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[導入事例:戸田市立戸田東小学校]自然に話し合いも生まれる。 小学生からの 「主体的に学べる」 授業づくり

Inspire Highが、学校現場でどのように受け入れられ、授業や生徒たちの学びに活用されているのか。この記事では、Inspire Highを授業で活用いただいた学校を取材し、教員の準備から授業の様子、児童生徒たちの反応まで、実際の活用事例をご紹介します。

今回は、Inspire Highの事例としては珍しい、小学校での取り組み事例です。埼玉県戸田市とInspire Highは、2020年に児童生徒の好奇心や創造性を引き出す学びを推進する連携協定を締結し、現在、市内の小中学校でInspire Highが活用されています。

戸田市とInspire Highは
児童生徒の好奇心や創造性を引き出す学びを推進する連携協定を締結

そのひとつである戸田市立戸田東小学校は、生徒数が1000人を超えるマンモス校。2021年に完成した戸田市立戸田東中学校との一体型校舎では、小中あわせて全9学年が学んでいます。

戸田市では、21世紀型スキルや汎用的スキル、非認知的(社会情緒的)スキルの育成を目指す「戸田市SEEPプロジェクト」を掲げており、戸田東小学校でも「1人1台」端末を活用し、PBL型の授業に積極的に取り組んでいます。
さらに、ICT活用を推進する校内プロジェクト「DXプロジェクト(Dプロ)」を発足し、その取り組みのひとつとして、Inspire Highが6年生の授業の教材に採用されました。2021年にDXプロジェクト(Dプロ)のリーダー役であるマネージャーを務めた同校の清水享先生に、Inspire Highを活用した授業についてお話をうかがいました。

【学校情報】
    学校名:戸田市立戸田東小学校
    所在地:埼玉県戸田市
    実施コース:小学6年生
  【実施環境】
    利用端末 :教員、生徒の端末(Chromebook)
    授業時設備:プロジェクター等

1. 導入の背景:
小学生のキャリア教育に活用


――戸田東小学校でInspire Highを教材として使うようになったきっかけを教えていただけますか。

まず、背景として2021年度から1人1台のChromebookが導入されたことで、授業が劇的に変わったことがあります。また、戸田市ではAIドリルやGoogle for Educationなど、ICT活用のためのツールが豊富に用意されており、選択肢が豊富にあるというのも大きな特徴です。

そのような中で、本校ではICTを活用して、児童たちにどのように授業を提供するかを研究する校内プロジェクト「DXプロジェクト(Dプロ)」を2021年度に発足しました。従来のような教師主導の知識注入型の授業ではなく、端末を使って、児童が主体的に学べるような取り組みをつくっていくことを目的としています。

その取り組みのひとつとして6年生でInspire Highを使うことになりましたが、きっかけは小髙美恵子校長の「Inspire Highは多様な方々の話を聞いたり、つながったりできる。これからの学びに必要な教材なので、ぜひ本校に取り入れたい」という強い思いからでした。

――清水先生ご自身がInspire Highをご覧になった最初の印象はいかがでしたか?

セッションのラインナップを見て「すごいな」と思ったのが最初の印象です。当初は、その方々とどういう話をして、児童たちがどういう活動するのかというところがイメージしづらかったのですが、事前のオンライン説明会に参加して、「動画を見た後に、アウトプットやフィードバックの活動ができる」という具体的な学びの形を理解し、こういう流れで授業を進めていけるというところに、すぐ辿り着くことがでました。 

戸田東小学校の清水享先生。
教務主任として2021年度は6年生国語、2022年度は6年生算数と5年生国語を担当している。

――Inspire High導入の決め手となったのはどんな点でしたか。

小髙校長のリーダーシップの元で進めてきたというのもありますが、例えば特別活動においては、キャリア教育につながる部分がすごく大きいと感じました。ある分野のプロの話を直接聞くことができ、その人の生きざま、その職業に就くまでにどんなことしてきたのか、生い立ちから大人になるまでの間のことも知ることができます。

