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野菜会議@0時冷蔵庫(2)

トマト姉さんは、ビーツに向かって優しく微笑んだ。

ビーツさん、初めまして。とても素敵な色ね。高貴な紫色が艶やかだわ。あなたの素敵な色を生かしてくれる食べ物はたくさんいるはず。きっと、白っぽい人だと喜んで染まってくれると思うから、そこから考えたらいいと思うわ。
私は、残念ながら赤くて、お互いを生かしきれないけど、隣のサラダボールから、あなたが美しく舞う姿を見ていたいわ。始まったばかりだけど、ごめんなさいね、プチトマトちゃん達が眠そうなので、今夜は先に失礼させてもらうわ。これからよろしくね。

そうニッコリと微笑み、ミニトマトを連れて、会場を去っていった。見事である。トマト姉さんはいつもこうだ。暗に「あなたとはキャラが被っているから、一緒には料理されたくない」と言うことを、やんわりと言うので、誰もが不快にならない。これは、彼女の持って生まれた才能なのかもしれない。

そして、ミニトマトちゃん達のお父さんは一体誰なのか、今でも庫内の野菜達は誰も知らない。

秀才の茄子王子がメガネを少し触って、スッと立ち上がった。

「トマト姉さんの考察は確かに、的を得ていますね。色と言う観点では、僕の紫色と混じってしまうと、ビーツさんのせっかくの色が生かされませんし。白いもの、そうだな、エノキ君、大根夫人なんかはいいコラボレーションができそうですよね」

と言う茄子王子に対し、エノキ君と大根夫人は激しく頷いた。

それを見ていた、ガタイのいいキャベツ男も、「俺もピンク色に染まりてー!!!たまらねー!!ビーツさん、よろしくー!!!」と叫んだのだから、ちょっと緊張感があった庫内が、一気に和んだ。さすがの体育会系である。長芋嬢も、ねっとりと、いや、にっこりと微笑んだ。ビーツさんの顔もほころぶ。

別に野菜に限定することなくない?

冷蔵室の上の方から、聞こえた声は、そう、我らがパフューム、納豆娘3人組だ。




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