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拝啓 企業の「ひとり広報」をスタートするあなたへ 最初に読んで欲しいnoteです。

久しぶりのnote更新となります。今年初め、企業でゼロから広報活動をスタートする「ひとり広報」の方に向けた書籍がこの世に存在しないので、実務本を書きたいな。と考えていたところ、ちょうど良いタイミングで書籍のお話をいただきまして、これまでの半年間水面下で準備を進めてきました。そして2022年11月25日、「ひとり広報の教科書(日本実業出版社)」として初めての書籍を出版します。

この1年で企業の「ひとり広報」というキーワードを聞く機会が広報界隈で急速に増えてきたと同時に、SNSでも「ひとり広報 」をプロフィールに入れる方が増えてきたように思います。その多くが「未経験広報」というのも一つの特徴ではないでしょうか。だからこそ、今、この書籍を出さないと、という想いで焦燥感にも似た感覚を持って執筆活動をしてきました。

私自身、4年前にスタートした広報担当者向けPRコミュニティを通して、これまで200社近くの「ひとり広報」の方の課題・悩みと向き合ってきて、「これだけは広報活動のスタート時に知っておいて欲しい」ということがかなりクリアになりつつあったからです。
 
このnoteでは、これから「ひとり広報」をスタートする方、いま現在「ひとり広報」として奮闘中の方に向けて、なぜこのタイミングで書籍を出すのか、書籍の活用ポイントについて、書籍の「はじめに」「おわりに」を一部引用する形でまとめさせてもらいます。


 中小企業・スタートアップで増える「ひとり広報」の現状

ある日の突然の依頼からスタートする「ひとり広報」


「来期から広報、お願いね!」

ある日突然、上司からそう言われたら、あなたはどうしますか。実際、知識や経験もなく、先輩もいないままに急遽、広報ポジションに就く人が増えています。

近年は大企業だけでなく、中小企業やスタートアップ企業でも広報ポジションを置き始めています。企業情報を適切に発信して、自社のブランディングや採用活動につなげていくことの重要性が社会に浸透し、広報担当者を設ける会社が増えているのです。

その結果、中小企業やスタートアップ企業を中心に、たった1人で広報活動を担う「ひとり広報」が増えています。広報専任の人もいれば、これまで担当していた他業務と兼任の人もいます。

しかし、そこには問題があります。広報活動は本来、事業部を横断した全社規模の活動です。それを1人で担う負担は大きく、また、前例がないなかでの活動は評価指標を設けにくいのが実情です。このような環境で、何が正解かわからないまま、ひとり広報の方の暗中模索をする日々が始まってしまうのです。

孤立感に苛まれる「ひとり広報」

新たに広報ポジションをつくった中小企業やスタートアップ企業では、広報経験者が社内にいないことがほとんどです。さらに、経営層が広報の仕事の本質を熟知していることは稀です。

上から「広報、お願いね」と言われて引き受けたものの、何をすればいいかがわからず、相談相手もいなくて途方に暮れる人。これまでの業務を引き続きこなしながら、社内から次々に降ってくる広報案件に完璧に応えようとがんばりすぎて疲弊してしまう人。広報の目的がわからないまま達成困難な目標を立ててSNSを始めてしまい、自分がどこに向かっているのかわからなくなってしまう人──。

広報に対する理解が浅い組織の中で、知識も経験もなく、相談相手もいない「ひとり広報」が、今、さまざまな会社で孤軍奮闘しています。

社内で広報に協力してくれるメンバーが現れてくれれば幸運ですが、現実はなかなかそうもいきません。

「あの人、最近やたら忙しそうだけど何をしているんだろう?」「どうしてうちの会社はテレビに出られないの?」と言われ、孤立感を深めてしまうことも。私は仕事柄、そんな「ひとり広報」の方たちとたくさん向き合ってきた中で、「何とか力になりたい」と考えた先に今回の書籍の機会に恵まれました。

「ひとり広報」ならではの課題が別に存在する

テレビ局を退職し、次のキャリアについて考えていた2017年、スタートアップ企業の広報や起業直後の友人たちから「プレスリリース書いたので、見てくれない?」「テレビ局に企画書を出したいのだけど、どうしたらいい?」といった相談を受け、アドバイスをすることから私の今の活動はスタートしました。

PRコミュニティの勉強会開催時の様子



そこからありがたいことに、“PRの相談に乗ってくれる人”として口コミが広がり、たくさんの方からご相談をいただくこととなります。こんなにたくさんの方が「0→1」認知のための広報PR活動に課題、悩みを抱えているんだ、と驚きがあったと同時に、これから広報活動に力を入れていこう、と考えているすべての方の力になるためには、どうしたらよいのだろう……。

考えた結果、「PRコミュニティ」という場で会員の広報活動を伴走する形に行き着き、現在のハッシン会議を立ち上げました。

これまで5年間で延べ200社近くの「ひとり広報」の方、またはスタートアップの経営者・広報担当者の方の課題と向き合い、時に私も一緒に悩んできました。

その中で、気づいたことが主に次の2点です。


1. 「ひとり広報」が「広報活動の目的」を確認しないまま、プレスリリースやSNS運用といった「手段」に走ってしまいやすいこと。目的がないためにタスクの優先順位をつけられず、何から手をつけたらよいかわからないと悩む人がたくさんいます。