まさに、今の自分たちが生きている年代とも重なる部分もあり、「自分と同じ年齢のときに、この人たちはこういうことをして、将来こういう風に成功していった」という事例を見ると、成功体験としてのプラスのイメージもたせることができると考えました。

また、グループで共有したり、アウトプットしたりできる部分は、総合的な学習の時間の学びともつながってきます。
さらに、谷川俊太郎さんのセッションは、私が担当している国語の授業で、実際に詩をつくるという単元があり、そこでぜひ使いたいと考えていました。

――総合的な学習の時間、学級活動、国語など、複数の教科等で活用していただきましたが、それぞれ導入にあたって苦労した点などはありましたか。

最初のInspire Highの初期設定くらいでしょうか。
どんな教材も、教師がもちろん理解していなければいけないので、扱う動画を見たり、実際に45分間の進め方をどうしようかとか悩んだりする部分はありました。でも、一度授業のフォーマットをつくってしまえば、あとはどの動画でも応用できる点はとても助かりました。正直なところ、我々教職員の働き方改革・校務削減という部分でも、ものすごくありがたい教材だったと感じています。

教材によっては、運用は学校次第で、教員の裁量にまかされている部分が大きいものもありますが、そういったものですと膨大な時間を使って準備しなければいけません。その点、Inspire Highのプログラムは40分におさまっている動画なので安心して使うことができ、大きな負担を感じることなく活用できました。

2.授業事例:
総合だけでなく教科に紐づいた授業が行える


――では、Inspire Highを活用した、具体的な授業事例を教えてください。

基本的に1つのセッションを45分の中で行いました。Inspire Highは動画の中で考える時間も設けられているので、そのまま流しっぱなしにできる点も良かったです。学級のなかで、児童は正面の大きなプロジェクターで一緒に動画を見て、匿名でアウトプットをし、その後フィードバックを行いました。

Inspire Highの動画は
プロジェクターを使って、全員で視聴。

私個人は、授業で教員はあまり話さず、できるだけ子どもの意見を聞くスタイルにしたいという思いがあります。Inspire Highは教員が話さなくても問題のないクオリティの動画でしたので、余計な話はせずに、最初からパッと見せたほうが、児童の気持ちもその世界に入り込めると考えました。ただし、今回は45分の1コマで行いましたが、これが2コマとなると教員のファシリテートが必要になり、進め方は考えなくてはいけないと思います。

――小学生に向けては、どんな基準で動画を選んだのでしょうか。

やはり継続してやっていきたいという思いがあったので、児童が興味をもてそうな人物や職業という点で絞りました。児童の反応を予想して、「このあたりが面白そう」というところを、6年生担任と話し合って決めていきました。

最初は人物や職業で興味を持てそうな方を選びましたが、今後はそれが定着して、アウトプットしたりフィードバックしたりという部分に児童が楽しみをもつようになれば、どんな人物や職業でも、主体的に学べるようになると考えています。

戸田東小学校で実際に活用した動画

また、谷川俊太郎さんに関しては、教科と連携したInspire Highの活用という部分で、国語と紐づけたいという思いがありました。そこで、谷川さんのセッションだけは国語とあわせて2コマを使い、最初の時間は動画を見て、実際にアウトプット・フィードバックしました。その後、国語の授業で谷川さんの詩を読むという授業を行いました。結果として、子どもたちの反応もよく、満足感や達成感も高かったようです。

――Inspire Highは中学や高校で導入されている例は多いのですが、小学生の教材として使うことについての課題は感じられましたか?

授業では、オードリー・タンさんと、田村淳さん、ロボット開発者の林要さん、声優の梶裕貴さん、谷川俊太郎さんなどの動画を選びました。オードリー・タンさんの動画に関しては小学生では、6年生でも字幕と映像を両方追うことが難しかったようです。うまくインプットができない児童もいたため、その後は字幕なしの教材を使うようにしました。

それ以外では、動画の中で難しい言葉や表現が出てきてはいましたが、そこまで大きな障害ではないと感じました。最初のログイン作業さえクリアできれば、小学生でも難しいところはなかったと思います。

Google Classroomでログイン方法を提示

――動画からアウトプット、フィードバックという流れは小学生にとってどうでしたか?

