【読書】アルテミスの涙
筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気を知ってますか? 有名どころで言えば病院の徳洲会の代表であり衆議院議員でもあった徳田虎雄さんでしょうか? 目玉とまぶた以外どこも動かせないが,意識や知識ははっきりしているという感じで,意思の疎通をするには,まばたきでのイエス・ノーの表示とか,慣れてくれば透明のあいうえおボードを視線で追っての会話なども出来る感じ。今でも全国に9000人ほどの患者さんがいらっしゃるらしい。ただこの本では閉じ込め症候群と表現されているが,違う病気なのだろうか?
この小説の主人公は,車の事故(実際にはこれも事実とは違っていた)が原因でALSになってしまった若い女性。当然寝たきりで看護婦や医者との意思の疎通もほぼない状態。そればかりか国会議員の父親やキャリアウーマンの母親もあまり熱心に看病する感じではない。
ところがある体調の変化から医者が検査をしたら,何とこの患者が妊娠している事が判明。全身が不随の患者なので,強姦されたとしか考えられず,病院と警察は犯人探しを始める。なにせ意思が通じないため犯人の特定が難しい。そこで政治家の親が睡眠術師みたいな人を連れてきて,患者を催眠術にかけ,まぶたの動きで犯人を突き止めようとするのに成功する。何と彼女をレイプしたのは,担当医の男性医師だったのだ…。
その場で警察に逮捕されるのだが,その時医師が発した言葉が「これは愛だ」「こんな純愛はあなたたちには一切理解できないだろう」。そして取り調べでも一切しゃべらず黙秘を通す。当然ながら病院には抗議の電話やメールが押し寄せる。そんな中でもお腹の子供は育っているわけで,両親は有無を言わせず処置しようとさせるのだが,担当の産婦人科の女医さんが,自分が考えた方法で患者とコミュニケーションが取れるようになり,わかった事は「患者は,このレイプで出来た子供を産みたがっている」という事。そもそもレイプので出来た子供であるし,それでなくても母親が一生全身不随的な感じで,どうやって子供を育てるというのか…どう考えてもここは…。しかしだんだんと話を聞くうちに,新たな真相がドンシドンわかって来て…。
奇想天外というか,今まで想像もしてなかったような設定の中で,さらにもっとすごいエンディングが待っている。ハッピーエンドではないのだが,こんなストーリーをよく考え付くなぁと感心した。自分の価値観とかまで考え直す機会をくれる本です。
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