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米国”内戦”の予兆⁉ テキサス州兵が連邦国境警備隊のメキシコ国境地区への立ち入りを実力阻止~不法入国者めぐり民主党政権vs共和党の紛争が激化


【画像① トランプ政権期から作られた米=メキシコ国境を隔てる大型フェンスの隙間から顔を出している米への”亡命”希望者たち。不法入国者の増大が米社会の治安悪化や福祉サービス負担の増加につながることから厳しい取り締まりを求める共和党と”人権尊重”の立場から”緩やかな規制”による入国希望者受け入れを進める民主党バイデン政権との間の摩擦は、共和党知事をいただくテキサス州を軸に火の手をあげて燃え上がるような状況に至りつつある。】



◆不法入国者をバスでニューヨークに送りつけるテキサス州知事


昨年からテキサス州とニューヨーク市の間で不法移民の扱いをめぐり、いさかいが生じている。メキシコとの国境地帯をかかえるテキサス州は、バイデン政権が進める”亡命”希望者(とほとんどが自称する不法移民)の国境超えについて、州兵(National Gard)による独自取り締まりを実施。また国境を通じての入出境管理を行う連邦政府(合衆国)の国境警備隊が入境を認め州内の一時収容施設に入れた不法入国者について、バスに乗せてニューヨーク市に送り込む措置をとってきた。


「亡命希望」名目の不法移民は、入境後に亡命承認までかかる約半年間は就労できず、各州政府などの福祉政策に基づく生活保護を受給することになっているが、バイデン政権成立後に激増した不法移民によりテキサス州は大きな財政負担を強いられることでバイデン政権に対して強く反発している。テキサス州知事は、共和党のグレッグ・アボット氏で、トランプ前大統領とも特に親しい政治家である。




【画像② 「車椅子の州知事」としても知られるテキサス州知事のグレッグ・アボット氏は、バイデン政権の不法移民”寛容”策に反発し、州兵を出動させた独自の不法入国取り締まりと州内収容施設の不法移民をニューヨーク市、シカゴ市、デンバー市にバスで移送するという強硬策を展開してきた。この3市はいずれも民主党市長の都市である。また、この度はとうとう国境地帯への連邦政府側の国境警備要員の立ち入りを州兵による実力措置で阻止することまで行っている。】



一方、ニューヨーク市長は民主党のエリック・アダムス氏。もともと移民に寛容な街として知られるニューヨークであるが、2021年11月の選挙で市長に当選したアダムス氏は警察官出身の黒人政治家だ。しかし、そのアダムス氏も激増している上にテキサス州から強引に送り込まれる不法移民に市政の脅威を感じ、昨年9月には「移民の流入が街を破壊しかねない」とのホンネを市民との対話集会でもらしてしまったという。


そして、苦肉の策として少しでもテキサス州からの移民移動を阻止したい意図で、アダムズ市長は昨年12月27日に他州から移民を乗車させてニューヨーク市に入るチャーターバスの会社に対して到着前32時間までの市への通知ならびに市に到着して移民を降車させる時間を限定すること(午前8時30分~正午)を行政命令として発した。


「同市長は出演したテレビ番組で『先週は1日に14台のバスが到着した。1週間に4,000人近くが流入していることを考えると、移民や亡命希望者だけでなく、NY市民にも負担がかかっている』と発言した。NY市に到着した難民は16万1,000人を超えた…」


(参考)「米墨、不法移民問題に関する共同声明を発表、アダムスNY市長は移民バスの報告を義務付け (米国、メキシコ)」2024/1/5 JETRO(日本貿易振興機構)公式サイト「ビジネス短信」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/01/5c4123893e5189bf.html




【画像③ 昨年9月6日、市民との対話集会でニューヨーク市長、エリック・アダムス氏(民主党)は、「移民の流入がニューヨークの街を破壊する」という趣旨の発言をし、移民受け入れの寛容政策を支持する民主党サポーターにショックを広げたが、”共和党州”(テキサス、その他共和党知事の州)からどんどん送られる不法移民で市の受け入れキャパはとっくに飽和状態だ。この集会の様子はニューヨーク市のYouTube公式アカウントから配信された。】


