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情シスは神か魔法使い

 こんにちは、すけです。この度は本ページをご覧頂きまして誠にありがとうございます。
 ぶっちゃけタイトル、なんだこれという感じですよね。これは以前勤めていた会社の同期から言われた言葉ですが、これと同じような類の言葉は他にも何度も言われております。
 従って自分の経験則からではありますが、これは情シス(事業会社のIT部門)の方が他部署の方から持たれやすいの誤解の一つと思いますので、今回はそれを解いていきたいと思います。現職で情シスの現場は2箇所目ですが、100人以上の関係者と接してきてほぼ全員口を揃えて証言していますので、どこの現場もそうなのだろうという前提です。もしかしたら自分自身を擁護していると思われるかもしれませんが、情シス以外の部署の業務経験もあるので、なるべく客観的にこの辺の意見を綴っていきたいと思います。特に会社勤めの方、これから社会人となられる方はご参考頂ければ幸いです。

 結論から言うと、それは以下の二つの事象と誤解の発生頻度が極めて高いということです。もちろん、それぞれ回答はNOです。

1:「パソコンのことなら何でもわかるんだろ?」と言われやすい、またはそのように思われやすい。
2:「ITにかかれば何でもできるんだろ?」と
言われやすい、またはそのように思われやすい。

 では、1:「パソコンのことなら何でもわかるんだろ?」のくだりからいきましょう。ここでいうパソコンとは以下の項目を指します。

・Word、Excel、Powerpoint等のofficeツール
・メールアプリの設定や送受信等のトラブル
・社内で利用しているシステム全般
・パソコンその物の動作全般
・モニターやマウス等の周辺機器の動作全般
・そもそもパソコンでないプリンター等のオフィス機器の動作全般

 要は機械系全部のことを指します。機械のことであれば何でもできる、または他の人よりは理解が早いと思われるようです。人にもよりますが、情シスでもExcelをほぼ使用しない人だっていますし、現場の人でもプリンターにやたら詳しい人もいます。言語と同じように、普段使用していなかったら使用している人よりも能力が劣るのは想像するに難くないと思います。自分はこの「パソコンのことなら何でもわかるんだろ?」という問いに対する回答は、だいたい「パソコンのこと何でもわかるなら、そもそもこの会社いないから」がセオリーとなっています。銀行員というだけでお金のことは何でもわかるんですよね?バーテンダーというだけでお酒のことは何でもわかるんですよね?と聞いているのと同義です。そもそもここでいう「お金」とか「お酒」がどこまでの範囲を指すのかが謎ですが、上記の「パソコン」でも同じようなことが起こっていまして、本当に漠然と捉えている全知全能の神のように思ってしまうようです。
 もちろんそれに近い人はいるかもしれませんが、一般企業でそのような存在にはなかなかお目にかかれないでしょう。ただ自分の場合は別途以下の記事でも記載しました通り、ヘルプデスクの経験があるので同期を中心に社内のユーザの立場からしたら、何でも回答してくれる神のように映ったのかもしれません。調べるのは別の人でヘルプデスクはただそれを伝えるだけなのですが。。

 次に2:「ITにかかれば何でもできるんだろ?」のくだりですが、このヒーリングっとプリキュア的な誤解も非常に多いですね。このアニメに非は全くありませんが、何もないところからいきなり変身できますよね?何も専門的な訓練や教育を受けていない若い女の子達数人だけで宇宙に行けますよね?といった幻想を信じているのと同義にしか聞こえないというのが正直なところです。(ちなみにこのアニメは自分の上の娘が大好きで、よく一緒に見ています)

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 極端な例でしたが、昨今のITの進歩を見るとまあわからなくもない話です。総務省のデータによれば、自分が就職した約10年前の日本のスマホ普及率は約10%でしたが、今ではもう80%です。SNSもそれに伴って普及し、それ以外のゲームやアプリもスマホがあれば基本何だって、物によっては無料でサービスを享受できる時代になりました。今をときめくYouTubeやTwitterも基本無料で年代問わず自己表現やマネタイズも可能で、学校や会社に行かずとも巨万を稼いでいる人もいるくらいです。一見魔法のように見えてしまいますね。
 ただ、それでITにかかれば何でもできるというのはかなり強引な話です。なぜなら一般企業には納期と予算の制約がどうしても付き纏うからです。どういうことかと言うと、例えば、あらゆるマニュアル業務を自動化できる夢のようなシステムを立ち上げるという企画が出たとしましょう。しかし、「納期は数十年後で、費用は数十億円かかります。」という展開になったら、まず経営陣にその企画は承認されないはずです。確かに大体のことはITで実現可能ですが、それは時間と労力(費用)をそれ相応に投入できればの話です。これができないのであれば、それはもう実現不可能ということになります。長時間薄給で昔でいう奴隷のように人を働かせてしまうと、今では一発でアウトですからね。また、情シスは営業部門と違い直接利益をもたらす存在ではないため、どこかの部署がもたらした利益を食う形で活動します。社員の給与/賞与の確保、株主への配当や世間体を意識した健全な財務等を考慮すると、大多数の企業はコストのかかるシステムの大改修はそう簡単にはできません。従って、システムの機能は必要最低限で、後はマニュアルや気合でカバーするというオペレーションになりがちです。残念ながら全員にとっての都合のいい魔法のような話はないんですね。

 ここまでお読み下されば、情シスは神でも魔法使いでもなく生身の人間であるということはご理解頂けるのではないかと存じます。人間なりに先述した納期や予算、意味不明な社内/部内政治などに振り回されることもしばしばあります。ただ一方で、実際にシステムを利用して業務を行う事務系の人達が苦しんでいる現実があるのもよくわかります。
 私も残業60〜70時間が当たり前の現場にいた際は、情シスにいた時には全く見えなかった現場の必要最低限のシステムの使いづらさを痛感しました。(無論全てシステムが悪いわけではなく、無駄な業務をしているケースも多々ありましたが)障害が起こった時もよく平然と「マニュアルで耐えて下さい」とか言えてたもんだなと最初の情シス時代を猛省したことも覚えています。本当に情シスと現場との間には大きな溝があるというのを実感しました。そもそも神だとか言われる時点で、良くも悪くも異質な存在みたいに思われているのは否めないでしょう。何やっているのかわからない、前から言ってんのに何やっていやがんだ、やっぱりどこでも同じ話が出るんだなと思ったものです。

 質は違えど苦しい、辛いのは同じ社内の人間である以上同じです。できないことはできないというのも同様です。仮にその苦しみや辛さが自分の中で納得できない、将来に繋がらないなど受け入れられない状況なのであれば、それこそ部署異動を希望したり、または転職や独立をすればいいでしょう。戦略的な逃げを卑下することはありませんし、むしろ納得できない環境に身を置き続けることの方が大問題です。少なくとも会社員である以上、本来は特別な存在などいないということは認識しておくべきだと思います。
 

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