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【読書】幻夏



冤罪がテーマの小説。ただ書いたのがあの水谷豊の「相棒」の脚本家なので,普通の小説とはちょっと違う,映像が意識されているのか,テレビ用と小説用は根本的に書き方が違うのか,とにかく伏線をバラまきまくっている感じで,至る所にネタが転がっている。

ストーリーがとても説明しにくい。20年くらい前に行方不明になった自分の息子を探して欲しいという依頼が探偵の所に。その母親には二人の息子がいてそのうちの一人が行方不明,もう一人は家を出てたまに連絡はくれるが顔は合わせていない。お父さんは殺人で有罪が確定し刑期を務めあげて出所した前後に冤罪という事がわかった…という悲しい経歴の持ち主で,しかも出所してすぐに階段で足滑らしたみたいな形で死んでしまう。

この依頼された探偵には,部下として使っている若者と,偶然ながらその消えた子供と同級生で親友だった警官がいて,この3人で事件を解決していくのだが…。

あのテレビの相棒が今までのドラマとは違う視点で事件が起こりそれを解決していくのだが,この小説も思ってもいないような事がどんどん起こり結果的に解決する。ただどうもハッピーエンドではないのでスッキリしないし,そもそもテーマが冤罪なので,この握りしめたこぶしはどこに下ろせばいいのだ~という消化不良で読み終わる。プラス自分の親を殺してしまったとか,弟を殺してしまったとか,母親は全てを認識する前に病死するとか,結局誰も救われず…。

しかも,この幻夏は連続もので,最初に同じ作家の「犯罪者」という小説を読んでおかないと,今回の登場人物の背景がわからない…という問題もあり,とても面白くはあったのだが,スッキリしない小説であった。この作者は少し左の立ち位置の様な気がします。反権力。


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