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振り返りは根性では続かない。仕組みで解決しよう。

振り返り、大事ですよね。

言われた通りやってもうまくいかない難しい仕事が増えています。ベンチャーやスタートアップであればタスクが終わったら、またすぐ次のタスク。「なんとなくうまくいった」「気づいたらずっと仕事をしている」「漠然と将来に対しての不安が膨らんできた」と、どんどん気持ちが落ち込んでいく人が増えてきているように思います。

「やるべきことを横に置いて、10分で良いから振り返った方が良い」

重要だと頭ではわかっていても、ついつい後回しにしちゃうのが振り返りではないでしょうか。私の所属している組織も例外ではなく、仕事量に溺れて振り返りをしなくなり、最悪休職まで行ってしまう同僚がいました。

今回の記事では、新卒一年目に振り返りの習慣をつけさせてきた私が「振り返りを続けるコツ」についてお話をしようと思います。

振り返りは継続がとても難しい

解決したい問題があったときに最初にすること、それは分析です。問題を発生させている原因が見つかれば、取り除けば良い。これで課題は解決します。

振り返りにおいても「なんで継続できないのか」を考えてみます。まとめとしては「継続がとても難しい」になるのですが、これでは原因を取り除くことができません。

私は大きな原因が3つあると考えています。

理由1. 「やった方が絶対いいじゃん」と腹落ちするまでが遠い

一番むずかしい理由です。これが振り返りをダイエットよりも難しくさせています。

振り返りの目的は「次回はもっとうまくやりたい」がほとんど。つまり「振り返った後はうまくやれた」経験をして初めて「やったほうが絶対いいじゃん」と感じられます。

これが遠い。ステップにしてみました。
 1. やってみた
 2. 振り返りをした
 3. 改善案が見つかった
 4. また、やってみた
 5. よくなったのを感じた
価値を感じるまでがちょっと長くないでしょうか?

また大抵の場合は、社内に「同じことをやったことがある人」がいます。その人にやり方を聞けば「次回うまくやる」どころか「初回からうまくやる」が可能です。こんな環境であれば振り返りをする価値が下がります。

「本当に必要なの?」と聞かれてもおかしくはないのが振り返りと言えます。

理由2. 振り返りが必要なときこそ忙しい

振り返りは「うまくいくかわからない中で、やってみた」ときにとても価値がある活動です。
・新しいことに取り組むとき
・試行錯誤をいっぱいしたとき
・失敗したとき
こういうときが振り返りをすべきタイミングです。

でもそのタイミングに振り返りをする余裕は、あなたにはないでしょう。新しいことに挑戦しているあなたはきっと忙しい。入ったばかりの人であれば、キャッチアップで忙しい。新しいことに挑戦している人はきっと優秀で、仕事が集まってきて忙しい。誰もが絶対忙しいはずです。

忙しさが落ち着いてきたらどうでしょうか?きっとやる必要がなくなります。ちょっと前に苦労したことが今は難なくこなせたり、新しい課題が見つかって過去やったことへの興味は一気に薄れます。

忙しいときこそ振り返りをすべきなのに、されないのが当たり前なのです。

理由3. 上手に振り返りをするためには技術も知識も必要

振り返りどうやってやっていますか?

とりあえずやったことを書き出す?失敗したことを反省する?
自分流で振り返りをしている人が多いと思います。

しかし、自分流では時間だけが消えて、効果が薄いです。

振り返りでは、以下のように進めるのが一般的です。
 1. 当時の行動を正しく思い出して、
 2. 行動の良し悪しを判断して
 3. 改善策を出して、
 4. 改善策が行えるように、準備をしておく
でもこの「2. 良し悪し判断する」「3. 改善策を出す」が非常に難しいんです。

良し悪し判断は経験者じゃないと難しいです。比較をしなければ良し悪しの判断はできない。だから、社会人なりたてだと振り返りが空回りするし、新しい領域にチャレンジしたときも比較対象がなくて良し悪し判断ができず振り返りが機能しません。

改善策も同様です。良し悪し判断と同じように「振り返りが必要な人自身が考える」のは非常に難しいと言えます。

やり方も体系化されておらず、一人でやらされるのに、それでは価値が出にくいのが振り返りなのです。

「継続できなくて当たり前」として仕組みを考えよう

「継続できない原因」をまとめると以下です。
 ・振り返りは良さを感じるまでに時間がかかる
 ・振り返るべきタイミングに振り返りの時間が取れない
 ・初心者が一人で振り返りをするのがそもそも難しい

これらを踏まえて、私は「振り返りするぞ!」という意志だけでは継続できなくて当たり前と考えています。後輩に対しても「ちゃんと振り返りやってきてよ」という言い方はしません。だってこれでは、私に指摘されて辛いだけだから。