アダムス市長はそれにとどまらず、テキサス州からニューヨーク市に移民を移送してきたバス会社17社を提訴した。



「米ニューヨーク市は(1月)4日、テキサス州から約3万3000人以上の移民を同市に運んだとしてバス会社17社を提訴した。…過去2年間の移民の受け入れにかかった約7億800万ドルの支払を求めている。…ニューヨーク市はテキサス州と契約して移民を輸送した17の貸切バス会社を挙げており、そのほとんどがテキサス州を拠点としている」


「同市は、政府援助を必要とする可能性の高い生活困窮者の輸送に伴う費用は輸送主体が負担するというニューヨークの法律に違反すると主張している」


「テキサス州のアボット知事(共和党)は急増する移民へのバイデン政権の対応を批判し、不法移民の取り締まりを強化している。…同知事は、ニューヨーク市の訴訟は根拠がないとし、移民は国内を移動する憲法上の権利があると主張している」


(参考)「ニューヨーク市、テキサス州からの移民輸送でバス会社提訴」2024/1/5

ダニエル・ウィースナー REUTERS(日本語版)

https://jp.reuters.com/world/us/PPOMBRLHQRNBHGCWRLUORKKQCE-2024-01-05/



【画像④ テキサス州からニューヨーク市に移送され、バスから降りる移民の人々。】



アボット知事の対移民強硬策には他の共和党知事からの支援も集まっている。オクラホマ州のケビン・スティット知事(共和党)は、テキサス州が州兵を投入した不法越境取り締まりのための独自作戦を展開し始めた昨年5月に、オクラホマ州兵50名を応援部隊として送り込んでいる。地域の防衛と治安維持を任務とする州兵を、事実上連邦政府の措置に対抗する形で運用するというのは、一種の”軍事反乱”に近い強硬なやり方だが、反発するテキサスを含む南部諸州では、移民の一時収容施設も飽和状態となり臨時に作ったテント村のような収容区も衛生状態が劣悪になっているという。政治的主張を超え、もう物理的に限界という背景もあるのだ。



「アメリカ国内の大都市では亡命希望の移民が急増し社会問題になっているが、そんな今も、アメリカへの入国を試みるためメキシコとの国境を北上する移民の数は増え続けている。…そのような移民キャラバンはバイデン政権下の2021年以降急増しており、月ごとの数は20万人超。昨年(2022年)は1年間で221万人がメキシコとの国境から不法入国した。今年(2023年)は現段階(11月初め)ですでに205万人を超えるなど、2年連続で200万人超えとなっている」


(参考)「中南米からの不法移民 今年だけで200万人超。大群に混じり『命がけで北上する中国人』も急増」2023/11/3 安部かすみ Y!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7dbf693d3a96a61c91ffe1a99509870c86001aba


結局のところ、民主党バイデン政権の無能ぶりが露呈されたということなのだが、本来、国境管理は連邦政府に属するものであり、入国者をテキサス州が勝手に取り締まり移民を民主党市長のニューヨーク市に移送するという措置を放っておくことは出来ない。そこで、事態の収拾に乗りだしたところ、テキサス州は連邦政府の動きに抵抗するのに、州兵による実力措置を使ったのだ。




【画像⑤ 政権発足以来、不法移民のメキシコ越境による流入が400万人以上となり、米社会の混乱を引き起こした民主党バイデン政権。移民への寛容策をかかげ、「トランプ氏が進めた国境の壁の建設は今後、1メートルも行わない」と言明したバイデン大統領は、結局昨年10月5日に工事を中断させていた「国境の壁」建設の再開で約32キロメートル分の着工を始める決定をした。「トランプ政権の時についた予算を処理するため」との言い訳をしているが…】



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