでなくても、いや、好きではないお子さんの方が、やりがいがあるので、条件は、やる気だけです。(家にネット環境がある、などの物理的な条件は必要ですが)。

この後、彼の探究がどうなっていったかは、また随時、報告させていただきます。