だから、意志に関係なく「振り返りを自然と続けられる仕組み」を用意しましょう。私がよくやる比較的簡単にできる4つの施策を紹介します。

1. 振り返りを誰かに聞いてもらおう。深掘りしてもらおう

振り返りは誰のためにやるか。基本は自分のため、正しく言語化すると「将来の自分のため」でしょう。

でも「今じゃなくて、将来の自分のための施策」は続きません。人間は今の感情に大きく影響を受けるので、眠たい、酒を飲みたいという気持ちに負けてしまいます。日記って毎日書けないですよね。

だから、人を巻き込みましょう。「今の目の前にいる人の質問に真摯に答える」の方が続きます。自分に興味を持ってくれている人であれば、あなたの苦労した話や失敗した話をうんうん聞いてくれるはず。人を巻き込んでその人に「先生、あのね…」と話しかけるように振り返りましょう。

また、「比較を通して、自分の行動の良し悪しを判断する」ためにも、他人を巻き込むのは大事です。「なんでこうしたの?(私だったら違う手段を取る)」と問いかけてもらうことで「自分と他人が違うんだ。どっちがいいんだろう?」と考えることができます。

意見を言ってもらうのもGoodです。体験談(私は近しいシーンで**という理由でこうした)を教えてもらえれば2倍のスピードで経験が溜まり、早々に初心者を脱出できます。

私は「メンバー全員参加の振り返り」を定例予定に組み込むようにしています。一人が振り返りを発表して他のみんなでいっぱい質問をする。これを繰り返すことで振り返りが定着するだけではなく、ナレッジシェアも進みます。

2.上手な人に助けてもらおう

質問/深掘りをしてもらうとして、それを誰にやってもらうか?はとても重要です。

大抵の人は「失敗から学ぶ」しかしません。でもこれでは振り返りの効果が十分発揮されません。

振り返りが上手な人は失敗だけじゃなく成功からも学びます。初めてのことでも、自分の苦手なジャンルでも、突き詰めると日常の些細な出来事からも学びます。

振り返りとは「経験してきたことから学ぶ時間」のはず。振り返りが上手な人に問いかけてもらうと、「こう振り返るといいのか」を知るだけではなく、「学ぶって楽しいな。学べるから何やっても楽しいな」とどんどんマインドセットが変わってきます。

あなたの周囲に振り返りが上手な人がいるならば、短期間でいいので、高いお金を払ってでも手伝ってもらうのを強くお勧めします。

3.忙しいときこそ、振り返りの時間を多く確保しよう

忙しいの解像度を上げて2つ書いてみました。
 ・新しいことをやっていて、時間がかかっている
 ・純粋にやることが多い

新しいことをやっているならば、いっぱい学びを得ているはずです。かけた時間に比例して振り返りの時間も取るべき。頻度も高くしましょう

純粋にやることが多いとき、タスクを終わらせることに意識が向いて、やったことや試行錯誤したことを忘れがちです。忙しくてもメモをとっておかないと全部忘れちゃってもったいないです。頻度高く振り返りましょう。

4.上長命令/有償メンターで強制力を持たせよう

たとえ振り返りを予定を立てて、みんなで集まってやっていたとしても、忙しくなるときっとスキップされます。

締め切りが近いタスクがたくさんある中で、「自分達のためにやっている」「一見するとタスクをサボっているとも思いがちな時間」である振り返りを優先させられる人はレアです。

また複数人で振り返りしている場合、同期や同月入社のスタートラインが同じ人同士で実施されることが多いため、予定を欠席したりスキップさせることへの心理抵抗が小さいことが多いです。

振り返りがスキップされるのを防ぐために強制力を持たせましょう。具体的には、上司にも振り返りに同席してもらったり、お金を払ってメンターをつけたりしましょう。「この人の時間をもらっているから、スキップできない…ちゃんとしなきゃ…」と思えるようになったら振り返りはスキップされません。

いつも時間をもらうのは申し訳ないという場合は「スキップされ出したら、参加してもらう」がお勧めです。特に上司の場合、ふりかえりする余裕もないときこそ、部下の状況を把握して、プロジェクトマネジメントに活かしたいはずなので、ちゃんと理由を説明すれば来てくれるはず。お願いしてみましょう。

【まとめ】他人を巻き込むことで振り返りを継続させよう

長くなりましたが「振り返りを継続できない理由と、継続させるためのコツ」をお話してきました。

一般的には、振り返りは一人でやるもので、成長も自己責任であることが多いかと思います。

しかし私の意見は違います。組織として大事なのはチームの出力のはず。相互に助け合う形の方が一人でやるよりも長続きしやすく、何よりみんなで取り組んだ結果、いい習慣が風土となってチームのパワーを底上げしてくれます。

今回の記事をきっかけに「振り返りはみんなでわいわいやろう」という組織が増えるととても嬉しいです。

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