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眠れぬ夜に「ありがとう」

夜、眠りに入るのが恐ろしくなった。
夜寝て、翌朝、何事もなく朝を迎えられるという保証はどこにもない。

とくだん、病気をかかえていなくても、
寝ているうちになんらかの理由で、
息が止まって永遠に目覚めないということは、
起こりうる。

たいした理由も、なんの理由もなく、
自然に生命が途絶える可能性もある。
寿命が尽きた、そういうこと。だた、その一言。

だから、
寝る前は「おやすみ」ではなく「ごうきげんよう」
そう言おうかと思う。

自分の人生に別れを告げる。
大切な人に別れを告げる。
「さようなら」でもよいけれど、少しさみしい。
ひとりよがりでもある。

「さようなら」のあとに、
「ありがとう」をつければ、
さみしさはやわらぐけど。

影は言う。
「それがいい。ごきげんようなんて、言い慣れてないからね。さようなら、ありがとう」
私は言う。
「ごきげんようって挨拶するように教えられたから。小さいとき、学校で。帰りにお友だちにそう言って挨拶するように。お上品な学校だったからね」

でも、ごきげんようは、
相手がいないとむなしい響き。
だから、だれに対してというよりも、
漠然と、
終わったその一日に、神様に、感謝を込めて。
「ありがとう」
そう、つぶやいてみる。

そうしたら、眠りにつくのがこわくなくなった。
翌朝、元気に目覚めることができたら万々歳。
「おはよう、新しい朝をありがとう」
永遠のおやすみを迎えるまで、
これを繰り返すことができれば、なんと幸せなこと。
与えられる一日一日がごほうびだから。

今夜、思いかげずに
最後の「おやすみ」が来るかもしれない。
でも、心の準備は整っているから、大丈夫。
「おやすみ」は、別れの言葉を飲み込んで
「ありがとう」になり、
最後はたぶん、「お疲れ様」か「ご苦労さま」

自分にも回りにも「お疲れ様」「ご苦労さま」
そうだね、よくがんばったね。
そのときには、この世からは見えない存在になっているにいるのかもしれない。
風か雲にでもなって想いを届けるかな。

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