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古酒と金曜とmake up your mind

今、私は「プロヴィダンス(2002年ヴィンテージ)」という、とてもとてもいい古酒のワインを一人で飲んでいる。21年、彼女はずっと眠っていた。

私のお宝ワインだけをいれた超小型ワインセラー(六本入り)の電気コード接触の問題で、猛暑のある日、ふと気がついたら通電されていなかった。慌てて中を確認したら、見事にこのワイン達2本がふいていた。コルクから漏れていた。
絶望と共に一番ダメージを受けていたプロヴィダンスのメルロを泣く泣く開けたが、あまりの気品に卒倒しそうになった。日常の慌ただしさしか感じられないリビングが、森の中の古城のように変わった、といったら大袈裟だろうか。でも、お酒なんぞわかるはずもない娘も、「すごいいい香り!!」と感動していたので、銘酒とはかくいうものか、と感心した。

遠方に住んでいる、私のワインの大先輩のところに参上して、残りのワインは飲みたいけれど、今日はこの極上のワインをたった一人で、noteにつらつらと書きながら、楽しもうと思う。
今日はめちゃめちゃ頑張ったの、仕事。めっちゃ偉い人たちがいる中で、一番下っ端の下っ端の超端っこの私が、相手に[ok. I will support you to make it happen]って言ってしまった。こんな荒唐無稽な私に対し、寛容な上司に感謝だ。無論、その後に実現するように私も最大限動いたし、大丈夫なはず。口先番長にはなってない。はず。来週も頑張るもん。こっちも頑張るから、おまえも頑張れよ、覚悟決めろよ。I will do my best but you also need to make up your mind.

ワインに戻る。
いいワイン、とりわけ古酒となると、ちょっとしたワインとは格が違うことを見せつけられる。一度吹いていることもあり、本来の姿よりは控えめな気もするが、雨上がりの土のような、どこか懐かしい香りが、優しく私を包む。粘性は思ったより高くない、縁は黄色がかってる。コルクダメージがすごかったし、乱暴なデキャンタージュしかできなかったけど、風格が違いすぎる。シラーの黒胡椒、でもちゃんとベリー感あり。ううーん、すごい。
パジャマ姿で飲むべきじゃないっておもったりするけど、このアンバランスさは「ティファニーで朝食を」のような、どこか可愛らしさも感じられるから、これでよかったと思う。アルコール感は後からきて、ブランデーのようなニュアンスあり。けど、実際は控えめのアルコールなのだろう、いくらでも飲めてしまう。

ワインの表現ってさ、独特でしょ?気取ってるって映るよね?そうだと思うわ。けど、この世界を知っちゃったからしょうがない。

結局ね、全てのことは脳内で起こってる。
大事に大事にこのワインを取っておき、希少価値を生み出してるのも自分。
この一杯に何かを感じ取って、パジャマ姿で感動しているのも自分。
「あるべき姿」なんてしったことではない。
10万円ぐらいしてもおかしくないこのワインをこの状況で飲むことを、「もったいない」と呆れられたとしても、それがなんなのだ。
いろんな執着から解放されてきたなって最近思う。
どうせあの世に何かをもっていくことはできない。
娘の習い事の発表会とか運動会とか、ビデオ撮ったりして、その出来が悪かったりすると、撮影者の旦那にイライラとしたものだけど、今はもうそれもない。娘がこの瞬間、精一杯にやったという事実、それだけでいい。まあ、「それだけ」はいいすぎか。少なくとも、写真や写り悪くても動画が残ってるなら、後から見返して、その時の感情を呼び起こすのに十分な気がする。

kが好き。愛おしい。でも別に何かしてほしいということもない。
今日は仕事で頑張ったし、仕事で思うことがあり、kにラインした。
「そんなあなたにはフェラしたくありません」事件から2週間ぶりに。
あ、その前に、仕事の話の前に、朝「おはよー、k」と送ったら、「おはよう!」って来てたな。kはいつも変わらず、「そこ」にいる。
で、夕方に仕事の話をつらつらと。部署は違えど、少しはわかるだろうし、抽象的な話だけど、kには言いやすいから。
数時間既読スルーになって、「あー、なんて返答したらいいか、困ってそう」って思ったから、「変わらず、kに何も求めてないよ、あの時はなんか悲しさとかで変なこといったけど、私の中で起こっただけであって、しかもそれ自体はもうどうでもよい。今回も独り言だと思ってスルーしてね」って送った。心から思ったから。「オッケー!!。でもよくわからんけど仕事頑張ってるなってのはわかるわ笑」「仕事落ち着いたら、よしよししてね」「いいよ!」で終了。
会った時にkは私を雑に扱ったことがない。全力で私を愛でるし、許容する。だからさらけ出せる。言葉はライン等では、その時によって足りなかったりするけど、それは表層的な話でしかない。私のワインとか官能をわからなくていい。でも掘り起こしたのはkだから。その事実だけでいい。

こんなこと言ったら、終わっちゃうかもとか、人間関係、仕事でも恋愛でも友達でもビクビクしちゃうもんけど、意外とね、世の中はそんなに厳しくなくってね、頑丈だし、そんな簡単に壊れたりしないのよね。
私なんて、黒歴史しかないしね。
よく生きてるって思うわ。超絶大事な商談の前の日に、大好きな上司が帰国して、調子に乗って酔っ払い、商談遅刻、担当外される的な事件も起こしてるしね。でも元気に生きてる。偉そうに発言してる。給料アップとか出世とかは無縁だけど、別にいい。私が死ぬ直前、「あー、何も成し遂げてない人だな」って思われてもいい。何か成し遂げるためにこの魂あるわけじゃないしな。

もうちょっと飲もうかな。


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