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スーパー戦隊

令和3年 10月7日 22:41 
千葉県北西部 マグニチュード5.9

ダイニングで仕事の残りを片付けていたとき、食器棚が突然ガタゴト震えた。
「服着てない!」
ルームメイトが叫んだのが聞こえてようやく地震だとわかった。こういうときに、部屋着もちゃんと可愛いものを揃えようと反省する。そそくさとお気に入りのグリーンのパーカーを羽織ったところで何事もなく揺れはおさまった。

翌朝、JR東日本のダイヤは乱れに乱れ、いくら首都圏のはじっことはいえ朝の駅は混乱していた。小さな非日常にハイになっている高校生、逐一職場に連絡を入れるおばさん、いつもと変わらず本屋で立ち読みしてる人たち。
秩序を取り戻そうと奔走する駅員さんたちを見ていると、わたしはまるでスーパーヒーローショーを見る少年のような高揚感を覚える。

人身事故や悪天候、なんだか訳のわからないトラブルで駅が混沌しているとき、わたしはいつも心の中で「がんばれえきいんさん!!」と応援する。まるで、ヒーローショーで手に汗握る子供たちのように。

自分だけが被害者であるかのように嘆き、理不尽に声を荒げるショッカーたちを卒なく捌きながら、彼らはこの国の鉄道において最も邪悪な怪人「無秩序」と対峙する。最速で平常を取り戻すためにフル回転であらゆる計算と戦うヒーローたちは、かっこいい。

結局わたしは“プロフェッショナルフェチ”なんだということは常々感じていることだが、今回のことでまたその自負が強固になった。

わたしはいつも守られる凡庸で幸せな市民Aだ。それも悪くない。

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