2. メディアの取材対応やプレスリリースの作成といった「社外」への発信が広報の仕事の本質だと思い込み、「社内コミュニケーション」が手薄になっている人が多いこと。「ひとり広報」は何から始めればよいか。社内でどう振る舞うべきか。それを最初から知っていれば、こんなにも悩まなくて済むかもしれない。

「PRのノウハウや成功事例を中心とする経験談を学ぶ機会は世の中にたくさんあるけれど、企業のひとり広報として突然任務を与えられたときに、寄り添う情報が少ない」という事実。徒競走のスタートラインに立ったとき、どこに向かって走っていけばよいのかわからない状況なのだと感じたのです。

PRコミュニティでは、会員との個別アドバイスの時間を毎月設けているのですが、実はその中で、プレスリリースの書き方やSNS運用といった広報の実務に関するアドバイスは全体の3分の1程度。大半は、「ひとり広報」として社内でどのようにコミュニケーションをとるか、マインドセット、上司・社員との日常のエピソードや今後のキャリアについてなど、実務とは違う視点で「ひとり広報の日常」についてメンタリングのような形で話す時間です。

そこで、私は確信しました。「ひとり広報」には、「ひとり広報」ならではの課題とそこに対するアプローチが存在するということを。

「ひとり広報」の伴走の先に本の執筆があった

PRコミュニティのオンライン勉強会の様子(毎月2-3回開催しています)


「ひとり広報」には、同じ悩みを持つ人たちとつながる機会、相談する相手、成功体験だけでなく失敗体験も共有できる場所が必要です。

PRのコミュニティという場を通して、気づけば広報初心者だった「ひとり広報」の方がみるみる成長していく姿をこの5年間で目の当たりにしてきました。

コミュニティという場は、ひとり広報の方に中長期で継続的に伴走し、寄り添うにはぴったりだと確信している一方で、その活動にはリソース的な限界があるのも事実です。

このような中で、今回の書籍のお話をいただき、PRコミュニティで活動するメンバーと同じように、日本全国で「ひとり広報」として奮闘する方、これから広報部門を立ち上げようと考えている方に少しでも力になれたら、寄り添えたら、と願いながら一冊の本にまとめました。

企業の新しいポジション「ひとり広報」の未来に向けて

この10年ほどで企業における広報PR活動の重要性はずいぶんと浸透してきました。それだけに、ゼロから広報活動をスタートする企業、ひとり広報の方も増えているのが現実です。

「ひとり広報の教科書」は、これから広報活動をスタートする方が読んで学ぶ・知るだけでは終わらない「今すぐ実践できる」ことを常に意識して執筆
しました。

広報のご経験がある方は、ずいぶん基本的なことが書かれているな、と感じられたかもしれません。でも、初めて広報活動をする方に、最初に知っておいてほしい情報を厳選してまとめたつもりです。広報活動のためのテンプレートを12種類用意し、「今日からできる」をコンセプトにすべてこの1冊に詰め込みました。ぜひテンプレートをあなた流にカスタマイズして、広報活動に活かしていただけるとうれしいです。

本書をまとめながらあらためて感じたことは、「ひとり広報」ほど、今の時代に求められ、エキサイティングなポジションは他にないのではないか、ということです。

大企業の中の広報と言えば、十数名の広報担当者を束ねるベテラン広報部長が経営層と向き合い、経験の浅い広報担当者は現場で実務を細かに役割分担して任されているケースが多いかと思います。

ところが「ひとり広報」はどうでしょう。常に経営に近いところで社長とコミュニケーションをとり、広報活動の裁量・判断があなたに任せられています。経営と向き合いながら自分色の広報未来図を描くことをどうか楽しんでください。

また、同時に、広報活動は今日学んだことが1年後にもそのまま活かせる訳ではない、ということも心に留めておいてほしいです。時代の変化と共に広報活動も常にアップデートしていくべきものです。私もみなさんと一緒に広報活動のアップデートをしていきます。

これから先、あなたの広報活動の中で、「これでいいんだっけ?」と不安になったとき、孤独感に包まれたときに本書を開き、少し安心したり、前を向いてがんばろうと思える。そんなお守り的な存在になってくれたらうれしいです。

「ひとり広報」に向けた、おすすめ書籍

最後に、実はちょうど同時期に「ひとり広報」をテーマにした書籍が他にも2冊出版されました。

これだけ企業の広報ポジションのニーズが高まり、さらには「ひとり広報」という役割が認知され、寄り添う情報が増えていくことは、とても嬉しいことだと感じています。

私とは全く違うキャリアを歩まれてきた広報パーソンのお2人が出された「ひとり広報」のための書籍もぜひ読んでいただきたいと思い、こちらで勝手に紹介させてもらいます。

「ひとり広報」

事業会社の広報としてキャリアを積まれてきた北野由佳理さんの書籍。私も読ませてもらい、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションを温めていくこと=信頼関係構築の大切さについて、とても共感しました。

「ひとり広報の戦略書」

PR TIMESのプレスリリースエバンジェリストであり、事業会社の広報として活躍され、現在はPRプランニングをする「EAT UNIQUE」を経営されているようです。書籍の発売が2022年11月18日ということですので、予約をして私自身も楽しみにしている一人です。 (※ 読了後に感想をこちらで更新します!)


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