小学生の特性かもしれませんが、様々な動画を見ても、「この後にはアウトプットがあって、その次にフィードバックがある」という流れがわかっていると、アウトプットするために見るようになります。

また、フィードバックするために、自分のアウトプットを考えるなど、先を見通して自分の思考を働かせるようになります。毎回変わると、そのたびに思考を変えなければいけないので、小学生にとってはこうした流れがあることは、かえって大事だと思います。

3.導入後の効果:
小学生が興味をもち、主体的な学びを育むことができた

――実際に授業を行ってみての感想を教えてください。

動画を見て集中して学んでいる姿や、フィードバックをした後に、近くの友だちと自然に意見交換が始まっていたりする場を見て、児童がとても興味を持っていることが、どの先生から見てもわかりました。

――児童のみなさんの反応はいかがでしたか。

昨年度は、アウトプットは匿名で行いましたが、「自分の名前が出てしまうとアウトプットしづらいけれど、匿名だったので書けた」という声もありましたね。その児童は、人前でも話せるタイプなのですが、6年生ぐらいの発達段階では、自分の本音を文章にすることに恥ずかしさがあったりするので、匿名でできた点が良かったようです。

また、フィードバックする際に、周りの児童も否定的な内容を入力しなかったので、そこにも安心感があったと思います。
他にも、とても知的好奇心旺盛な児童は、「授業以外の動画も見たいので、自宅でも見ていいですか」と聞きにきたので、「見ていいよ」と伝えました。

4. 今後について:
教室の外ともつながる活用をしていきたい


――戸田東小学校では、昨年度に引き続き2022年度もInspire Highを導入されるとのことですが、今年はどのように活用していきたいですか。
 

まず、ひとつは教科と結び付けることです。今年は6年生の算数にくわえて、5年生の国語も担当しているので、5年生で実施するとしたら、どのようにしていくのかも考えていきたいと思います。

もうひとつは、小学校と中学校といった、異校種の交流です。また、コロナ禍で登校できないといった場合、家庭で勉強している児童と、学校という2つの集団を結びつけることもできると思っています。例えば、動画はそれぞれで見て、アウトプットとフィードバックはオンラインで一緒に行うこともできます。

他の学校、遠い地域の学校とつなげて、同じタイミングでアウトプットをしていくと、「この学校のこの地域の児童は、こんな風に思っているんだな」ということがわかり、フィードバックの幅も広がっていきそうです。せっかく素晴らしい教材なので、他との連携も面白いですし、教室の中に留まらず、外とつながるような取り組みができたらいいなと考えています。

「今後はオンラインでもInspire Highを活用していきたい」と清水先生。

――活用にあたってInspire Highへのご要望はありますか。

児童が主体的になるひとつの要因として、選択肢が多いことがあります。ですので、動画の種類が増えるほど楽しいかと思います。具体的には、小学生でしたらアイドルや、漫画やゲームに携わる方などでしょうか。

あとは、PBL型の学びを進めている本校で解決したいと思っている課題のひとつに、小学生の持ち物の文房具や、ランドセルの重さをどうしたらいいかといったものがあります。ですので、こうした小学生の教材・教具に関わっている方の話などは、児童にとって身近でよいかもしれません。

――なるほど、とても参考になりました、ありがとうございました。

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Inspire Highの動画を見て、アウトプットとフィードバックを行った小学生たちが、その後、自然と話し合う風景が見られたという戸田東小学校。
「その教材に食いついて、その世界に入っているから、その世界に関係することを、自然と言いたくなったり、聞きたくなったり、自分の言葉でも話したくなるのでしょう」と、清水先生が話すように、小学生が主体的な学びに自然と向かっていく過程を感じることができました。

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